東芝の4K液晶レグザのトップモデルとなるZ720Xシリーズ。映像エンジンには有機ELテレビのX920シリーズと同じく新開発の「レグザエンジン Evolution PRO」を搭載。スピーカーは重低音の再現性を高めたその名もズバリの「重低音バズーカオーディオシステムPRO」を内蔵し、画質と音質の両面で高品質を追求している。
12月1日からスタートするBS/CS 4K放送用チューナーを内蔵した点も注目で、別送のBS/CS 4K視聴チップを装着すれば放送が見られるようになる。その他にも、スカパー! の4K放送も視聴可能な4Kスカパー! チューナーの内蔵や、地デジ放送を6チャンネルぶん全録できる「タイムシフトマシン」、多彩な動画配信サービスに対応するネットワーク機能を備えるなど、テレビに求められるあらゆる機能を盛り込んでいる。
基礎体力の高さを感じる映像。重低音モードも効果は大きい
では、その実力を見ていこう。まずは「タイムシフトマシン」で録画した地デジ放送をいくつかチェックしてみた。部屋の明るさはやや薄暗くして、映像モードは「標準」、音声モードも同じく「標準」、重低音モードは「弱」としている。
ニュース番組やドラマ番組を観ると、画質は鮮明で色のりも豊かだ。地デジ放送のHD信号(1440×1080画素)を超解像処理で4K化する「地デジビューティX PRO」の恩恵だろう、細部まで緻密に描写しながらも、ノイズのチラつきはごくわずか。4Kテレビの地デジ画質というとS/Nを重視した無難なまとめ方をするものが多いが、Z720Xはノイズを抑えながらもディテイルがしっかり出ている。やや明るめの画調ということもあり、自然な質感でありながら、見映えのする映像だ。
また、外光の反射を抑えて明所コントラストを向上させた新開発のIPS液晶パネルと直下型LEDバックライトの効果も大きい。IPSパネルとは思えないコントラスト感の豊かな映像が楽しめる。LEDバックライト方式にありがちな周辺部の輝度低下などによる明るい画面での輝度ムラもよく抑えられており、ディスプレイとしての基礎体力が向上していると感じた。
あまりに地デジ画質が素晴らしいので、動きの激しいスポーツ番組や空撮シーンなどでザワザワとしたノイズが目立ちやすいドキュメント番組も観てみたが、映像ソースにノイズが多い場合は、精細感を欲張らずにノイズ感や映像のざわつきを抑えた見やすい映像にしていることに気がついた。ソースの状態に合わせた処理がよく出来ていて、映像の破綻や粗さが気にならないようになっている。こうした細やかな映像処理は見事なものだ。
音もなかなかの実力だ。吹奏楽のライヴを収めた音楽番組では、たくさんの楽器の音を混濁させずに明瞭に描き、音質は自然な感触。大太鼓などの低音楽器の音もよく出ていて充実感がある。
「重低音バズーカオーディオシステムPRO」は、2ウェイスピーカーをフロントL/Rに前向きに配置し、中央背面に重低音用バズーカウーファーを置いたもの。大口径のポートで両サイドから放出することで、広がりのある低音再生を可能にしている。音声メニューで選択できる重低音モードは、「オフ」のほか「弱/中/強」の3段階となるが、スピーカーシステムとしてフラットな特性になっているのは「弱」。音楽番組ではもっとも自然なバランスだった。「弱」でも低音感がしっかりしているので、映画作品であっても「中」で充分だろう。「強」はごく一部の爆音映画で使うくらいがちょうどよい設定だと感じた。
スポーツ番組を観ていても歓声の音の広がりはスムーズだし、ドラマのダイアローグはきちんと画面に定位し、映像との一体感もある。BGMもややメリハリを効かせて聴き心地のよいものになっている。音声処理もそれぞれのユニットを独立したアンプで駆動するほか、DSPによる周波数特性など高精度な処理が行なわれているが、基本的な音の実力を高めて補正後も不自然さのない音に仕上げている。番組のジャンルを問わない自然な音質は大きな魅力と言える。
