遂にパナソニックが「テクニクス」ブランドでSACDに進出。

テクニクスブランドで、ついにパナソニックがSACDプレーヤー(画像上段)のプロトタイプを発表。DVDオーディオとの戦争は過去の話となった

 20年近く前、ポストCDフォーマットとしてパナソニック(当時は松下電器)が押すDVDオーディオと、ソニーが押すSACDが争い、結局、DVDオーディオは敗退し、SACDが勝った。とはいえ、SACDがポストCDのメインフォーマットになったのかというと、実情はそれほどのことでもない。

 がしかし、ハイエンドなユーザーはSACDが好きで、着実にSACDは新譜でもリリースされている。IFA開催地のベルリンがらみの話をすると、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のプライベートレーベルは当初、SACDなしのCDのみでアルバムをリリースしていたが、今やSACDが標準のフォーマットになっている。

 というわけで、IFAのテクニクスブースでの最大の話題が、SACDプレーヤー/ネットワークプレーヤー試作機の展示だ。なぜSACDなのか。井谷哲也・テクニクスCTOが明かした。

スペック表には「MQA」の文字も。ユニバーサル・ミュージックの参入で盛り上がっているMQACD対応プレーヤーとなるという

 「ここ1〜2年のことですが、実は世界的にSACDの人気が復活しているのです。リリースも増え、月に30タイトルほどがリリースされています。これまで全世界で累計約1万タイトルが出ています。ヨーロッパのテクニクスのディーラーさんからも、SACDプレーヤーがぜひ欲しいという声をたくさんいただきました。

 われわれの製品ポートフォリオでも、グランクラスの製品ラインナップでは、SL-1200シリーズのアナログプレーヤーやアンプ、スピーカーは揃っているのですが、ネットワークプレーヤーやディスクプレーヤーが欠けていました。そこを埋めてラインナップを完成させるという思いもあります」

 そこでメディア対応を徹底的に欲張った。製品コンセプトが「SACDからハイレゾ、ストリーミングまであらゆるオーディオ・メディアを高品位サウンドで楽しめる、高音質デジタルテクノロジーを結集したマルチデジタルオーディオプレーヤー」だ。なので、開発品はSACDプレーヤーであり、同時にネットワークプレーヤーでもある。Wi-Fi、AirPlay対応、Bluetooth機能もある。

バックパネル(画像上段)を見ると、DAC用のUSB端子がないことに気付く。PCからの再生はネットワーク経由になる

 「製品のポイントは3つあります。①SACDからストリーミングメディアまで多彩な音楽ソースを再生します。②テクニクスデジタルプレーヤーで培った高音質技術を結集。低ノイズ、低ジッター化を徹底します。③品位の高いサウンドを演出する高品位デザイン。ディスクメカを三層シャーシで支え、ティスクトレイもアルミダイカストのリジッドな素材でつくります。とにかく、テクニクスが初めて出すSACDプレーヤーに大いに期待ください」(井谷氏)

 SACDに加え、もうひとつ大いに期待したいのが、MQAである。テクニクスは日本メーカーでもっとも早い時期にMQA技術を搭載したメーカーだ。ネットワークプレーヤーとしてMQAファイルが再生できことに加え、MQA-CDもフルデコードで完璧に再生できる。

 ユニバーサル・ミュージックが6月にMQA-CDを一挙に100タイトルもリリースしたことで、いまたいへんな話題になっている。だがMQA-CDが再生できるプレーヤーは、韓国カクテルオーディオ、本家のメリディアンなど、ごく少ない。そこで大いに音質にこだわった、そしてSACDも再生できる本プレーヤーが歓迎されるのである。

 ノルウェーの高音質レーベル、2Lは、ハイブリッドSACDのCDレイヤーをMQA-CDにしている。ぜひ新しいプレーヤーで、同じ音源でのSACDとMQACDの比較を試したいものだ。

SACD/ネットワークプレーヤーで、空白だったラインナップが埋まる