去る9月19日、セカンド・アルバム『SOLEIL is Alright』を発表。3月にリリースされたファースト・アルバム『My Name is SOLEIL』以上の反響を巻き起こしているSOLEIL(ソレイユ)が10月7日、タワーレコード渋谷店にてリリースイベントを開催した。

 SOLEILは2017年に発足したユニットで、メンバーは、ヴォーカルのそれいゆ、ギターの中森泰弘(ヒックスヴィル、ましまろ)、ベース&プロデュースのサリー久保田(元ザ・ファントムギフト、les 5-4-3-2-1)の3人。15歳になって数ヵ月のリード・ヴォーカリストと、音楽を知り尽くしたベテランふたりの“年代差ユニット”が醸し出す快いサウンドが超満員のイベントスペースに鳴り響いた。

 オープニングはサリー久保田作の「太陽がいっぱい」。TBSラジオの9月度「推し曲」としていろんな番組でパワープレイされ、10月5日にはタワーレコード限定でアナログ盤シングル・カットされたばかりの人気曲だ。モンキーダンスのように両腕を動かす振り付け、ワン&オンリーの歌声に早くも釘付けになる。続いては森若香織が提供した「Sweet Boy」を披露。ボ・ディドリー・ビートを取り入れた曲で、作者みずから振るマラカスがジェローム・グリーン的効果を生む。それいゆは時おりパフォーマンスに小道具を持ち込むが、この曲ではエルヴィス・コステロ、ポール・ウェラー(だと思う)ほかの似顔絵パネルを使っての歌唱が見もの。楽しいオチもある(これはぜひ現場で感じてほしい)。「どんな見かけがかっこよくて勉強やスポーツができる男子よりも、ギターが弾けるひとがいいわ」的な歌詞は、音楽をこじらせてしまったまま生き続けているすべての者の心を揺らすはずだ。澤部渡が書いた、まさしく2018年版マージ―ビート「卒業するのは少しさみしい」(アウトロの前で“You know I feel alright”と歌いたくなる)における、それいゆの歌唱の切なさよ。甘いだけではなく、憂いをも感じさせる声の魅力を感じながら、この場に居合わせた喜びに包まれた。

 ここでそれいゆから、来春の受験に備えて約半年間、活動を停止することが伝えられた。もうファンには周知のこととはいえ、いざこうやって本人の口から改めてきくと、淋しさがこみあげてくるのを抑えきれない。次はカヴァー曲で、アルバム未収録の「恋のハッピー・デート」。オリジナル・アーティストはノーランズだが、ここでは石野真子ヴァージョンの訳詞と振り付けを採用した。それいゆの歌声が持つ数えきれないほどの魅力のひとつに、ぼくは“語尾の発音に余韻を残す”ことをあげたいのだが、それが、この曲では特に強く感じられた。なんというのだろう、各フレーズの最後に、小さく“ン”の字が残っていて、その音符に溢れんばかりのキュートネスが詰め込まれているような感じなのだ。

 続いては高校合格を祈願して、「だるまに片目を入れる」セレモニーを。とはいえブリティッシュ・サウンドをエキスにしているSOLEILなので、いわゆる日本式のだるまではない。目の周りが太い青で囲まれていて、それいゆはその中に丸い赤を描いた。つまりマキシマムR&B仕様のだるまなのだ。来年3月30日、渋谷WWWで行なわれるワンマン「Hello, Again SOLEIL」では、もうひとつの目(眼球)も書き入れるというから、その日がますます楽しみになってくる。

 SOLEILライブの定番である「早いものですね」というフレーズがそれいゆの口から出ると、我々は楽しい時間が永遠に続くものではないという現実に立ち戻される。ラスト・ナンバーはマイクロスターのふたり(飯泉裕子、佐藤清喜)が書いた「Baby Boo」。途中のセリフも悶絶ものの素晴らしさ、そこでオケの音を下げてそれいゆの声を際立たせる音響も気が利いていた。

 2018年は“SOLEILがアルバムを2枚も出した年”として語られていく予感がする。沖井礼二が曲作りに携わった“さくら学院バトン部 Twinklestars”や、元JUDY AND MARYのTAKUYAがサウンドプロデュースしていた“おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!”にも通じる、脳の奥がとろけるようなサウンド作りは、まさに桃源郷と呼ぶにふさわしい。ピースフルなそれいゆポップスが来春、どのような形で「Hello, Again」するのか。期待は高まるばかりだ。

SOLEIL  https://twitter.com/SOLEILTOKYO?lang=ja