映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第13回をお送りします。今回取り上げるのは『クレイジー・リッチ!』。ユーモア満載で、女子受けもいい、全米でスマッシュ・ヒットした異色作です。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『クレイジー・リッチ!』
9月28日(金)より、新宿ピカデリー他 ロードショー

 舞台はシンガポール。登場するのは全員がアジア系の俳優。そんな異色のアメリカ映画なのに、蓋を開けたら3週にわたって全米興収1位をキープするスマッシュ・ヒットを記録した。アジア系のお客だけで、この快挙は無理。実体は? と思いながら席に着いたけれど、こう来たかあーと破顔する快作だった。間違いなく女子受けもいいので、この秋お得なデートムービーはコレである。

 親友の結婚式出席のため里帰りする恋人ニックと一緒にシンガポールにやってきたレイチェル。初めて訪れたアジアの地で、彼女はニックが不動産王の御曹司だったことを知る。文字通りクレイジーなセレブの世界に足を踏み入れてしまったレイチェルは、彼との愛を貫けるのか?

 ドタバタのラブ・コメディであり、カルチャーギャップ・ドラマでもある。マリーナ・ベイ・サンズ・ホテル屋上の、あの奇天烈ドリーミンな天空プールなどが登場する観光映画であり、衣装や室内装飾、宝飾品も光りすぎ。目がくらむよ!

 その昔ビートルズも歌ったヒット曲「マネー」や、プレスリーの「好きにならずにいられない」、『6才のボクが、大人になるまで。』でも流れていたコールドプレイの「イエロー」などをアジア系のシンガーがカバーしているのもエキゾチックに聞こえたはず。パーティ場面に流れるテレサ・テンの名曲「甜蜜蜜」もロマンチックだ。

 どんな家族や文化にも滑稽な側面や、微笑ましく思える魅力があるもの。この映画はそれらの差異と共存を巧みなユーモアで包んだ一本だったのだ。移民の国アメリカで共感を呼んだのは当然だろう。

 私はこんな小娘は認めませんよ! という一族の女帝に『ポリス・ストーリー3』や『マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限』の女傑ミシェール・ヨー。冒頭に彼女が怒りを抱え込むシーンがあり、もちろん今回はワイヤーワークで宙を跳んだりはしないけれど、刀を抜いてホテルを一軒ツブしにかかるんじゃないかとヒヤヒヤした(笑) さすがの目力。快演である。

 全員がカラード、アジア系でも勝負になる。『クレイジー・リッチ!』のヒットはハリウッド映画の間口を広げるかもしれない。笑いながら世界を変える。それはチュウ監督らスタッフ全員の願いでもあるだろう。

『クレイジー・リッチ!』

9月28日(金)より、新宿ピカデリー他 ロードショー
監督:ジョン・M・チュウ
原題:Crazy Rich Asians
配給:ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/120分/シネマスコープ
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT

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