従来、ライブやイベントなどの現場では、音響は音響専門の会社、映像は映像専門の会社が仕事を請け負うのが常だったが、最近では音響専門の会社(あるいは音響担当の個人の技術者)が映像を手がけるケースも珍しくなくなっている。きっと読者の中にも、「映像機器のオペレートも一緒にお願いできないだろうか」と頼まれたことがある人もいるのではないだろうか。映像と言うと構えてしまう人が多いかもしれないが、音響のオペレートができる人であれば映像のオペレートはさほど難しくないと言われ(その逆は難しい)、音響と映像の両方を扱うことができる“AVミキサー”と呼ばれる便利な機材も普及し始めている。これからの時代、音響技術者といえども最低限の映像に関する知識を持っていた方が、間違いなくプラスになると言っていいだろう。本連載『音響技術者のための映像入門』では、映像オペレートに必要な基礎知識を分かりやすく解説する。第5回目となる今回は、ライブ・ハウスにおけるライブ配信の実例について紹介することにしよう。取材した吉祥寺SHUFFLEは、新型コロナウイルスの感染拡大による行政からの休業要請を受け、急遽無観客でのライブ配信を始めたライブ・ハウス。手探りでスタートしたライブ配信だったが、見事収益化に成功し、今では連日配信を行なっているという。ライブ配信に興味を持っているライブ・ハウス関係者は、ぜひ参考にしていただきたい。

はじめに

 若者たちに人気の街、東京・吉祥寺。昔からライブ・ハウスが多いこの街で、幅広いジャンルのアーティストから支持を集めているのが吉祥寺SHUFFLEだ。今年で開店13年目を迎えた吉祥寺SHUFFLEは、PAや音響機材のレンタル業務を行う株式会社G-SOUNDが運営するライブ・ハウス。キャパは約160名で、吉祥寺駅から徒歩2分という絶好のロケーションがウリだ。

画像: 今年で開店13年目となる東京・吉祥寺のライブ・ハウス、吉祥SHUFFLE

今年で開店13年目となる東京・吉祥寺のライブ・ハウス、吉祥SHUFFLE

 開店以来、店の経営は順風満帆で、例年どおり学生の卒業ライブが多く予定されていた3月。吉祥寺SHUFFLEを突如襲ったのが、新型コロナウイルスの問題である。同店の店長であり、株式会社G-SOUNDの代表取締役/CEOである中嶋優氏は、「正直、“終わった”と思いましたね」とそのときの状況を振り返る。

「キャンセルが日に日に増えてきて、毎年3月は学生さんのレンタルが多いんですが、20日間くらい埋まっていた卒業ライブはすべてとんでしまって。徐々に世の中は“ライブ・ハウスなんて行くな”という風潮になり、4月7日に緊急事態宣言が発令されて、その月に予定していたライブはフルでキャンセルになってしまいました。店を休んでもこちらにはスタッフがいますし、家賃などの固定費はかかりますから、これは本当にヤバいなと」(中嶋氏)

 行政からの要請に従って休業し、途方に暮れるライブ・ハウスがほとんどの中、中嶋氏はこの状況を乗り切る策として、インターネットを使ったライブ配信を行うことを決断。すぐに通販を利用して、配信に必要な機材を買い揃えたという。

「最近は会社で受けているPAの仕事で、ライブ配信が絡むイベントが増えていたので、配信自体には前々から興味はあったんです。これからはライブ・ハウスも、お客さんを入れてライブをやるだけでなく、配信もできるようにしないといけないのかなと。そんなときにこの状況になって、よく出演してくださっているアーティストさんから、“ライブ配信はやらないの?”と訊かれたんですよね。“前から考えてはいるんですけど、やっぱりやった方がいいですかね?”と答えたら、“試しにやってみようよ”と言われて。落ち込んでいても仕方ないですし、お手頃な機材を一生懸命調べて揃えて、とりあえず始めてみることにしたんです」(中嶋氏)

 吉祥寺SHUFFLEが用意した機材は、ローランドのAVミキサー VR-3EXと、ズームのQ4nとQ2n-4Kが2台ずつ。Q4nとQ2n-4Kは小型のビデオ・レコーダーだが、HDMI接続することでビデオ・カメラとしても使える機材だ。

