ドイツの名門オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の新作『アジア・ツアー2017~ライブ・フロム・サントリーホール』が、SACD/CD5枚+ライブBD1枚をワンパッケージにした仕様で5月20日にリリースされる。

 ベルリン・フィルは、2014年から自らの音楽レーベル、ベルリン・フィル・レコーディングスを立ち上げて以来、さまざまな音源を積極的にリリースしているが、本作はその最新作に当たる。

 この録音は、昨年秋に行なわれた同楽団のアジア・ツアーの最後を飾る東京・溜池にあるサントリーホールで2日間(11月24・25日)の演奏会のライブ録音を中心に構成されたもの。サントリーホールが、ベルリン・フィルの本拠地であるフィルハーモニーと同じウィンヤード型のホール設計となったのは、伝説的指揮者・ヘルベルト・フォン・カラヤンが当時のサントリー社長、佐治敬三に薦めたという逸話でも知られている、日本有数の名コンサートホールである。

 このツアーは、2002年からベルリン・フィルの音楽監督を務めているサー・サイモン・ラトルによる、同楽団との最後のアジア・ツアー/来日公演であり、彼らにとってもメモリアルな演奏会となったそうだ。

『ベルリン・フィル / アジア・ツアー 2017 ~ ライブ・フロム・サントリーホール』、2SACD/CDハイブリッド+1BDに、美しい写真がたくさん収められた豪華な仕様だ

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ベルリン・フィル / アジア・ツアー 2017 ~ ライブ・フロム・サントリーホール
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・サイモン・ラトル(指揮)
ユジャ・ワン(ピアノ)、チョ・ソンジン (ピアノ)
キングインターナショナルKKC-9327/32(輸入盤・国内仕様) ¥11,000+税
●5SACD/CDハイブリッド+1ブルーレイ
●BD仕様:フルHD1080/60インターレース、16:9映像、リニアPCM2.0ch、DTS-HDMA5.0ch
●付属:日本語解説、ハイレゾ音声(96kHz/24ビット)ダウンロードクーポン、デジタル・コンサートホール7日チケット
●備考:日本版のみ初回特典:特製フォトブック

●収録曲
Disc1
R・シュトラウス「ドン・ファン」
バルトーク「ピアノ協奏曲第2番」(ピアノ独奏:ユジャ・ワン)
ラフマニノフ「ヴォカリーズ」(ピアノ独奏:ユジャ・ワン)
Disc2
ブラームス「交響曲第2番ホ短調」
ドヴォルザーク「スラブ舞曲ホ短調op.72 No.2」
以上、2017年11月24日(東京・サントリーホール)
Disc3
ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」<1947年改訂版>
チン・ウンスク「コロス・コルドン」<ベルリン・フィル委嘱作品>
Disc4
ラフマニノフ「交響曲第3番イ短調」
プッチーニ「歌劇《マノン・レスコー》第3幕より 間奏曲」
以上、2017年11月25日(東京・サントリーホール)
Disc5
ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」(ピアノ独奏:チョ・ソンジン)
ドビュッシー「映像第1集より《水に映る影》」(ピアノ独奏:チョ・ソンジン)
以上、2017年11月4日(ベルリン・フィルハーモニー)

 さらにブルーレイディスクには、香港、武漢、ソウルでの同一プログラムでの演奏会をハイビジョン映像と2chステレオ、DTS-HDMA5.0ch音声による全曲映像を収録。加えて、ドキュメンタリー『ツアー日記、アジアでのベルリン・フィル(日本語字幕付き)』をボーナス映像として収めている。
 また、全曲のハイレゾ音源(最大96kHz/24ビット)のダウンロード・コードクーポンも付属している。

 そのリリースを記念して、ベルリン・フィル・レコーディングスを主催するベルリン・フィル・メディア代表のオラフ・マニンガー氏と同取締役のローベルト・ツィンマーマン氏が来日、本作の収録場所となったサントリーホールの小ホールで記者会見を行なった。

