フラッグシップモデルを踏襲したデノンのミドルクラスヘッドホン

 デノンの「AH-D5200」は、昨年50周年記念モデルとして登場した「AH-D7200」直系のミドルクラスヘッドホン。パーツや構成などをほぼそのまま継承しながら、より身近な価格を実現している。

デノンのヘッドホン「AH-D5200」。オープンプライスで想定市場価格は6万5,000円前後

 新開発のドライバーユニットは、口径50mmのフリーエッジ・ドライバーで、振動板全域の均一な動きを実現。磁気回路にはネオジウムマグネットを採用した。ハウジングの素材は高い硬度を持つゼブラウッドで、ディテイルの緻密な描写を追求したという。名前の由来でもある縞模様は、本機の外観上の特徴だ。

同社の上級機、AH-D7200から継承した50mm径のフリーエッジ・ドライバーを搭載。振動板の素材はAH-D7200のナノファイバー・ペーパーに対し、AH-D5200はペーパーを用いている

 大口径ドライバーを備えることもあり、ハウジングは大柄で、装着すると耳全体を包むようにフィットする。人工皮革のイヤーパッド内には形状記憶フォーム素材が充填され、快適な装着感と高い気密性を両立している。ヘッドホン自体は385gで軽いとは言いにくいが、フィット感のよさと優しい感触でホールドされることもあり、思った以上に軽快だ。

ケーブルは着脱式で、モノーラルミニプラグの両出し。4N OFC(99.99%無酸素銅)を導体に採用。手触りがよく、強度にも優れる布巻きを施している。プラグ部は、削り出しのアルミスリーブを用いている

 試聴はアステル&ケルンのA&Ultima SP1000をリファレンス機器とし、まずはいつものテオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナによる『チャイコフスキー: 交響曲第6番』を聴いた。広々とした響きの美しさが印象的で、開放型に近いヌケのよい音場だ。上質なホール内で聴いているようなゆったりとした響きはあるが、個々の楽器の音色は粒立ちよく描かれ、定位が曖昧になることはない。音場が広いこともあって、音像はやや遠めのイメージになるが、フォーカスがピタリと合った緻密な再現になる。

 低音はアタックの鋭さは穏やかになるが、力感や低域の伸びは優秀だ。アコースティック楽器の豊かな低音を実に魅力的に描写する。穏やかなようでいて低音の音階もきちんと鳴らし分けるなど、解像感と描写力のバランスがよい。

 テンションの高いジャズは、キレ味よりも、軽快に弾むリズムで迫る。生音に近いリアルな音色とグルーヴ感のよさが気持ちいい。電子楽器を多用したポップスなどはやや上品に感じるが、アコースティックな楽曲との相性のよさは抜群。弟モデルと言うのがもったいない、力作である。

HEADPHONE
DENON
AH-D5200
オープン価格(実勢価格6万5,000円前後)
●型式:密閉型●使用ユニット:ダイナミック型50mm●再生周波数帯域:5Hz〜40kHz
●インピーダンス:24Ω
●出力音圧レベル:103dB/mW
●付属品:3.5mmステレオミニ端子ケーブル(約3m)ほか
●質量:385g(本体)

DENON AH-D5200の製品紹介ページ
https://www.denon.jp/jp/product/headphones/classicoveronear/ahd5200

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