「ライブの撮影用にQ2n-4Kは1台すでに持っていたので、もう1台とQ4nを2台、計3台を買い足しました。AVミキサーに関しては、配信の現場でローランドの機材が使われているのをよく見ていたので、価格が手頃なVR-3EXを導入してみようと。配信ソフトは、定番のOBS Studioですね。本当にまったく知識が無かったのですが、インターネットでいろいろ調べて揃えました。ラッキーだったのが、アルバイトのスタッフの中に、趣味でライブ配信をやっている子がいたんです(配信担当の七井翔氏)。OBS Studioのことも知っていたので、その子を急遽配信担当に任命して(笑)、手探りで始めてみました。

 一番最初、配信をやろうと声をかけてくれたアーティストさんのライブを試験的に『ツイキャス』(註:TwitCasting/モイ株式会社が運営する人気のライブ配信サービス)でやってみたんですが、全然うまくいきませんでしたね。OBS Studioの設定もダメダメで、とにかく画質が良くない。臨場感を出そうと1台のカメラを手持ちにしてみたものの、手ブレ補正が無いので、視聴者からは“画面酔いするからやめてくれ”というコメントが付いたり(笑)。さんざんな内容でした」(中嶋氏)

 1回目の配信が終わった後、スタッフ全員で問題点を洗い出し、2回目以降は標準レベルの配信ができるようになったと語る中嶋氏。また、さらなる高画質化を目指し、すぐに機材をアップグレードしたという。

「こういうのって、やり始めると欲が出てくるんですよね。VR-3EXはSD画質だったので、こういう機材に詳しい知り合いのエンジニアに相談し、HD画質での配信に対応したVR-4HDにアップグレードしました。値段は張ったんですが、映像がきれいになるんだったら買うしかないだろうと(笑)。それとカメラも知り合いから一眼レフを2台借りて。VR-4HDに繋いでみたらめちゃくちゃきれいで驚きましたね」(中嶋氏)

 こうしてライブ配信を始めたが吉祥寺SHUFFLEだが、現在まで大きなトラブルが発生することなく、ほぼ毎日配信を行なっているとのこと。この後は一体どのようなシステムで配信を行い、どのように収益を上げているのか、より具体的な話を訊いていくことにする。

 

画像1: 音響技術者のための映像入門<第5回:ライブ配信事例(Case1:吉祥寺SHUFFLE)>【PROSOUND SEMINAR】

株式会社G-SOUND代表取締役、中嶋優氏

画像2: 音響技術者のための映像入門<第5回:ライブ配信事例(Case1:吉祥寺SHUFFLE)>【PROSOUND SEMINAR】

音響/照明担当の細渕純平氏

画像3: 音響技術者のための映像入門<第5回:ライブ配信事例(Case1:吉祥寺SHUFFLE)>【PROSOUND SEMINAR】

ホール・スタッフ/配信担当の七井翔氏

画像4: 音響技術者のための映像入門<第5回:ライブ配信事例(Case1:吉祥寺SHUFFLE)>【PROSOUND SEMINAR】

照明担当の髙梨瑞稀氏

画像5: 音響技術者のための映像入門<第5回:ライブ配信事例(Case1:吉祥寺SHUFFLE)>【PROSOUND SEMINAR】

デスク/カメラ担当の樋口真里奈氏

 

ライブ・ハウスにおける配信の実際

● 吉祥寺SHUFFLEのライブ配信システム

 吉祥寺SHUFFLEが現在ライブ配信に使用している機材は、AVミキサーがローランドのVR-4HD、配信ソフトはOBS Studio、カメラはパナソニック Lumix DC-GH5が1台、同じくパナソニック Lumix DMC-GH4が3台(一眼レフ)、キヤノン EOS6Dが1台(一眼レフ)、ズーム Q4nが2台、同Q2n-4Kが2台という構成。このうち4台の一眼レフをVR-4HDにHDMIで接続し、パソコンのUSB端子にもう1台のカメラを接続した5カメ配信が基本システムとのこと。音に関しては、PA卓のアナログ・オーディオ出力と客席の両サイドに立てたアンビエンス用マイク、合計4chの音声をVR-4HDに入力してミックスしているという。PA卓のレベルの高いアナログ・オーディオ出力をそのまま入力できるのも、最大入力レベル+22dBuという業務用音声卓に匹敵するスペックのVR-4HDだからこそだろう。

画像: ステージ周辺にカメラがセッティングされた様子

ステージ周辺にカメラがセッティングされた様子

画像: 電動スライダーに取り付けられたパナソニック Lumix DMC-GH4

電動スライダーに取り付けられたパナソニック Lumix DMC-GH4

画像: ドラマー用カメラはパソコンへのUSB接続でカバー

ドラマー用カメラはパソコンへのUSB接続でカバー

 