ベルリン・フィル・レコーディングスを主催するベルリン・フィル・メディアから代表でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席チェロ奏者でもあるオラフ・マニンガー氏と、取締役のローベルト・ツィンマーマン氏が来日、作品への想い、そして、ベルリン・フィルとサントリーホールとの強い結びつき、そして日本のオーディエンスに対する深い愛情を語った

記者会見には、ベルリン・フィルの技術パートナーであるパナソニック製の有機ELテレビ(TH-77EZ1000)とテクニクス製オーディオシステムが用意され、作品のトレーラーやサントリーホールと同楽団との結びつきをまとめたビデオなどが披露された

 彼らから、本作の制作経緯などが紹介されたが、記者が特に印象的であったのは、長らく常任指揮者を務めたラトルとの最後のアジア・ツアーの演奏会を、彼らが第二の故郷と呼ぶほどの素晴らしい音響を誇るサントリーホールできちんとしたカタチで収めたかったと言及したことである。記憶に残るだけでなく、記録としても残そうと意図したわけだ。

 そのため、本国から彼らお抱えの専属トーンマイスターをわざわざ日本に派遣して万全の録音準備を行なったそう。もちろん、仮に演奏上の大きな瑕があればリリースしないのは当然として、もしもオケ、あるいはラトルにとって「普通の出来栄えの演奏会」ならばお蔵入りすることすら視野にいれたプロジェクトであったことも明かされた。レコード会社の都合ではなく、オーケストラが自ら音楽レーベルを運営し、経済的な意味においても自主性が高いことがその背景にあるのだろう。

 ベルリン・フィルの演奏レパートリーを、古典的で保守的な楽曲にとどまらず、現代音楽を含めたアグレッシブなものへと変化させたラトルの成果を、日本での演奏会というカタチで最良のパッケージ作品としてリリースするのは、楽団にとっても大いに意義深いことに違いない。

 世界最高峰のオーケストラによる、日本での特別な演奏会をハイクォリティにこだわって収録した本作。個人的には、いまもっと優れたピアニストの一人だと考えているユジャ・ワンの演奏にも注目したい。5月20日のリリースが本当に楽しみだ。

ベルリン・フィルが「第二の故郷」と呼んでいるサントリーホール。1986年10月の開館以来膨大な数の名演奏が繰り広げられてきた。ベルリン・フィルも数々の演奏会を行なってきたが、2017年秋のアジア・ツアーの最終公演(11月24、25日)を収めたのが本作である (c) Monika Rittershaus

2002年シーズンからベルリン・フィルの首席指揮者兼芸術監督を務めているサー・サイモン・ラトル。首席指揮者としてタクトを振る、フィルハーモニーでの最後の定期演奏会が本年6月に予定されている (c) Monika Rittershaus

日本公演の様子。指揮者のラトル、ソリストのユジャ・ワンと並んでコンサートマスターの樫本大進の姿も見える (c) Monika Rittershaus

 なお、同レーベルからは、クラウディオ・アバドがベルリン・フィルと行なった最後のコンサートを収めた『クラウディオ・アバド~ザ・ラスト・コンサート』(すでに2CD+1BDでリリース済)のSACD2枚組とLP3枚組が4月20日にリリースされることも決まっている。こちらにもぜひ注目いただきたい。

すでに2CD+1BD仕様ではリリースされていた、『クラウディオ・アバド~ザ・ラスト・コンサート』のSACD版が4月20日にリリース。アナログLPは6月中旬発売予定だ

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クラウディオ・アバド~ザ・ラスト・コンサート
●SACD(KKC-5861)※2SACD(2ch/マルチ)/CDハイブリッド
●LP(KKC-112/4)※3LP(180g重量盤仕様)、ハイレゾ(48kHz/24ビット)音声ダウンロードクーポン、デジタル・コンサートホール7日チケット付き
※SACDは4月20日発売、LPは6月中旬発売予定