解像感に優れるHDR画質。暗部階調もしっかり描く
今度は、ネットフリックスで『ジャスティス・リーグ』を再生してみた。ネットフリックスに限らないが、動画配信サービスでは映像が途切れないように回線状況に合わせてリアルタイムで映像の転送レートを可変しながら配信している。こうしたネット動画の特性に合わせて、Z720Xでは「ネット映像オートピクチャー」という機能を実装。変動する転送レートや解像度に合わせて、リアルタイムで適切な超解像処理とノイズリダクションをするという。
その成果か、再生開始直後や場面を大きく飛ばした通常は低レートで映るようなところでも極端な画質の劣化はなく、実にスムーズに解像度が変化していく。映像の破綻や画質の劣化を気にせず、違和感なくストリーミング映像を楽しめるようになっている。
肝心な作品画質は、『ジャスティス・リーグ』のように暗いシーンの多い作品の場合、黒浮きはややあるものの、しっかりとコントラスト感も確保できていて、不満は少ない。
最後にオッポデジタルのユニバーサルプレーヤーUDP205を使って、UHDブルーレイ作品を再生してみた。映像モードは「映画プロ」、音声モードは「映画」、重低音モードは「中」としている。
『デッドプール2』で、妻を殺された主人公が暗いバーで嘆いている場面を観たが、暗部の階調をしっかりと描き、見通しのよい映像だ。解像感の高さは見事で、薄汚れた部屋の質感がしっかりと伝わる。バーの中の照明などの強い光は力強く発光し、コントラスト感も充分。また、後半の強敵との対決場面は、明るさに余裕があるせいか実にパワフル。HDRとの兼ね合いもありそうだが、明るいシーンでの彩度の高い色がやや鮮やかに映りすぎるきらいはあるものの、迫力のあるバトルが存分に楽しめた。
音については、爆発音などの低音域の伸びに限界はあるものの、格闘での打撃の効果音や音楽のしっかりとした中低域の再現性など、間違いなくテレビの内蔵スピーカーを超えるレベルだ。重低音モードを切り替えれば低音の量感が増すので、好みに応じて使い分けるといいだろう。サラウンドモードの「映画」も試してみたが、無理に包囲感や後方の音の再現は欲張らず、にわかに広がりが豊かになる程度。サラウンドとしての効果は弱めだが、位相がずれた不自然な感じはなく、聴きやすい音だった。
視野角の点でも、さすがはIPSパネル。画面正面から外れて斜め視聴をしても精細感や色の変化はごくわずか。若干、暗部の黒浮きが増えたと感じる程度だった。斜めから見ても映像が見づらくなることはほとんどないだろう。また、映り込みもやや薄暗いくらいの視聴環境では、映像の暗部でほんの少し気になる程度だ。
チューナーの装備なども万全だが、それら多彩なソースに合わせて適切な映像と音を楽しめる作りは見事なもの。総合力に優れた完成度の高い液晶テレビが登場した。
視聴リファレンス機器
●UHDブルーレイプレーヤー オッポデジタル UDP-205
視聴ソフト
●UHDブルーレイ 『デッドプール2』『レディ・プレイヤー1』
●NetfliX 『ジャスティス・リーグ』 他
4K LCD DISPLAY
オープン価格(実勢価格20万円前後)
TOSHIBA 49Z720X
●画面サイズ:49型
●画素数:水平3840×垂直2160
●内蔵チューナー:BS/CS 4Kチューナー×1、地上デジタル×9、BS/110度CSデジタル×3 他
●接続端子:HDMI入力4系統、デジタル音声出力1系統(光)、USBタイプA 4系統、LAN 1系統 他
●消費電力:236W(待機時0.4W)
●寸法/質量:W1105×H692×D189mm/17.5kg(スタンド含む)
●ラインナップ:55Z720X(実勢価格24万円前後)
●問合せ先:東芝テレビご相談センター70120-97-9674