「メインのカメラはGH5で、3台あるGH4を電動スライダーと両サイドに設置しています。また、Q2n-4Kをドラム専用カメラとして設置し、WebカメラとしてパソコンにUSB接続するパターンが多いですね。VR-4HDにHDMI接続できるカメラは4台までですが、パソコンのWebカメラを併用することで5カメ配信を行なっているわけです。こういう状況ですので、現場にいる人間の数はできるだけ減らさなければならないのですが、このシステムですと、PA担当と照明担当と配信担当、スタッフ3人でライブ配信を行うことができるんです」(中嶋氏)

 

吉祥寺SHUFFLEのライブ配信の回線図

 

● ライブ配信当日の流れ

 ライブ配信当日は、無観客とは言っても通常のライブと同じようにリハーサルを行い、スピーカーからも音を出すとのこと。もちろん照明を使った演出も行われ、基本的には観客がいないこと以外、普段のライブと変わらないという。

「スピーカーの音量は若干下げてはいるんですが、やっていることは通常時とほとんど一緒ですね。初めてライブ配信を行うアーティストには最初に、“できるだけカメラを意識してほしい”ということは伝えています。“カメラの向こうにお客さんがいると思って演奏してください”と。ステージ下にはモニターが用意してあるので、出演者は演奏しながら自分がどう映っているか確認することができますし、視聴者のコメントも見れるようになっています」(中嶋氏)

 また、カメラ担当の樋口真里奈氏は出演者に対して、リハーサル時にパフォーマンスについてのアドバイスを行なっているとのことだ。

「初めてライブ配信に出演される方は、自分がどこまで映るか分からない人がほとんどなので、“ここから外に出てしまうと映らなくなります”ということは伝えています。それと客席にお客さんがいないので、突然ステージから降りてカメラに向かって手を振ったりする人もいるんですけど(笑)、いきなりそういうパフォーマンスをされてもカメラのピントが合わなかったりする。なのでそういうパフォーマンスを考えている場合は、あらかじめおしえてくださいと言っています。照明が当たらない場所もあるので」(樋口氏)

 

● PA卓/照明のオペレーション

 視聴者はスマートフォンやタブレット、パソコンを使って楽しむライブ配信。PA担当の細渕純平氏によれば、そういったデバイスで視聴されることを踏まえて、音作りも少し変えているという。

「ライブ配信の視聴者は、スピーカーではなくヘッドフォンやイヤフォンで音を聴く人が多いんです。なので僕もPA席ではヘッドフォンを使い、ローを少し多めにするなど、ヘッドフォン/イヤフォンを意識した音作りをしています。また、常に気にしているのがレベルで、頭ではピークが振れないように調整し、MCになると全体のレベルがどうしても下がってしまうので、それも細かく調整していますね。それと音と映像の微妙なズレは、VR-4HDではなくPA卓の方で補正しています」(細渕氏)

 また、照明担当の髙梨瑞稀氏は、カメラに直接光が入らないように気をつけているとのこと。

「カメラがステージの下の方に設置してあるので、何も考えずに照明を動かすと、カメラに直接光が入ってしまうんです。また顔にスポットをあてるときも、できるだけ全部が見えるように注意しています。一部分だけ暗かったりすると、全部が見えるようになったときに変な感じになるんですよね」(髙梨氏)

 

● AVミキサーのオペレーション

 ライブ配信の肝となるのが、音と映像をパソコンに送出するAVミキサーのオペレーションだ。一見、難しそうなAVミキサーだが、配信担当の七井翔氏によれば、そのオペレーションはシンプルで、場数を踏めば踏むほどコツが掴めるようになるという。

「僕自身、こういう機材を使うのは初めてで、最初は何をどうしたらいいかさっぱり分からなかったんですが、徐々に自分がやるべきことが分かってきました。僕がAVミキサーでやっているのは、基本的にはカメラのスイッチングと音量調整の2つだけです。ステージ上のパフォーマンスに合わせてカメラを切り替えて、PA卓の音とアンビエンスの音のバランスを調整する。OBS Studioに送る最終的な音量もAVミキサーで調整しています。カメラのスイッチングに関しては、初めて聴く曲がほとんどなので、本当に感覚ですね。リハーサル時に曲をよく聴いて、曲調を事前に掴んでおく。かなり場数を踏んだので、上手く切り替えられるようになったかなと自分では思っています(笑)。それとVR-4HDには、スイッチング・タイムを調整できる機能があるので、バラードだったらゆっくり切り替えたりとか、曲調に合わせてタイムを設定しています。合成処理で使っているのは、2画面に分割する『スプリット』と4画面に分割する『クアッド』くらいで、色調を白黒にしたりセピアにしたりといったことはしていません」(七井氏)

