去る9月29日(土)に、東京・泉岳寺のヤマハ東京事務所1Fプレゼンテーションルームで開催された「新AVENTAGEシリーズ新製品発売先行試聴会」の様子をお届けする。堀切日出晴さんによる映画愛に溢れる試聴会は、旧モデルとの比較試聴と注目ディスク上映の二部構成で、来場者を大いに満足させる内容だった。今回はその後半部分をご紹介したい。

 ちなみに前半では、CX-A5200+MX-A5200とCX-A5100+MX-A5000でCDやハイレゾ音源の再現がどれくらい変わったかや、新搭載の「SURROUND:AI」の効果を確認してもらっている。後半はそれを受けて、CX-A5200+MX-A5200で思う存分シアター体験をしてもらおうというわけだ。

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コントロールAVセンターのCX-A5200。映画ソースはもちろん、2ch再生でも情報量の違う音を聴かせてくれた

 「さぁ、ここからはシネスコ画面でどんどん作品をみていただきましょう」という堀切さんの言葉で上映がスタート。ちなみに前半の比較試聴でCX-A5200+MX-A5200のパフォーマンスは充分わかってもらえただろうとの判断で、ここからは「ストレート」モードで再生している。

見慣れた作品から、新しい音が聴けた

 後半一枚目はブルーレイで、堀切さんがあちこちのイベントでも再生するお馴染みのタイトルを選んだ。

 「主人公のベルベットボイスとでも言いたい、渋い声の質感がどう出るかを聴いてください。また音楽はエンニオ・モリコーネですが、主人公がとても神経質で、ちょっとした事で感情にさざ波が立つ様を弦楽器でうまく表現しています。それまで綺麗に流れていた弦が、主人公の気持ちが何かに引っかかった瞬間にキュキュキュと鳴るんです。この音が感情を表現する様子がドルビートゥルーHD 5.1chの『ストレート』モードでどう再現されるかを、聴いてください」という解説の後、再生をスタートした。

イベント後半は、堀切さんがお薦めディスクをノリノリで紹介してくれた

 来場者は5分ほどのシークエンスの中で、堀切さんの指摘した箇所に目と耳を集中して試聴をしていた。そして堀切さんの感想は……。

 「CX-A5200は、ひじょうに高解像度、高S/Nでこの作品を楽しませてくれたと思います。このディスクは今まで何回も再生していますが、今回はより鮮明に聴こえた音がありました。具体的にはケーキの蝋燭が消える音とか、ワイングラスを取り出した時のガラスの響きなどです。

 本作は音で感情を描く作品なので、今のような細かい音を再現してくれると、ますます観るのが楽しみになりますね。これほどの微少な音に対してアンプが敏感に反応する、まさに鋭敏です」(堀切さん)

 そしてもう一枚、35年ぶりに製作された有名SF映画の続編をUHDブルーレイで再生した。こちらはドルビーアトモス収録で、フロント/リアハイトを使った7.2.4での再生となる。

 堀切さんによる聴きどころは、アトモスとしての落ち着いた音づくりにあるという。アトモス規格の登場初期はオブジェクトをばんばん回そうとしていたが、最近はそれも落ち着きバランスのいい音づくりがされるようになっている。そういった自然なアトモスの音場がCX-A5200+MX-A5200でどう再現できるかがポイントだ。

視聴システムのフロントサイド。トップスピーカーはフロントとリアに合計4本を使用。これはヤマハのプレゼンススピーカーと同じ配置になっている

 「音を作り込んできた作品をどう再生出来るか。飛行車が飛んでくる音、主人公が歩いた際の床の軋み、敵との会話や、殴り合いの瞬発力の表現がびっくりするくらいでした。

 CX-A5200はDACチップがアップグレードした事によるS/N改善もあって、静謐な中での細かい音がとてもよく再現されるようになっています。また中低域の充実、密度感も凄いですね。

 中でも驚いたのが、主人公の声がわが家のアルテックA5とひじょうに似ていた事です。気迫のこもった声というか、セリフが濃く、深みがありました。発声というのは映画の命です。しかも声のトーンを落としてしゃべっていますが、情報はきちんと聴き取れる。ここもいいですね」(堀切さん)

V9Rはアニメとの相性がいい。この絵には驚いた!

