本気でテレビの音をよくしたい、本気でテレビの音に感動したい人に向けた、本気のステレオAVシステムプランの一例をご提案
シャープの60インチ4K液晶テレビ、4T60AM1の相棒となるオーディオシステムとして選んだのは、こだわり派の玄人筋を中心に根強い人気を誇る、エラックの小型スピーカー、BS302と、先進的な音場補正機能を備えた同社のプリメインアンプEA101EQ-Gの組合せだ。
▶ SYSTEM 1
Speaker System ELAC BS302 ¥87,000(ペア)+税
Speaker Stand ELAC LS STAND SAT for BS302 ¥45,000(ペア)+税
SubWoofer ELAC SUB2030 ¥95,000+税
Integrated Amp. ELAC EA101EQ-G ¥130,000+税
Sound System Total ¥357,000+税
4K LCD Display
SHARP 4T-C60AM1 オープン価格(実勢価格26万円前後)
UHD Blu-ray Player
Panasonic DMP-UB900 オープン価格(実勢価格13万円前後)
BS302はアルミ押し出し成型されたエンクロージャーに独自開発の同軸ユニットを組み込んだ単品モデルだ。前作の301.2に比べると、わずかに小型化され、背面、底面にそれぞれ6mmのインサートナットが新設されている。専用ブラケットはもとより、汎用ブラケット(B-Tech BT33など)もそのまま使えるようになったわけだが、今回の試聴では、省スペースかつ、スマートな設置が可能な専用スタンドを使用した。
EA101EQ-Gはラウンドシェイプのコンパクトな筐体が特徴的で、ネジの露出を控えた外装設計からは、デザインへの意識の高さをうかがわせる。増幅部には同社のサブウーファーで実績のあるBASHテクノロジーを投入。詳細は非公表だが、アナログアンプのS/Nのよさと、デジタルアンプの効率の高さを併せ持った独自のハイブリッド回路技術で、80W/ch(4Ω)の出力を確保している。
入力は2系統のアナログRCAと、最大192kHz/24ビットまでサポートする4系統(同軸1、光2、USB1)のデジタルを装備。またサブウーファー用出力も備えているため、今回の試聴でも2.1chシステムを試すつもりだ。
基本機能は付属リモコンで操作できるが、iOS/アンドロイド端末用操作系アプリ「EA101EQ-G app」の活用も可能。入力の切替え、音量調整などの基本制御が可能だが、メインスピーカーおよびサブウーファーの音響特性を測定して自動音場補正を行なうオートEQ機能「Auto Blend」はもっぱらこのアプリで設定することになる。
2.1chシステムで使用するサブウーファー、SUB2030についても簡単に紹介しておこう。定格300Wのパワーをコンパクトなサイズで実現したBASHテクノロジー搭載のアンプが特徴的で、密閉型エンクロージャーに収められたロングストロークの25 cmウーファーを確実にグリップして駆動する。ちなみに上級機でお馴染みの「SUB Control」アプリには非対応。ただ「EA101EQ-G app」で同様の効果が得られるという。
アンプ搭載の自動調整機能は2.1ch再生時に有効だ
システム1のテーマは、リビングのオーディオシステムとしてのクォリティを確保した上で、60インチの4K液晶テレビの映像に違和感なく寄り添えるサウンドを実現すること。基本はステレオ再生。さらにそこにサブウーファーを加え、2.1chシステムによるワイドレンジ再生に挑戦するというストーリーだ。
ステレオ再生については、主に別掲の接続図①/②の2通りの接続が考えられる。シンプルな接続を追求するのなら接続①だが、プレーヤーによるCD再生では、テレビ経由でプリメインアンプに信号が伝送されることになり、合理的とはいえない。プレーヤー本来のクォリティを活かすという意味でも、接続②が標準と考えるべきだろう。
接続②でまずプレーヤーとデジタル同軸接続でCDを再生し、BS302を用いた2chシステムとしての素性の検証といこう。音の粒子がギュッと凝縮され、フワッと解き放たれる感じが実に新鮮だ。清々しく、雑味を感じさせないサウンドから、スピーカーとしての作りのよさが実感できる。