 

画像: 配信担当の七井翔氏

配信担当の七井翔氏

「VR-4HDは機能が豊富なので、映像演出までできたらベストだと思うんですが、なかなかそこまで追いついてないですね。映像の自動スイッチング機能も便利だと思いますが、やはり絶妙なタイミングというのがあるので、基本的には手動で切り替えるようにしています。個人的に気に入っている機能は4画面に分割する『クアッド』で、4人編成のバンドが多いので、視聴者の反応も良いですね。通常のライブではよく見えないドラマーの表情が、4画面ではよく見えますから」(中嶋氏)

 

画像: ライブ配信の中心となる機材、ローランドのAVミキサー VR-4HD。A4サイズというコンパクト筐体に4チャンネルのビデオ・スイッチャー機能と18チャンネル入力のオーディオ・ミキサー機能を統合。1080pのフルHD映像もサポートしている

ライブ配信の中心となる機材、ローランドのAVミキサー VR-4HD。A4サイズというコンパクト筐体に4チャンネルのビデオ・スイッチャー機能と18チャンネル入力のオーディオ・ミキサー機能を統合。1080pのフルHD映像もサポートしている

画像: 配信ソフトウェアのOBS Studio

配信ソフトウェアのOBS Studio

 

● ライブ配信プラットホームと収益化

 AVミキサーを接続したパソコンから実際にライブ配信を行うには、『ニコニコ生放送』や『YouTube Live』といったライブ配信サービスを利用する必要があるが、吉祥寺SHUFFLEでは『ツイキャス』と『YouTube Live』を使い分けているとのこと。基本的には吉祥寺SHUFFLEのアカウントを使用し、場合によってはアーティストのアカウントで配信を行うこともあるという。『ツイキャス』では視聴者にチケットを販売することができるため、それによってしっかり収益化ができているとのことだ。

「ここはキャパは約160名ですが、ライブ配信だったら1,000枚以上チケットを売ることもできるわけです。これは大きなメリットで、チケットは通常のライブとほとんど同じ価格に設定しています。いろいろライブ配信サービスがある中で『ツイキャス』を利用しているのは、チケット販売の手数料がかからないからですね(註:2020年6月30日までの期間限定で、現在は手数料が必要)。それと視聴者はTwitterをやっている人が多いので、それとの相性の良さも大きい。当初『ツイキャス』はライブ向きではないと言われていたんですが、どんどん機能が改善していって、今ではまったく問題はありません。一方の『YouTube Live』は、映像がダントツできれいなので、イベントによってはそちらを利用する場合もあります。しかし『YouTube Live』はチケットを販売することができないので、収益は“投げ銭”によって得る形になります」(中嶋氏)

 また、チケットを販売したコンテンツに関しては、配信後2週間の期間限定でアーカイブ視聴をできるようにしてあるとのこと。中嶋氏によれば、アーカイブ視聴ができるというのもライブ配信の大きなメリットであるという。

「チケットを購入した人は、2週間何度もアーカイブを視聴することができます。また、アーカイブ期間中もチケットを販売しているので、仕事などでリアルタイムに見れなかった人や、後からイベントを知った人もお客さんとして取り込むことができる。これはライブ配信のメリットですね」(中嶋氏)

 

● 今後の課題

 チケット販売や投げ銭によって収益化に成功している吉祥寺SHUFFLEだが、トータルで比較すると通常営業よりも少し売り上げは落ちているとのこと。それはやはりドリンクの売り上げが無いことが大きく、中嶋氏は今後、チケット販売や投げ銭以外の収益化を探っていきたいと語る。