 続いてはアニメーション作品のUHDブルーレイが上映された。タイトルは『リメンバー・ミー』で、音声はもちろんドルビーアトモスだ。ここでも堀切さんから重要なチェックポイントが説明された。

 「この作品ではセリフを聴いていただきます。メキシコが舞台のアニメで、英語の吹き替えにはメキシコ訛りのある声優を使っています。しかしアメリカの観客が聴き取れないといけないので、訛りがありながらも、滑舌のいい声優を厳選したそうです。

 これからかけるチャプター21では、主人公のミゲルとヘクターが縦穴の中に落とされますが、その声の反響、絶望感を含んだアンビエントがどう聴こえるかを確認してください」(堀切さん)

『リメンバー・ミー 4K UHD MovieNEX』(ウォルト・ディズニーVWAS-6720)©2018 Disney/Pixar

 メキシコ訛りの英語といわれても、日本人にはなかなか聞き取ることはできないだろう。でもそう言われて耳をそばだてていると、なんとなく訛っているように思えてくるから不思議だ。これもCX-A5200のマジックなのだろうか。

 「いかがでしたか。静謐な音というか、環境を見事に描き出してくれていましたね。ミゲルとヘクターの関係が分かったときに、ピアニッシモの音楽がサラウンド側からフロント側に流れてきたのに気がついた方もいらっしゃるでしょうか。ひじょうにかすかですが印象に残るいい仕事をしています。

 あと、JVCのDLA-V9Rはアニメーションとの相性もいいですね。150インチの大画面で観て、CGもここまで来たんだと改めてびっくりしました。あの映像にCX-A5200の音がつくわけですから、まさに脳みそが活性化しますよ!」(堀切さん)

 続いては、人気女性シンガーの音楽ブルーレイを上映。ロンドンのライブハウスで収録された、ピアノ、ベース、ドラム、ヴォーカルのきわめてシンプルな構成による演奏で、DTS-HD MAの5.0ch、96kHz/24ビットで収録されている。

 「このライブはかなりオンマイクで、アンビエントも効かせていません。でも楽器の配置や彼女の声がとてもリアルで、心地よかったのではないでしょうか。ブルーレイに入っているステレオ音声も96kHz/24ビット収録で出来がいいので、2chで聴いてもいいと思います。MX-A5200はフロントL/Rのブリッジ駆動もできますので、その場合はもっと安定感が増すことでしょう」(堀切さん)

これぞ映画の“声” 「モノムービー」で大団円

 さて次は、サスペンス作品の米国版UHDブルーレイが登場した。音を出すと異星人に襲われてしまう世界で、ニューヨークの郊外に住む一家がどう生きのびるかというものだ。この約6分間は会場もまさに静まりかえっていた。

サラウンド側はスピーカーを台に載せてやや高めに配置した。リアトップスピーカーはサラウンドとサラウンドバックスピーカーの間に置いている

 「演者にしゃべらせないでどう怖がらせるかを、見事にやってのけた作品です。ドルビーアトモス収録ですが、音がどういう風に空間を占めていくか、あるべき時にどんな具合で鳴るか。そのあたりのサスペンスが素晴らしい。

 音の使い方を逆手にとったところが斬新ですね。ドルビーアトモスの上側360度にきちんと聴かせるべき音が配置されていて、サスペンスを邪魔しない。さらにこのソフトは定位、移動音の再現がとても難しいのですが、それがきちんと再現出来ているあたりCX-A5200の完成度は高いと思います」(堀切さん)

 静かなサラウンドの表現、抑えた音で演出するサスペンス。この難しいテーマを、CX-A5200+MX-A5200は堀切さんの期待以上に聴かせてくれたのは間違いない。なにしろ、作品を選んだ本人が一番怖がっていたのだから。

 そして堀切さんが本イベントの最後に選んだのは、モノーラル収録の日本映画ブルーレイだった。

 「ここまでは『ストレート』で聴いていただきましたが、最後はシネマDSPの『モノムービー』を使って日本映画を楽しんでください。過去の名作にはモノーラルも多いので、それらがCX-A5200でどんな風に楽しめるかを知っていただくもの大切です。

 ラストの決闘シーンを再生しますが、当初はバックに細かい音がいろいろ流れています。でも、緊張感が高まってくるとそれがす〜っとなくなっていきます。そんな演出にも気をつけてください」(堀切さん)

 そして、あまりにも有名な日本映画のラストシーンが上映された。ふたりの侍の会話、高まる緊張感、一瞬の果たし合い、そしてエンドクレジットの「終」の文字。

「ヤマハのCX-A5000やA5100を使っている方はいますか?」という質問に、10名近い方が手を上げた。全員買い替えを考えているようで、ヤマハのAVセンターがユーザーに信頼されているのがよくわかる

