近日発表の新サラウンドフォーマットにも対応

 デノンから新型AVアンプ、「AVC-X6500H」と「AVR-X4500H」が9月中旬に発売される。価格はAVC-X6500Hが¥320,000(税別)、AVR-X4500Hが¥170,000(税別)となる。

▲AVC-X6500H

▲AVR-X4500H

 両機は、ドルビーアトモス、DTS:X、Auro-3Dに対応する一体型AVアンプで、AVC-X6500Hは11chアンプを、AVR-X4500Hは9chアンプを内蔵している。X6500Hは従来機「AVR-X6400H」の、X4500Hは「AVR-X4400H」の、それぞれ後継機種としての位置づけとなる製品だ。

 従来機からの機能等に関する変更点は以下の通り。
1 外観デザイン変更
2 新サラウンドフォーマット新対応
3 AirPlay2新対応
4 eARC(エンハンスド・オーディオ・リターン・チャンネル)新対応
5 ALLM(オート・ロー・レイテンシー・モード)新対応
6 エコモードの動作アルゴリズム変更

 1の外観デザインに関しては、「AVC-X8500H」で採用された直線基調のフロントパネルを特徴とする新デザインとなっている。

 2の新サラウンドフォーマットに関しては、近日中にライセンサーから発表がされる予定で、X8500Hも含めた3モデルが世界初の対応となる見込みだ(後日アップデートにて対応)。

 3のAirPlay2への対応は、デノンではすでに対応アップデートのリリースがアナウンスされているが、それらと同じ対応を果たす。マルチルーム等での利用やSiriを使ったボイスコントロールができる。

 4のeARCは、HDMI規格のひとつ、ARC(オーディオ・リターン・チャンネル)の拡張版で、テレビからAVアンプへ、従来では対応していなかったドルビーアトモスやDTS:Xなどのオブジェクトオーディオ信号、ならびに非圧縮(PCM)の5.1ch、7.1ch信号を伝送できる。

 5のALLMは、ゲームやVR(仮想現実)など、遅延が問題となるコンテンツの場合に、遅れが最小限となるよう自動でモードを切り替える機能となる。HDMI2.1規格での新機能を先取りした格好だ。

 6のエコモードの動作アルゴリズム変更は、エコモード「オート」の時の省電力動作と通常動作の変更切り替えに入力信号検出を追加、無音状態の場合は省電力動作に、音声再生時は音質を重視したモードに賢く切り替わる。開発陣いわく「使えるエコモード」になっているとのこと。すでに「AVR-X2500H」等、今年リリースされた「x500」世代のAVアンプには搭載されている。

動作アルゴリズムの変更で、より使えるようになったという「エコモード」

 上記以外の機能や仕様面については、従来機とほぼ同等と考えてよい。つまり、先述したドルビーアトモス、DTS:X、Auro-3Dなどの新時代の立体サラウンドフォーマットの対応や、パワーアンプの出力値や構造・構成、あるいはデジタル信号処理の核となるDSP素子、音質のキモとなるDAC素子等については基本的に従来モデルから継承されている。

▲両機に搭載されたDAC基板。左がX4500H、右がX6500H

 デノンでは、今年2月にAVアンプのフラッグシップ機、AVC-X8500Hをリリース、高い評価を受けている。デノン設計陣にとっても、X8500H開発において数多くの知見やノウハウが得られたという。今回発表になった2製品は、すなわち従来機のX6400HやX4400Hをベースにして、X8500Hで得られた音質面のノウハウを盛り込んでサウンドグレードを大きく向上させたことを目標に置かれた。いわば、「音質チューニング」を軸に改良を果たした新製品群と捉えればよいだろう。

最上位モデル開発で培ったノウハウを投入し、音質をさらに向上させた

 ではどのように音質チューニングを行なったのだろうか。説明会で解説された具体的な例を紹介したい。

 AVC-X6500Hに関しては「低域伝送特性の改善」と「D/Aコンバーターの性能を引き出す」のふたつのテーマに対してのチューニングが行なわれた。開発を担当した髙橋佑規サウンドマネージャーよる説明をまとめると次の通りとなる。

AVC-X6500Hの開発を担当した髙橋佑規サウンドマネージャー

 「低域伝送特性の改善」というテーマに対しては、次の4項目について手が加えられた(カッコ内は具体的な改善手法を示す)。
●パワーアンプ帯域幅の拡張(→ELNA社製音質グレードの入力結合コンデンサー採用)
●伝送路の抵抗成分の低減(→ボリュウムの出力抵抗を47Ωから0Ωに)
●パワーアンプ用の電源整流回路の高速化(→高速ショットキーバリアダイオードの採用)
●プリアンプ用の電源コンデンサーの改善(→ELNA社製の容量1000uF/25V電解コンデンサー採用)

