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SACD/CD Player
Pioneer
PD-70AE
¥280,000+税
●再生可能ディスク:SACD、CD 他
●接続端子:アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、デジタル音声出力2 系統(同軸、光)、デジタル音声入力2系統(同軸、光)他
●寸法/質量:W435×H142×D413mm/19.6kg

 「PD-70AE」は、パイオニアが地道に培ってきた光ディスク再生の技術、ノウハウを集結し、仕上げられた意義深いSACD/CDプレーヤーだ。ディスク再生に特化したモデルだけに、USB DAC機能、USBメモリー再生機能ともに搭載は見送り(データディスクのハイレゾ再生は可能)。光/同軸のデジタル入力は備えているが、これも開発時の音質検証用として考えられたもので、積極的な装備ではなかったという。

 シールド構造のSACDドライブは、現在、選択しうる高精度メカ(カスタム品)を選別したもの。制振黒塗装を施したハニカムメカカバーの効果もあり、SACDプレーヤーとしてトップレベルの読み取り精度を確保しているという。

DACチップは同社が使い慣れているというESSテクノロジー社製の「ES9026PRO」。これは高級機器を中心に重用されてきた「ES9016S」の後継で、チップ自体は768kHz/32bitをサポート。8ch仕様のデバイスだが、これを左右ch独立で配置し、各8chパラレル駆動する。

DACのロックレンジ精度を調整し、ジッターを軽減する「LOCK RANGE ADJUST」機能も搭載された。すでに同社のネットワークプレーヤーで実績のある技術だが、6段階の調整を追い込むことで、確かな音質改善が図れる。マニアならずとも、ぜひ活用してみたい機能だ。

DAC以降のアナログ処理はL/R独立のフルバランス回路で構成され、アンバランス出力のオン/オフ機能も搭載済み。バランス接続では伝送系の共通インピーダンスが抑えられ、理想的なS/N、セパレーションが得られるというわけだ。

中央下部にデジタルの入出力、左側にアナログ出力とシンプルな構成。バランス出力端子は試聴を繰り返して高品位なものを厳選しており、アンバランス出力には金メッキ削り出しの端子を採用している。インシュレーターは内部で平行面を持たないように設計された高比重の真鍮製だ

中央下部にSACD/CD対応のディスクドライブを、右側にはオーディオ基板を配置する。左側のEI型電源トランスはデジタル回路用とアナログ回路用をそれぞれ搭載し、電源基板もそれぞれディスクリートに搭載する仕様。これによりノイズの少ないクリーンな電源を供給できるとする

制振効果があるという黒塗装を施したハニカムメカカバーのシールドで覆われるディスクドライブを搭載。メカベースは減衰性の高いパルプ素材を挟み込む形でフローティングさせて固定している。これはドライブ内外で発生する振動の抑制と、ディスクドライブ搭載機では重要なポイントとなるドライブ自体の静音性の向上に寄与しているそうだ。ディスクトレイは高剛性で安定性の高いアルミダイキャスト製だ

オーディオ基板を取り出した状態。D/A変換部から出力部までL/R独立のフルバランス設計を採っている。DACチップはESSテクノロジー社製ES9026PROをチャンネルごとに合計2基搭載し、それぞれ8chパラレル駆動させることで、より高い精度でD/A変換させるという。バランス出力の際にはアンバランス出力をオフにでき、より高S/N、高セパレーションを追求できる

 今回はデノンのプリメインアンプ「PMA-SX」とバランス接続をし、SACDとCDを聴いたが、そのサウンドは質感が緻密で、しなやか。響きの粒子まで感じさせるような繊細な感触はパイオニアの高級プレーヤーの伝統とも言えるが、とにかく微小信号の再現 性に長けて、響きが芳醇。録音現場の気配、空気感までも感じさせるほどの生々しさだ。

このような言い方をすると、線の細い、弱々しい音をイメージする方もいらっしゃると思うが、そんな心配はいらない。大振幅の信号は躊躇なく一気に吹き上がり、ストレスなく空間に放出される。特にLOCK RANGE ADJUSTを調整していくと、微小信号の解像、空間の静けさが際立ち、目の前の音場のフォーカスがグッと引き締まる感じだ。

 ヒラリー・ハーンのヴァイオリンは、緻密な質感を保ちながら、軽やかに、しなやかに躍動する。刺激的なところはいっさいなく、輪郭を立たせるタイプではないが、弦の響きにしっかりとエネルギーが乗り、瞬発力を感じさせる。豊かな響きが広い空間を 浮遊し、溶け込み、消えていく様子は感動的ですらあった。

【この製品で聴いた曲】「メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲ホ短調」ヒラリー・ハーン(vn) ヒュー・ウルフ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団、SACD 同名アルバムより