ポータブル・ラインアレイというPAスピーカーの新しいカテゴリーを開拓した画期的な製品、「Bose」の「L1」シリーズ。“気軽に持ち運び、簡単にセットアップできるラインアレイ”を具現化した「L1」シリーズは、2003年(国内は2008年)の発売以来、世界中で大ヒットを記録し、今やポータブルPAスピーカー市場を牽引するヒット商品となっている。おそらくは読者の中にも、現場で使用したことがある、あるいはすでに所有しているという人は多いのではないだろうか。昨年10月、そんな「L1」シリーズの次世代モデルとなる「L1 Pro」シリーズが発表された。3つのラインアレイと2つのサブ・ウーファーがラインナップされる「L1 Pro」シリーズは、“持ち運べるラインアレイ”という基本コンセプトはそのままに、音質、カバレージ性能、機能をさらに高めた新世代のポータブル・ラインアレイである。早くも大きな話題になっている「L1 Pro」シリーズについて、ここではその概要をお伝えすることにしよう。

ポータブルPAを変革したBose L1

 2003年(国内では2008年)に発売された「Bose」の「L1」シリーズは、ポータブルPAを変革した製品と言っていいだろう。ラインアレイという技術自体、まだそれほど浸透していなかった時代に、「L1」シリーズは“持ち運べるラインアレイ”という斬新なアイディアを提げて登場した。コンパクトで容易に設置できるシステムでありながら、ポイントソースのスピーカーとは比較にならない到達性能、均一で広大なカバレージを実現した「L1」シリーズは、世界中で瞬く間に大ヒットを記録。現在、多くのメーカーから似たような製品が発売されているが、「L1」シリーズこそ、ポータブル・ラインアレイのオリジネーターと言えよう。

 「Bose」によれば、「L1」シリーズの開発は1990年代の終わりにスタートしたという。Dr. Bose(Amar Gopal Bose/アマー・G.ボーズ博士)の愛弟子である技術者、ケン・ジェイコブ(Ken Jacob)は、ステージ上に観客に向けたメイン・スピーカーと演奏者用のモニター・スピーカー、そして楽器用スピーカーが混在するライブPAシステムに疑問を持ち、“小規模なPAシステムであれば、もっと違うアプローチができるのではないか”と考え、独自に研究開発をスタート。長いリサーチ期間を経て完成させたのが、小型のユニットを積み上げたポータブル・ラインアレイ、「L1」シリーズなのだ。

 「L1」シリーズのアドバンテージは、音の到達性能やカバレージ性能が優れていることだけではない。演奏者ごとに1台ずつ設置して、自身の楽器やマイクを直接入力すれば、モニター・スピーカー/楽器用スピーカーとしての役割も果たすため、ステージ上の音をスッキリとさせるのと同時に、不要な反射音を抑制することができるのだ。また、ステージ上で演奏者が聴く音と客席で観客が聴く音の乖離も無くなり、観客には演奏者の位置から音が鳴る“視覚と聴覚の一致”をもたらす。持ち運びや設置も容易で、まさしくポータブルPAシステムの理想形と言っていいだろう。

 

3つのラインアレイタイプと2つのサブ・ウーファーがラインナップ

 そして「L1」シリーズの後継製品となるのが、昨秋発表された「L1 Pro」シリーズだ。「L1 Pro」シリーズは、“持ち運べるラインアレイ”という基本コンセプトはそのままに、音質、カバレージ性能、機能がさらに向上した新世代のポータブル・ラインアレイ。特に注目なのが新開発のサブ・ウーファーで、“レーストラック型”と呼ばれるドライバーの採用により、スリムな筐体ながらパワフルな低音を実現している。