 「D/Aコンバーターの性能を引き出す」というテーマは、DAC素子後段のフィルター(ポストフィルター)と電源部の改善を行なっている。

 DAC後段のポストフィルターの改善は次の通り。
●動作点の改善(→ポストフィルター用オペアンプに定電流負荷をつけてA級動作をさせる)
●抵抗成分の可能な限りの低減(→DAC出力抵抗を100Ωから47Ωに低減)
●薄膜抵抗の採用(薄膜抵抗の採用)

 電源部に関しては、●電源および基準電源コンデンサーの容量とグレードアップを図り、ELNA社製オーディオグレードのパーツの採用、という変更を行なった。

▲AVC-X6500Hの内部構造

 AVR-X4500Hの音質チューニングは、X4500Hを担当した渡辺敬太エンジニアから説明があった。

AVR-X4500Hの音質チューニングを担当した渡辺敬太エンジニア

●パワーアンプ用電源の電解コンデンサーの新規開発。大型化と内部仕様、スリーブ材質の変更
●パワーアンプ帯域幅の拡張。ELNA社製音質グレードの入力結合コンデンサー採用
●プリアンプ用電源のチューニング。電解コンデンサーの大容量化(4700uFから6800uFに)●整流ダイオードをファーストリカバリータイプに変更、ボリュウム出力抵抗を0Ω化しパワーアンプ直結とした
●DAC回路の改良。ポストフィルターの薄膜抵抗の採用や電解コンデンサーの容量アップと高品位パーツ(ELNA社製)を採用

▲AVR-X4500Hの内部構造

 こうしたやや細かいチューニングの中身は、プロフェッショナルが行なう音質チューニングのノウハウに属し、一般的にはあまり公開されることは少ない部分である。異例ではあるが、X8500H設計を踏まえた音質改善ポイントの実例として今回公開されたわけで、それこそ、2モデルがいかに音質向上に意を尽くした「チューニングモデル」であることの証、デノンのAVアンプ開発陣がこの2機種にかける「本気」の現われだ。

 なお、デノンのAVアンプの型番は、ラジオチューナー内蔵を意味する「AVR」と、非内蔵の「AVC」のふたつがあり、今回の2製品でいえば、X6500Hはチューナー非内蔵仕様、X4500Hはチューナー内蔵の仕様となっている。

AVC-X6500Hの主な仕様

搭載パワーアンプ数:11ch
定格出力:140W+140W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%、2ch駆動時)
実用最大出力:250W(JEITA:6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動時)
最大信号処理数:11.2ch(11.2chプリアウト搭載)
寸法:W434×H167×D389mm(アンテナを寝かせた場合)
質量:14.6kg
消費電力:750W(通常待機時0.1W)
バイアンプ駆動:5.1ch対応

AVR-X4500Hの主な仕様

搭載パワーアンプ数:9ch
定格出力:125W+125W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%、2ch駆動時)
実用最大出力:235W(JEITA:6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動時)
最大信号処理数:11.2ch(11.2chプリアウト搭載)
寸法:W434×H167×D389mm(アンテナを寝かせた場合)
質量:13.7kg
消費電力:710W(通常待機時0.1W)
バイアンプ駆動:フロントL/R対応

X6500H/X4500Hの共通仕様

主な対応サラウンドフォーマット:ドルビーアトモス、DTS:X、Auro-3D
HDMI端子:入力8系統(内フロント1)、出力3系統
※リア装備の端子(HDCP2.2&18Gbps対応。HDR10、HLG、ドルビービジョンのパススルー対応)
DSP素子:アナログ・デバイセズ製SHARC×4
DAC素子:旭化成エレクトロニクス製AK4458VN×2
音場補正技術:Audyssey MultEQ XT32(Audyssey MultEQ Editorアプリ対応)、Sub EQ HT
ネットワークオーディオ機能:HEOS対応
音楽ストリーミング/インターネットラジオ対応:Amazon Music、AWA、Spotify、SoundCloud、TuneIn
ハイレゾ音源対応:192kHz/24bit(PCM)、5.6MHz/1bit(DSD)※DLNAおよびUSBメモリーで対応
無線LAN対応:IEEE802.11a/b/g/n準拠、2.4GHz/5GHz対応
Bluetooth対応:ヴァージョン3.0+EDR対応、SBCコーデック対応
その他:Denon Link HD端子、RS-232C、DC-トリガー端子、セットアンプマイク、マイクスタンドなど