9月28日、ついに発売された尾崎亜美初のSACD『HOT BABY』と『POINTS-2』 本プロジェクトも終盤に差し掛かった8月上旬、尾崎亜美さんご本人をステレオサウンド試聴室にお招きし、リファレンスシステムを用いて、制作途中の音をお聴きいただくことができた。お相手は、音質の総合監修をお願いしたオーディオ評論家の小原由夫先生。その時の模様は、9月4日(火)に発売となった季刊ステレオサウンドNo.208の232ページからに掲載されているが、ここでは完全版として、その取材の全貌をお届けする。今回は第2回、アルバム『POINTS-2』についてのお話をうかがった。(インタビューとまとめ:小原由夫、写真:相澤利一、コラム:レコード事業部)

アカペラ「曇りのち晴れ」には亜美さんが20人!?

 続いて、セルフカバー集『POINTS-2』から、全編アカペラの「曇りのち晴れ」を試聴。
「これは延べで20人以上の私を重ねています(笑)。いま聴くと、DSD化されたサウンドはリップノイズが痛く感じませんね。それが気にならないっていうのは、やはりDSDというフォーマットのおかげなのかしら? アナログからデジタルになってからは、録音の現場で「プロトゥールス」というツールがスタンダードになったおかげで簡単に取れるようになったんだけれど、この頃はリップノイズが簡単に除去できなかったんです」

マスター素材の紙箱には、そのテープに関する仕様の記述や、制作時の注意点などが記されていることが多い。このテープのリール、通常のものより大きい12インチサイズなのがおわかりだろうか?

『POINTS-2』のマスター素材は、テープスピード76cm/s、1/4インチ幅のオープンリールテープ。DSD化には最高の条件を備えた音源だった。今回は、この音源を所蔵するポニーキャニオン様より多大なるご理解とご協力をいただき、本来門外不出のマスターをソニー・ミュージックスタジオへと持ち込んでいただき、一連のステレオサウンド制作ソフトを手がいていただいている鈴木浩二さんにマスタリング作業をお願いすることができた。

 他にもアナログっぽい音がするのはマスターがアナログだから?、とか、なかなか鋭い指摘をされる亜美さん。基本的に「私はアナログの音が好き」とおっしゃる。デジタルの便利さもわかるし、活用はしているが、目指している音楽の色合いや温度感は、やはりアナログ時代がルーツだからと分析される。
 この『POINTS-2』は、亜美さんが当時のツアーバンドとLAに出向き、日米混成チームで制作されている。茶目っ気たっぷりの印象的なジャケットも、すべて自身のアイディアでコスチューム等を決めていったという(写真のそれぞれのキャラクターには、名前もちゃんと付いているらしい)。

亜美さんは、録音やミックスなど、音楽制作の技術的な理解もかなり深い。ご自身でDAWなどの操作も行ない、ご自宅のスタジオにこもることも多いとか。ちなみに、ブタさん柄の洋服を見ると、つい買ってしまうのだとか。いろいろなキャラクターが同居する亜美さんなのであった

このアルバムはセルフカバーですが、基本は歌手として楽しみました

 本作に象徴されるように、亜美さんは他の歌手や女優等に楽曲を提供する仕事も多かった。そうしたオリジナル歌手の歌唱を意識したりするのだろうか。
「それはほとんどありませんね。「ボーイの季節」では、“女子”を表出させるところで、表現が松田聖子さんと似てるところがあるかなぁなんて思うこともあります。当時よく言われましたもん。でも、基本は歌手として楽しむ。そこを大事にしています。いま思い出したけど、この『POINTS-2』のコンサートツアーでは、ステージの緞帳をこのジャケットの新聞記事を模して作ったんですよ。好き放題でしたね(笑)」

例えばジャケットの裏面をクローズアップするとこんな感じ。写っているのは全部、変装している亜美さんご本人。ジャケット全体を埋めている文章をすべて読破したわけではないけれど、ちゃんと新聞記事的内容になっている模様。ディスクを手に入れたらぜひじっくりと読んでみてほしい。亜美さんがリリースするアルバム作品のジャケットや歌詞カードは、どれもいろいろな工夫と挑戦に満ちていて、まさに「アルバム」になっていると思う。

<次回へ続く> ※第3回は10月11日(木)の公開となります。SACDの『POINTS-2』が聴いてみたくなった方はこちら! 10月31日(水)より発売される『Air Kiss』『Shot』の予約受け付けも始まりました!
↓↓↓↓↓↓