 「L1 Pro」シリーズには、最もポータブルな「L1 Pro8」、少々大きなライブ会場/中規模の施設にも対応する「L1 Pro16」、シリーズ中最高の性能を有する「L1 Pro32」という3種類のモデルがラインナップされる。また、パワード・サブ・ウーファーとして、小型で持ち運びしやすい「Sub1」、より重低音と大音量を提供する「Sub2」も用意されている。「L1 Pro8」と「L1 Pro16」はパワースタンド部分にベースモジュールを内蔵しているが、「L1 Pro32」は「Sub1」あるいは「Sub2」を組み合わせて(共に購入して)使用する形になる。「L1 Pro8」は、「L1 Compact」の後継となる製品であり、「Bose」によれば100名前後のスペースに対応するとのこと。「L1 Pro16」は200名前後のスペース、「L1 Pro32」は300名前後のスペースに対応し、それ以上広い会場では「F1」が適しているとのことだ。

画像1: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

新世代ポータブル・ラインアレイ、「L1 Pro」シリーズ。左から、最もコンパクトな「L1 Pro8」、中規模のスペースにも対応する「L1 Pro16」、シリーズ中最高のパフォーマンスを誇る「L1 Pro32」、サブ・ウーファーの「Sub2」と「Sub1」。「L1 Pro8」にはパワースタンド部分に「Sub1」と同口径のウーファーが、「L1 Pro16」には「Sub2」と同口径のウーファーが組み込まれており、サブ・ウーファーがオプションの「L1 Pro32」は、「Sub1」あるいは「Sub2」を組み合わせて使用する

 

 

▶L1 Pro8

 シリーズ中、最も小型でポータブルなモデルが「L1 Pro8」だ。2インチのアーティキュレーテッド・ネオジウム・ドライバーを8基搭載し、湾曲したC字型に配列されている。水平方向のカバレージはワイドな180°、垂直方向のカバレージは40°(±20°)で、小規模なライブ・スペースや商業施設に最適なモデルと言えるだろう。「L1 Compact」よりもドライバーの数が2基増え、最大音圧は6dBアップ、ローエンドも45Hzまで再生する。パフォーマンスが大幅に向上しているのにも関わらず、販売価格が変わらないというのもポイントだ。

 サブ・ウーファーは、パワースタンド(土台)に内蔵されている。先述のとおり、このサブ・ウーファーは「L1 Pro」シリーズの大きなフィーチャーであり、7インチ×13インチの『ハイ・エクスカーション・レーストラック型ドライバー』を搭載しているのが特徴だ。スリムな楕円形状のレーストラック型ドライバーは、パワースタンドに組み込まれた際にも横幅を取らない(土台がスリムになっている)のが大きなポイント(カー・レースのサーキットのような形状のため、“レーストラック型”と言われる)。もちろん、性能も申し分なく、従来の12インチ・円形ドライバーに匹敵する再生能力を実現している。主にBoseの民生機のサウンド・バーなどで採用されていたレーストラック型ドライバーだが、業務用機器での採用は今回の「L1 Pro」シリーズが初めてとのこと。パワー・アンプは中高域用に60W、サブ・ウーファー用に240Wとなっている。

 可搬性の良さとセッティングの容易さも「L1 Pro」シリーズの大きな特徴だ。筐体は複数のモジュールにバラすことができるので、分解すれば問題なく一人で可搬できる(トータルの重量は18kg)。「L1 Pro8」は、ネオジウム・ドライバーが組み込まれた『ミッド・ハイ・アレイ』と、ミッド・ハイ・アレイの高さを変更するための『エクステンション』、そして『パワースタンド』という3つのモジュールで構成され、ステージの高さに合わせて『エクステンション』を使用せずに『パワースタンド』に直接『ミッド・ハイ・アレイ』を装着することも可能だ。

画像2: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

「L1 Pro8」と「L1 Pro16」は、『ミッド・ハイ・アレイ』、『エクステンション』、『パワースタンド』という3モジュール構成

 

 

