季刊誌『Stereo Sound』は、昭和41年の創刊以来、「素晴らしい音楽を理想の音で奏でたい」「演奏家の魂が聴こえるオーディオ製品を世に広く知らせたい」という思いのもと、聴くことの喜びを伝えるべく、オーディオ機器やソフトの情報をお届けしている。

 毎号、数多くの新製品を取り上げており、6月4日発売の『Stereo Sound』最新刊、207号では32ブランド45機種のレビューを紹介している。これら製品の試聴がどのように行なわれているのか、取材に密着できたのでレポートしよう。

 協力してくれたのは、『Stereo Sound』誌はもとより、月刊『HiVi』誌でもおなじみの高津修さん。試聴は製品に真っ向から向き合う真剣勝負の場。本来は音への影響を考慮して、関係者以外は立ち入り厳禁だが、Stereo Sound編集部、高津さんとも「読者のために」と快諾してくれた。実は、同じ社内にいてもStereo Sound編集部の取材に、他の編集部員が立ち会う機会はほとんどない。それだけに、我々にとっても貴重な体験となった。

機器のポテンシャルを引き出す姿勢が貫かれている

 新製品に限らず、Stereo Sound編集部の試聴取材は、「機器の持つポテンシャルをしっかりと引き出すこと」が徹底されている。当たり前だと思われるかも知れないが、この姿勢を忘れず、50年間にわたって貫いてきたからこそ、現在の『Stereo Sound』誌があると言っても過言ではない。その姿勢を垣間見られるのが、取材前日に事前準備をしているとき。作業している近くを通るだけで、緊張感が伝わってくるのだ。

 Stereo Sound編集部では、取材の前日までに試聴機をすべて箱から取り出し、外観にトラブルがないか入念に確かめる。その上で、1機種ずつ音を出して動作確認をするとともに、機器の使い方を予習する。ここで問題がなければ、電源をオンにした状態で一晩通電させ、再生機器をベストな状態にするいわゆる「ヒートアップ」を行なう。すべての試聴取材は、この工程を含んだ日程で組まれている。

1機種ごとにベストな環境を作り上げる

 話を試聴取材に戻そう。緊張しながら試聴室に入ると、そこには編集部が用意した資料をじっくりと目を通している高津さんの姿が。このとき取材していた製品は、スイス・ピエガのスピーカーシステム「Premium 701」、「Premium 501」、「Premium 301」の3モデル。いずれも中堅を担う人気モデルPremiumシリーズの後継機だ。

 資料を読み終え、製品の特徴を把握したところで、ブックシェルフ型のPremium 301から試聴スタート。1音1音確かめながら、真剣にメモを取っていく。

リラックスした様子で資料に目を通す高津さん

試聴の様子。楽曲が再生されるやいなや、空気が張り詰める

 試聴が一巡したところで、おもむろに立ち上がりPremium 301のもとへ。筐体そのもののチェックに移る。ドライバーや外観の構造といった音に関することはもちろん、細部の作り込みや造形の美しさやといったモノとしての魅力も見逃すまいと、ていねいに確かめていた。

 ひとしきりチェックを終えると、高津さんから編集部員に合図が送られる。編集部員は、素早くトールボーイ型のPremium 501に入れ替える。試聴室の前方、スピーカーを置く辺りに目印が付けられており、ここにスピーカーを設置した後、実際に音を出して聴感で最終的に位置や向きを微調整していく。これが、簡単なようで難しく、編集部員の経験が最大限発揮される瞬間だろう。

ドライバーや前面の構造を直に触って確認

もちろん、背面のチェックも抜かりはない。中央の壁付け用ブラケットのネジまで確かめていた

エンクロージャーの底面部にまで、チェックは及ぶ

 見学したタイミングでは、スピーカーのみを入れ替える形だったが、Stereo Sound編集部員に話を聞くと、アンプや再生機器も含めて、都度セッティングをし直しているのだそうだ。つまり、流れ作業などは一切なく、製品ごとにベストな状態を作り上げているというのだ。

 6月4日発売の『Stereo Sound』最新刊で取り上げている新製品は前述の通り32ブランド45機種。つまり、45回の事前準備、セッティングが行なわれていたということになる。いったいどんな機種のテストが行なわれたのか、特別に本誌が発売になる前にその一覧を紹介しよう。ぜひ、レビューを読んで、奏でるサウンドを思い描いていただきたい。

カメラ目線のリクエストにも快く応じてくれた気さくな高津さん。一緒に映るモデルは、最後に聴いたトールボーイ型のPremium 701

撮影が済んだら、早速製品チェックに移っていた

【評価した新製品一覧】

■SPECIAL PRODUCTS REVIEW
テクニクス「SL1000R」「SP10R」
テクダス「Air Force V」「Air Force III Premium」「Air Force Two Premium」

■リン・プロダクツの躍進
リン「UrikaII」「Lingo/4」
リン「Akurate DS」「Akurate DSM/3」

■夏の新着モデル徹底試聴 Exciting Components
ソナス・ファベール「AidaII」
ナグラ「HD Preamp」
エソテリック「K01Xs」「K03Xs」

■New Components Review 2018 SUMMER
●スピーカーシステム
B&W「704 S2」
フォーカル「Kanta No2」
ピエガ「Premium 701」「Premium 501」「Premium 301」
クアドラル「Aurum Titan 9」「Aurum Vulkan 9」
レベル「F228Be」「M126Be」

●SACD/CDプレーヤー
マッキントッシュ「MCD350」

●CDプレーヤー
ロクサン「K3 CD Player」

●CD+デジタルファイルプレーヤー
カクテルオーディオ「X45」

●デジタルファイルトランスポート
エソテリック「N03T」

●D/Aコンバーター
コード「Qutest」
マッキントッシュ「D1100」

●プリアンプ
パス「XP12」

●パワーアンプ
パス「X600.8」
ロクサン「K3 Power Amplifier」

●プリメインアンプ
オーディア・フライト「FL Three S」
エアー「EX8」
ロクサン「K3 Integrated Amplifier」

●ADプレーヤー
アコースティック・ソリッド「Solid Edition」
オラクル「Origine mk2」

●フォノカートリッジ
EMT「JSD VM」
プラタナス「Platanus 3.5S」

●スーパートゥイーター
GEM「TS208 ExcellentII」
ミューオン「TS001 ExcellentII」「TS002 ExcellentII」

●フォノイコライザー
ミュージカル フィデリティー「Nu-Vista Vinyl」

●マスタークロックジェネレーター
ソム「sCLK-OCX10」

●ヘッドフォン
スタックス「SR009S」

●FMチューナー
アキュフェーズ「T1200」