スカパーJSAT(株)とアストロデザイン(株)、(株)朋栄、ソニービジネスソリューション(株)は、8月26日(日)に開催された陸上自衛隊「富士総合火力演習」のリアルタイム8Kパブリックビューイングを開催した。

 会場となったアストロデザイン本社視聴ルームには、同社の8K DLPプロジェクターが設置され、約200インチのスクリーンに映像を投写していた。映像のスペックは8K/60pでHDR方式はHLG、色域はBT.2020とのことだった。

アストロデザイン本社に設置された8Kスクリーン。緻密で、かつ明るい映像が再現されていた

 今回のパブリックビューイングは、「2SI分割方式」を使用し、現行の4Kエンコーダー/デコーダーを用いて8K信号を伝送している点が特長となる。2SI分割とは、データ量の多い8K信号を伝送する際に、そのデータを4分割して負荷を軽減する方式だ。

 8Kの分割伝送としては、画面を上下左右(田の字型)に4分割する「SQD」(Square Division)と、2画素単位で細かく区切る2SI(2 Sample Interleave)のふたつがあるが、今回は先述のように、2SI方式が使われている。

 現地での撮影では、アストロデザイン、シャープ、ソニーの8Kカメラを4台と、スーパースロー用4Kカメラ(8Kにアップコンバート)が使われ、その映像を2SIに変換、4つの4K信号をそれぞれ4Kエンコーダーで圧縮してJCSAT-3A衛星経由で送出した。

 そしてその放送波をアストロデザイン本社屋上に仮設置されたアンテナで受信し、4台のデコーダーで解凍後、4本の12G-SDIケーブルでDLPプロジェクターに入力して、スクリーン上に8K映像を再現するという構成だ。ちなみに8K全体での転送レートは150Mbpsに抑えられているという。

8K解像度を持つDLPチップを搭載した業務用8Kプロジェクター。2SI信号の入力も可能

パブリックビューイングの再生システム

●8Kカメラ:アストロデザインAH-4801-G、シャープ8C-B60A、ソニーF65RS+BPU-8000
●4Kエンコーダー/デコーダー:富士通IP-HE950
●8Kコンバーター(2SI変換):アストロデザインSC-8219
●12G-SDI対応プロセッサー:朋栄FA-9600
●8Kレコーダー:アストロデザインHR-7518
●8Kディスプレイ:シャープLC-70X500
●8Kプロジェクター:アストロデザイン8K DLP

車両の金属の質感再現はとてもリアル。隊員の表情まで確認できる解像力

 パブリックビューイングでは26日午前10時の演習開始から、休憩をはさんで第二部が終了するまでのすべてが中継された。演習場全体を俯瞰した8K映像では、画面手前に観客席、中景に演習のフィールド、遠景に砲撃の的が置かれた高地が映し出されている。

 当日はあいにくの霧で遠景は霞みがちだったが、手前の観客席には強い日差しがあたり、詰めかけた観客の白い帽子や服が強い反射を生み出していた。その明るい部分から、霞んでいる遠景までが白飛びすることなくきちんと再現されており、HLGの効果がしっかりと確認できる映像になっていた。

演習場全体を捉えた映像。近寄ってみると、遠景の的のディテイルまで再現されている。これが8Kの情報量だ

 そしてHLGの恩恵は、続々登場する車両の表現にも顕著に現れていた。軽装甲機動車や16式機動戦闘車、水陸両用車などのボディの金属感や艶、質感まできわめてリアルに再現されたのだ。

 加えて砲弾の発射場面で砲身から吹き出す炎の生々しさ、演習後半で発煙弾を発射した際の白い煙も、とても自然だった。SDRではもっと単調になるであろう白の階調再現が豊かになり、中央のピークから周辺の消え際までなめらかなグラデーションが再現されていた。

 もちろん8Kならではの精細感も素晴らしい。200インチスクリーンの正面から3.5mほどの席に座ったが、砲弾を装填する隊員の表情がはっきり観え、迫力充分。誇張ではなく、大きな窓越しに現場を観ているかのように感じた。

 試しにスクリーンから30cmくらいに近づいてみたところ、(引きの映像にもかかわらず)観覧客ひとりひとりの服装はもちろん、表情まではっきり識別できた。このディテイル再現性こそ8Kの魅力であり、先日アストロデザインの鈴木社長が「麻倉怜士のいいもの研究所」で語ってくれた、“まったく新しい映像”の可能性なのだろうと思った次第だ。

 スカパー!では今後もより効率的な8K中継制作、パブリックビューイングの実施、ドームなどへの応用を目指して検討を進めていくという。

パブリックビューイングの伝送システムはこちらの通り(スカパーのリリースより)