4万9152タップのWTAフィルターへと進化。小型据え置きDAC「2Qute」の後継機

 コードからたいそうコンパクトだが、アルミ削り出しの精悍なボディをまとったD/Aコンバーター「Qutest」が登場。本モデルは同社のコンパクトDAC、2Quteの後継モデルとなるが、性能は大幅に進化していた。

 コードのD/Aコンバーターの音のよさは、卓越したアルゴリズムをFPGAに投入したディスクリート構成のパルスアレイDACに秘密がある。開発者のロバート・ワッツ氏は、「汎用のDACチップではデジタル信号を元の波形に戻したときに、無視できないタイミングのずれが生じる」と語る。解決にはFIRフィルターのタップ長を飛躍的に高め、演算回数を圧倒的に向上させる必要があるとのこと。ワッツ氏は自ら考案したWTAフィルターによって、本機はこのクラスでは驚異的な4万9152タップ(Hugo2もほぼ同じ数値)を実現。さらにUSB入力でのノイズフィルター機能「ガルバニックアイソレーター」の搭載や、4種類から選べるデジタルフィルターの装備など、本機はコンパクトな据え置き型DACとして最高峰を目指した製品となっている。

デジタル入力は、USBタイプB、光、同軸(BNC)を装備。USB入力ではPCM・768kHz/32bit、DSD・22.5MHz再生まで対応する。電源はACアダプター方式から、USBmicroBを使っての外部給電へと変更された

 PCとのUSB接続で、超高域で鋭くロールオフするデジタルフィルター「Incisive neutral HF roll-off」を選んで試聴をスタート。アンネ=ゾフィー・ムター『シューベルト:ピアノ五重奏曲《ます》』(96kHz/24bit/FLAC)は、オッポデジタルUDP205のUSB入力と聴き比べても、より滑らかで温かみのある音。ヴァイオリンをはじめとする4挺の絃楽器は木質感を感じさせて、およそデジタルファイル再生とは思えない艶やかなサウンドにうっとりした。

 ブルーノート・オールスターズ『アワー・ポイント・オブ・ビュー』(96kHz/24bit/FLAC)から「マスカレロ」の過激なサウンドも、線が細くならず力感は充分。音は同社フラッグシップDACのDAVEにかなりよく似ている。USBの外部給電式のせいか、低域の重量感で差は出るものの、それでもこの価格でこのような緻密で躍動感のある音はやはり驚異的と言わざるを得ない。大推薦である。

D/A CONVERTER
CHORD
Qutest
オープン価格(実勢価格18万5000円前後)
●接続端子:アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声入力4系統(光、BNC×2、USBタイプB)
●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜768kHz/32bit(PCM)、〜22.5MHz/1bit(DSD)
●寸法/質量:W160×H42×D72mm(突起部を除く)/787g

CHORD Qutestの製品紹介ページ
https://www.chordelectronics.jp/products/qutest-range/qutest/

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