▶︎L1 Pro16

 「L1 Pro8」よりも広範なアプリケーションに対応するのが、ワン・サイズ上の「L1 Pro16」だ。「L1 Pro16」は、2インチのアーティキュレーテッド・ネオジウム・ドライバーを16基搭載し、ラインアレイはJ字型を採用。水平方向のカバレージは180°、垂直方向のカバレージは上部はタイトな0°、下部方向には30°(-30°)で、「L1 Pro8」と比べると下部放射がよりワイドになっているのがポイントだ。パワースタンドに内蔵のサブ・ウーファーは、10インチ×18インチの『ハイ・エクスカーション・ネオジウム・レーストラック型ドライバー』を搭載している。Class D回路のパワー・アンプの出力は中高域用に250Wで、サブ・ウーファー用に1000Wとかなりパワフル。筐体は『ミッド・ハイ・アレイ』、『エクステンション』、『パワースタンド』という3モジュール構成で(トータルの重量は24.8kg)、「L1 Pro8」同様、『エクステンション』を使用しないセッティングにも対応している。

「L1 Pro16」の内部。2インチのアーティキュレーテッド・ネオジウム・ドライバーが16基搭載され、サブ・ウーファーは新開発の『ハイ・エクスカーション・レーストラック型ドライバー』を搭載。スリムな楕円形状のレーストラック型ドライバーは、パワースタンドに組み込まれた際にも横幅を取らないのが大きなポイントだ

 

 

▶L1 Pro32

 そして「L1 Pro」シリーズの最上位モデルとなるのが「L1 Pro32」だ。「L1 Pro32」は、2インチのアーティキュレーテッド・ネオジウム・ドライバーを32基、完全に直線型で搭載したポータブル・ラインアレイ。水平方向のカバレージは180°、垂直方向のカバレージは0°で、「Bose」によれば、「L1」シリーズの歴代製品の中でも最も優れた垂直指向特性と最も高い音圧レベルを実現しているという。

 32基のドライバーがストレートに備わっているため、「L1 Pro8/L1 Pro16」のような『エクステンション』が無く、サブ・ウーファーが外付けになっているのも「L1 Pro32」の特徴だ。ユーザーは「Sub1」あるいは「Sub2」を組み合わせて使用し、「Sub1」と組み合わせた際の出力は最大音圧123dB、低域40Hzまで再生、「Sub2」と組み合わせた際には最大音圧128dB、低域37Hzまで再生する。「L1 Pro8/L1 Pro16」同様、3つのモジュールに分割でき、重量は「L1 Pro32」本体が13kg、「Sub1」が16.1kg、「Sub2」が23.4kgとなっている。

 

画像4: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

「L1 Pro」シリーズの優れた遠達性能を表したグラフ。上位機種になるほど、音の距離減衰が抑えられ、近くでもうるさくなく、遠くでもちゃんと聞こえる環境を構築することができる

画像5: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

各モデルの垂直方向のカバレージ。「L1 Pro32」は完全に直線型の放射となる

水平方向のカバレージ性能は、すべてのモデルで180°を実現

 

 

画像7: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

「L1 Pro8」と「L1 Pro16」は、ステージ上に設置する場合などに『エクステンション』を使わないセッティングも可能

 

 

DSP機能と内蔵デジタル・ミキサー

▶インテリジェントなDSP機能

 「Bose」独自のDSP技術により、最低限の操作で素晴らしいサウンドが得られるのも「L1 Pro」シリーズの大きな特徴と言えるだろう。2系統のチャンネル入力にはデジタル・ミキサー「T4S/T8S」に搭載されている使用する楽器に合わせて最適な音質補正を行うインテリジェントなEQ機能、『ToneMatch』が備わっており、入力ソースに最適なEQ設定をボタン一押しで適用できる。「L1 Pro」シリーズ本体に用意されているプリセットは、ハンドヘルド型ダイナミック・マイクに最適な『MIC』と、ピエゾ式ピックアップのアコースティック・ギター用の『INST』の2種類で、専用アプリ「L1 Mix」(後述)を使用すれば、100種類を超える『ToneMatch』プリセットEQをロードすることも可能だ。また、出力段にはサウンド全体に適用されるEQ機能、『システムEQ』を搭載。こちらも『ToneMatch』同様にプリセットを選ぶだけで音を最適化することができ、マイクや楽器を使用するライブ・パフォーマンス用の『LIVE』、録音された音楽を再生するDJイベントなどに適した『MUSIC』、話者が登壇するスピーチ・イベント向けの『SPEECH』という3種類のプリセットが用意されている。もちろん、不要であればオフにすることも可能だ。