 「当時の日本映画のセリフ回し、発声の素晴らしさがわかってもらえたでしょうか。古い作品なので音歪みもあるんですが、その歪み感までいとおしくなります。これを『モノムービー』で聴くと、本当に映画を観たという気分になります。

 ここまでくると、まさに“泉岳寺名画座”と呼びたいですね。最近は二番館も少なくなって、こんな名作を劇場で楽しむこともできません。でも、だからこそホームシアターが活躍するともいえるでしょう。今日のCX-A5200+MX-A5200やDLA-V9Rがあれば、無敵です(笑)。

 今日はCX-A5200+MX-A5200の基礎体力を知ってもらうことを第一にプログラムを組み立てました。ひょっとしたら腹八分目という方もいらっしゃるかもしれませんが、残り二分はご自宅でお楽しみいただければと思います。

 今日の試聴で、CX-A5200+MX-A5200に基礎体力がきちんとあるということをわかっていただけたことでしょう。S/Nがいい、解像感がある、中低域の押し出しがある、高域がきらびやかである、空気感がでる、そんな点がきちんとしているからこそ、映画が心から楽しめるのです。

 そして、基礎がしっかりしているからこそ、シネマDSPをかけよう、『SURROUND:AI』を使ってみようと思えるはずです。今日おいでの方の中にはCX-A5000やCX-A5100のユーザーも多いと聞いていますので、ぜひグレードアップした最新サラウンドの魅力をご自宅で楽しんで下さい」(堀切さん)

イベント終了後、来場者の質問にていねいに答えるヤマハ株式会社 音響開発統括部 AV開発部 電気グループ 主任 佐藤亮太さん(左)

 以上で堀切さんのイベントは終了した。しかしその後も多くの来場者が会場に残り、開発の加藤さんや佐藤さんをつかまえて、質問責めにしていた。それだけCX-A5200+MX-A5200のパフォーマンスは魅力的だったようで、彼らにとって、次のステップアップの目標になったのは間違いない。

 最後に来場者皆さんにイベントの感想をインタビューできたので、ご紹介しておきたい。

高瀬秀樹さん 「CX-A5200の音に大満足。さっそく予約をしなくては」

 自宅では、デノンのAVP-A1HDとアキュフェーズなどのパワーアンプを使ってサラウンドを実践しており、AVプリのグレードアップを考えて参加しました。セパレートAVセンターは製品が少ないので、選択肢で悩んでしまいます。3年前のCX-A5100はドルビーアトモスもどうなるかという雰囲気で、買い替えまではいきませんでした。またA1HDがけっこう太い音で、CX-A5100はそれに比べると線が細い気もしました。今回のCX−A5200は解像度も高く、高音のキレもよくなったと思いました。ライブ作品でもヴォーカルや環境音のバランスがよかったです。映画作品でも満足感は高かったので、CX-A5200を予約したいと思います。

阿部俊彦さん 「ハイエンドオーディオ機器を聴いているようでした」

 AVセンターがどれくらい進化しているかに興味があったので参加しました。現在使っているパイオニアの一体型AVセンターは、アトモスにも対応していないんです。今日の音は、セパレート型とはいえ情報量や迫力が全然違って、びっくりしました。色々な音が綺麗に出てきて、ピュアオーディオアンプで聴いているみたいでした。絵も音もすごくレベルが高く、イベントに参加した甲斐がありました。ヤマハの音としても今までとは印象がすっかり変わりました。思っていたよりずっとハイレベルで、聞きづらいところもまったくなかったです。

和田卓也さん、瑠乃さん
「『SURROUND:AI』なら、もっと作品に集中できそうです」

 今使っているAVセンターはヤマハのRX-A3020で、スピーカーはフロント/リアエフェクト付きの11.1chです。さすがにセパレート型は置けないので、RX-A3080を狙っているんですが、今日はその上位機の音が聴けるということで参加しました。とにかく今日の音は凄かったですね。また「SURROUND:AI」もいいですね。普段はどのDSPプログラムを選べばいいかで悩みますから、AVセンターが自動で選んでくれたら、作品に集中できます。(卓也さん)
 
 『グレイテスト・ショーマン』に驚きました。うちのシアターより音がいいのは分かるけど、それ以上に凄すぎて……感動です。(瑠乃さん)