プライマーからアナログ入力に特化した「I35」と
CD再生に特化した「CD35」の2製品が登場

 右か左か真ん中か。そこが思案のしどころだったよう、といっても夕暮れ時の分かれ道やイデオロギー等、微妙な問題にはあらず。「つまみ」の話である。この場合のつまみはknob = ノブ。

 I35のボリュウムノブの位置が、前作I32と真逆なパネル右側に移った。それだけのことで、付属のワイヤレスリモコンをつかえば操作性はほぼおなじ。気にするまでもないのだが、筆者がなぜか最初にびっくりしたのはこの点だった。なに食わぬ顔の大転換。でも、右手のほうがノーマルではあるだろう。

(PHOTO:左)
PRIMARE INTEGRATED AMPLIFIER「I35」
¥480,000+税
●最大出力:300W×2(4Ω)、150W×2(8Ω)●接続端子:アナログ音声入力5系統(XLR×2、RCA×3)、アナログ音声出力2系統(RCA)●消費電力:32W(待機時0.5W)●寸法/質量:W430×H106×D382mm/10.5kg ●備考:バランス入力HOT=2番ピン

(PHOTO:右)
PRIMARE CD PLAYER「CD35」
¥385,000+税
●再生可能ディスク:CD●接続端子:アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)●消費電力:25W(待機時0.5W)●寸法/質量:W430×H106×D385mm/10.6kg ●備考:バランス出力HOT=2番ピン
●問合せ先:(株)ナスペック TEL:0120-932-455

繊細でしなやか、透明感に溢れ
こまかな間接音もていねいに拾う

 I35はラインレベル入力のプリメインアンプで、バランス入力機能ももっている。パワーアンプ部はアナログ変調のD級出力、スイッチング電源。これらの大筋はI32と変らず、トータルな完成度をじっくり高めた熟成タイプの進化版とみて差し支えない。

 細部には、8Ω負荷時の定格出力が120W×2から150W×2に増えたことをはじめ、とうぜんながらの変更点がいろいろある。同社の代表的なオリジナル技術とされていたUFPD高速出力回路や、電源からのデジタルノイズを低減するPFC力率制御回路も新しいバージョンに変り、それぞれUFPD2、APFCと改名されている。

 バックパネルを眺めると、目隠し蓋がふたつ並んでいる。I32では、ここにUSB DACモジュールを追加できたが、それとは寸法仕様がちがう。使途はというと、現段階では詳細未定とのこと。ここは将来のお楽しみ。

 いっぽう、CD35はCD32の後継モデルだ。前作によく似たCD再生機だが、内容がかなり大幅に変更されている。たとえばディスクローダー・メカ部。新しくティアック製ドライブを採用するとともに、通常はオプション機能パーツ扱いの信号バッファメモリーを標準装備することで音質の格上げをはかった。

 DAC素子がバーブラウンのPCM1704からESSテクノロジー社製のES9028PROに変ったのも注目ポイントだ。マルチビットDACの最高峰などといわれた1 chパッケージのPCM1704に対して、ES9028PROは8 ch構成。デルタシグマ方式である。一世を風靡するくらいな人気を誇ったES9018Sの改良型で、本来768k㎐/32ビットPCMやDSD22・4M㎐信号も通る。CD35はそれを、2chのコンベンショナルCD再生だけに特化してフル活用した。CD32が装備したUSB入力と、AES/EBUのバランスデジタル出力端子も潔く削除。これまた驚きの大転換だ。

↑「I35」には新開発のスイッチング電源APFC(アクティブ・パワー・ファクター・コントロール)が採用されている。従来モデルI32に搭載された電源より5%効率を向上させた仕様

↑CD35は光学ドライブにティアックのCD5020A-ATを採用。DACチップにはESSテクノロジー社製のES9028PROを用いている

両機の組合せには
濃密華麗な色彩を感じる

 順序が逆になるけれど、HiVi視聴室のリファレンス機器、デノンのPMA-SXにバランス接続してCD35から聴いてみよう(PMA-SXのバランス入力は3番ピン・ホットのため、スピーカーをプラス/マイナス逆相で接続した)。透明感にあふれて繊細でしなやか。端然と落ち着き払っているのだが冷徹ではない。なにより印象的なのがそのことで、チロチロ揺らめく暖炉の火を眺めるような、湿り気のすくない温かみを醸し出す。ここは北欧製品の基本イメージとして求められる上質な個性のお手本だし、ESSテクノロジー社製DACの特徴がとてもうまく活かされているということもできそうだ。

 以前、これが気楽に聴けたら一人前のシステム、と紹介したCDソフトがあった。イ・ムジチ8回めの定盤『四季』。なにしろよく知られた十八番の最新バージョン(2012年)なので、演奏も録音も相当凝ったものだ。ところが、飛び出してくるサウンドはたいてい……。

 程度に差はあっても過激に聞こえがちなその演奏を、CD35は金糸を張り詰めたように流麗な美音であでやかに、しかもかすかな哀感さえ漂わせながら溌溂と歌わせたのである。SACD/CD再生機にはむずかしいこの芸当。CD専用プレーヤーには、なるほど専用機なりの音づくりがあるのだと痛感した。

 こまかな間接音もていねいに拾うので、音像がちょっと引っ込んで聴こえる。そのためロックやジャズ系の音楽ではもっとアグレッシブなパワーが欲しくなることも時にあるけれど、キレ味の鋭さや強靭な瞬発力に不足は感じない。

 アンプをI35に替えてみる。ディテイルの表現力がもっと高まり、いうなれば糊の効いたドレスシャツをルーペで覗き見るようなハイレゾタッチの克明さと、いっそう濃密華麗な色彩感が出てくる。プライマー社の狙いとしては、おそらくCD35×I35の組合せが正解なのだろう。低域が若干軽くなるけれど、コンパクトスピーカーなら問題ない程度。

↑I35には新開発のスイッチング電源APFC(アクティブ・パワー・ファクター・コントロール)が採用されている。従来モデルI32に搭載された電源より5%効率を向上させた仕様

↑CD35の接続端子はアナログ音声出力XLRとRCAをそれぞれ1系統、デジタル音声出力は同軸と光を各1系統備える構成だ