「L1 Pro8」の背面。アンプの前段で合計5chのソースをミックスできるデジタル・ミキサー機能や、インテリジェントEQ『ToneMatch』『システムEQ』といった機能も備わっている

 

 

▶デジタル・ミキサーを内蔵

 背面には、2系統のXLR/フォーン端子コンボ入力(マイクロフォン/楽器/ライン入力用)と1系統のBluetoothワイヤレス再生+AUX入力(フォーン/3.5㎜ステレオミニ入力)が備わり、アンプの前段で合計5chのソースをミックスできる仕様になっている。XLR/TRSフォーン(バランス)兼用のコンボ端子が採用されたチャンネル入力は、+48Vのファンタム電源供給にも対応しているため、コンデンサー・マイクを直接繋ぐことも可能。ライン入力もTRSのバランス仕様で、フォーン端子はキーボードなどの電子楽器、ミニ端子は各種プレーヤー類を繋ぐのに便利だろう。また、Bluetoothにも対応しているため、スマートフォンやパソコンから無線で音楽などをストリーミング再生することも可能だ(コーデックは、高音質AAC)。

 チャンネル入力とライン入力にはそれぞれミュート・スイッチが備わり、自照式エンコーダーによってボリューム/トレブルEQ/ベースEQを調整できるほか、Ch1/2にはリバーブを付加することも可能。操作体系はとてもスマートで、1基のエンコーダーノブでボリューム/トレブルEQ/ベースEQ/リバーブを操作する仕様になっている(エンコーダーを押して、操作するパラメーターを順々に切り替える)。

 その他、XLRのライン出力、サブ・ウーファーの「Sub1」あるいは「Sub2」を接続するためのSubMatch出力(「L1 Pro32のみ)、ToneMatchポートを装備。ToneMatchポートはデジタル・ミキサー「T4S/T8S」の接続用で、ケーブル1本で電源と音声を通信することができ、容易に入出力を拡張することが可能だ。

画像9: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

「L1 Pro32」とサブ・ウーファーの接続もケーブル1本だけとシンプル

 

 

▶リモート・コントロールに対応

 「L1 Pro」シリーズには、「L1 Mix」というアプリ(iOS/Android対応)が用意されており、スマートフォンやタブレットをBluetooth LE接続することで、内蔵デジタル・ミキサーをリモート・コントロールすることが可能だ。「L1 Mix」では背面の操作を離れた場所から行うことができ、「L1 Mix」を操作すれば、本体側の自照式エンコーダーのLEDもリアルタイムに変化。豊富に用意されているEQライブラリー『ToneMatch』プリセットEQのロードにも対応するため、さらにサウンドを追い込むことができる。10種のシーンメモリも可能だ。「L1 Mix」は、Apple App Store/Google Playから無料でダウンロードすることが可能だ。

画像10: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

スマートデバイス用アプリ「L1 Mix」(iOS/Android対応)を使用することで、リモート・コントロールにも対応

 

 

 優れた音質と、かつてないカバレージ性能を両立した“持ち運べるラインアレイ”、「L1 Pro」シリーズ。ポータブルPAシステムの導入を検討している方は、ぜひチェックしていただきたい新製品だ。

取材協力:ボーズ合同会社

 

ライブ・ステージに設置した「L1 Pro32」と「Sub2」

画像12: “持ち運べるラインアレイ” Bose L1に待望の新世代モデルが登場《Bose Professional L1 Pro Portable Line Array System》【PROSOUND 特別企画】

専用のケースも用意され、可搬性に優れているのは「L1 Pro」シリーズの大きな特徴

 

 

Bose製品に関する問い合わせ
ボーズ合同会社  Tel:03-5114-2750  Pro.bose.com

This article is a sponsored article by
''.