続いて取材中にたまたまオンエアしていた『にっぽん縦断こころ旅』(NHK BSプレミアム)も再生してみたが、明確な声の定位に加えて、屋外独特の空間の拡がりが感じられ、男臭さ満載の火野正平の声も実在感がある。リビングルーム用オーディオシステムとして充分に通用するクォリティと見た。
続いて「Auto Blend」機能の検証。測定にはアプリをインストールしたiOS/アンドロイド端末のマイクを使い、スピーカー直近とサブウーファー直近、そして試聴ポジションの3点で行なう。測定が終わると、端末の画面にはスピーカー直近の特性と、試聴位置の特性がそれぞれ紫と赤のカーブで表示され、自動的に最適な周波数カーブ(緑カーブ)に補正されるという仕組みだ(2chシステムでの測定も可能でその場合は、スピーカー直近と試聴ポジションの2点での測定となる)。
2chシステムと、サブウーファー、SUB2030を加えた2.1chのシステムの両方で試してみたが、その効果はいずれも明確で、懸念された副作用もまったくといっていいほど気にならなかった。
まず2chシステムで本機能を効かせると、明るく開放的に聴かせるという基本的な音調はそのままに、足元の安定感が増して、目の前に拡がる空間の奥行がグッと拡張される。音のフォーカスが引き締まり、格調の高さを感じさせる再現性は、聴き応え充分だ。
続いて、2.1chシステム。「Auto Blend」をオンにした瞬間に目の前に拡がる風景が一変してしまった。緻密かつきめ細かな音調は変わらないが、低音がキリッと引き締まり、分解能に余裕が生まれる。この機能の恩恵はきわめて大きい。
『にっぽん縦断こころ旅』でも火野正平の胸板がグッと厚みを増し、自転車を漕ぐ音、風、鳥のさえずりなどの細かな効果音も、よりスムーズに再現される印象だった。
このスマートなシステムからここまでの再現性が得られるとは
映画『シカゴ』はどうだろう。「セルブロック・タンゴ」のシーンと、レニー・ゼルウィガーと、キャサリン・ゼタ=ジョーンズの2人がステージで躍動するフィナーレを中心に観たが、女性たちの声や牢獄の響きの生々しいこと。
●視聴ソフトの聴きどころ
ミュージカル映画の最高傑作の1本に数えられる『シカゴ』。当然ながら、音楽が主役の作品だが、多彩な効果音を巧みに織り込んだストーリー展開で、特に低音を駆使した演出は聴き応えがある。今回はその歌声とダイナミックレンジの広い効果音をいかに再現できるかに注目した。そして『にっぽん縦断こころ旅』は俳優、火野正平が、視聴者からの手紙をたよりに日本全国、自転車で訪ねるという紀行番組。ここでは火野の男臭い声と屋外の自然音がどのように再現されるのを検証した。
「Auto Blend」オフでは、2本のスピーカーとサブウーファーが別々に鳴っている感じが残り、結果としてセリフのフォーカス、定位、空間の拡がりといった部分で、つながりの甘さが払拭しきれなかった。
ところが「Auto Blend」オンで、そうした不満はほぼ一掃される。セリフの生々しいニュアンスもさることながら、空間の余韻、気配がていねいに描き出され、音楽と効果音が浮遊しながら、臨場感を高めていく。がっちりとした低音と厚みのある中高音の響き、そして清々しい空間描写が満喫できる上質なサウンドシステム。このスマートさで、ここまでの再現性が得られるとは―――。大きな驚きだった
<結論>緻密で雑味のないサウンドはまさに高級オーディオグレードだ
エラック伝統の300LINEの血統を受け継いだBS302と、最先端の機能性を備えたEA101EQ-Gの組合せ。デザイン性に優れ、設置場所を選ばないスマートさは、60型前後の4Kテレビ用オーディオシステムとして、おあつらえ向きだ。そして緻密で、雑味のないサウンドはまさに高級オーディオグレード。特にサブウーファー、SUB2030を加えた2.1chシステムの満足度はきわめて高い。
●お問い合わせ先
[ ELAC ] ㈱ユキム 03(5743)6202
[ SHARP ] シャープ㈱お客様ご相談窓口 0120-001-251
[ Panasonic ] パナソニック㈱DIGA・オーディオ ご相談窓口 0120-878-982
※ラックはクアドラスパイア製QAVX(問合せ先:フューレンコーディネート 0120-004884)