映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第8回をお送りします。今回取り上げるのは、男泣きの名作『オンリー・ザ・ブレイブ』。久保田さんをうならせたオールドファッションテイストも魅力という。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『オンリー・ザ・ブレイブ』
6月22日(金)より、全国ロードショー

 ニュースで伝えられることも多い、アメリカの大規模な森林火災。セスナ機で上空から消火剤をウワーッとまいてというイメージだけれど、地上ではこんなことをしていたのか。

 スコップやチェーンソーを手にした20人ほどの男たちが、炎に先回りして懸命に防火帯を掘り、ときにはそこを燃やして火の進路を絶つ。隊長は『インヒアレント・ヴァイス』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のジョシュ・ブローリン。おちこぼれの新米隊員に『セッション』のマイルズ・テラー。市の消防署長に『クレイジー・ハート』のジェフ・ブリッジス。そして紅一点に、変わらぬ気品のジェニファー・コネリー。役者は揃った! “ホットショット”と呼ばれる森林消防隊の奮闘を描く田舎アクション映画。

 タイトルの「ONLY THE BRAVE」とは勇者のみの意味。地位はない。カネもない。しかし心意気だけは負けない寄せ集め部隊。近年有数の男泣きの名篇で、ジャンルはちがうけれど、その昔リチャード・バートン&リチャード・ハリスの傭兵映画『ワイルド・ギース』(1978年)や、ポール・ニューマン&リチャード・ジャッケルの『オレゴン大森林/わが緑の大地』(1971年)などに心酔したおじさんは感動必至。もち香港映画『エグザイル 絆』(2006年)に拍手した平成生まれの世代もOKだ。男という生き物の気骨と連帯を描くこういうオールドファッションの映画、貴重だよなあ。

 録音はスカイウォーカー・サウンド、ドルビーアトモス音声、VFXはILMと、スペックは上級。炎がものすごいスピードで追いかけてくる場面など、スペクタクル・ドラマとしても見応えがある。『トロン:レガシー』や、トム・クルーズ主演のぼっちSF『オブリビオン』のジョセフ・コシンスキー監督の新作。こんな地味&滋味なドラマも撮れるんですね!

【Infomation】
『オンリー・ザ・ブレイブ』
6月22日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
監督:ジョセフ・コシンスキー
原題:ONLY THE BRAVE
配給:ギャガ
2017年/アメリカ/2時間14分/シネマスコープ
オフィシャルサイト http://gaga.ne.jp/otb/
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【コレミヨ映画館】
vol.7『ワンダー 君は太陽』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/06/11/68305.html

【映画評論家 久保田明の連載】
映画の交差点 http://www.stereosound.co.jp/column/eiga_no_kousaten/