「ライブ・ハウスは、お客さんにドリンクを頼んでもらって、やっと家賃が払える感じなので、現状チケット販売や投げ銭だけではそこまで収益を上げるのは難しい。ドリンク代をいかに稼いでいくかというのが今後の課題ですね。アイドルは、ネット越しで写真を撮れる『ネット・チェキ』やZoomでの一対一のトーク権などを販売したりしていますが、そういうのも大変ですしまだ模索の段階です。収益化以外では、配信のクオリティーをもっともっと上げていきたいですね。お金を払ってでも見たいと思っていただけるクオリティーを提供していかなければいけない。ライブ配信ならではの音や映像というのもあると思うんですが、吉祥寺SHUFFLEはあくまでもライブ・ハウスですから、いかに生の雰囲気を届けるかというのが大きな課題だと思っています。まだまだ“やっぱり生とは違うでしょう”と思っている人が多いと思うんですが、そういう人が驚くくらいのクオリティーにしていきたいですね」(中嶋氏)

画像: 客席後方左側に用意されたライブ配信スペース

客席後方左側に用意されたライブ配信スペース

 

● ライブ配信を検討している人へのアドバイス

 吉祥寺SHUFFLEがライブ配信をスタートして以降、他のライブ・ハウスの関係者から中嶋氏の元に、“どのように配信をしているのか”、“システムをおしえてほしい”という問い合わせがしばしば寄せられるという。いち早くライブ配信を始めた中嶋氏に、これから始める人/検討している人へのアドバイスを訊いた。

「機材に関しては、最近はライブ配信を行う人が増えたこともあり、僕が購入したときと比べると製品レビューがたくさん上がっているので、そういうのをチェックしてよく調べてから購入した方がいいと思います。ビデオ・カメラと言っても本当にたくさんの機種がありますし、それぞれ性能が違いますから、率直な感想を知るにはレビューが一番参考になりますね。各機材を通販で個別に購入しても、自分で簡単にセットアップできると思います。

 これからライブ配信を始めるのであれば、AVミキサーの導入を強くおすすめします。AVミキサーは、音と映像を1台で扱えるというのが大きなメリットで、使い勝手も分かりやすい。映像だけの配信機材とオーディオ・ミキサーを組み合わせてもいいんですが、それだと機材の設置場所も余計に必要になりますし、接続も大変。AVミキサーは、単に音と映像の機能が一体化されているだけでなく、遅延を揃えてくれる機能なども備わっているので、とても扱いやすい。AVミキサーとなると、事実上ローランドのVRシリーズ一択なわけですが、外の現場に行ってもみんなローランドを使っていますし、一番安心できます。

 ライブ配信に興味を持っているライブ・ハウスには、とりあえず始めてみた方がいいと言いたいですね。最初から十分な収益は得られないかもしれませんが、やらなかったらやらなかったでマイナスなわけですから。AVミキサーとカメラ数台、合計数十万円の投資で、きっと新しい可能性が拓けると思いますよ」(中嶋氏)

画像: 店長の中嶋氏は、「VR-4HDのようなAVミキサーがあったからこそ、高品質なライブ配信システムを低コストに構築できた」と語る

店長の中嶋氏は、「VR-4HDのようなAVミキサーがあったからこそ、高品質なライブ配信システムを低コストに構築できた」と語る

 

❸ まとめ

 ライブ・ハウスの危機的状況を、自力でライブ配信を行うことで、上手く乗り切っている吉祥寺SHUFFLE。中嶋氏は今後通常営業ができるようになっても、ライブ配信を積極的に続けていきたいと語る。

「将来的には映像の系統数を増やせたらいいですね。8チャンネルくらいの映像を切り替えることができれば、楽屋の映像やミュージック・ビデオなども流せるようになりますし、新しいフォーマットでの配信もできるようになると思うんです。例えばアイドルのライブだったら、個々のメンバー専用のカメラを用意して、それぞれの“推しチケット”を販売したりとか。“推しチケット”を購入したファンは、好きなメンバーの映像をずっと見ることができるという。ただ現状、我々が手を出せる範囲では、8チャンネルの映像を切り替えられるAVミキサーが無いので、別にビデオ・スイッチャーなどを組み合わせるしかない。しかしそれだとシステムが大がかりになり、設置場所を確保するのも大変なので、ローランドにはぜひ8チャンネルの映像を切り替えられる安価なAVミキサーを作っていただきたいですね(笑)。

 今後、通常営業ができるようになっても、もちろんライブ配信を続けていきたいと考えています。お客さんを入れて営業できるようになったとしても、おそらくステージと客席は数メートル間隔を空けないといけない状況が続くと思うので、配信機材はその間の部分に設置して。これからライブ配信が順調に伸びていって、収益が上がっていったとしても、スタッフの数は増やさずに最低限の体制でやっていきたいですね。人を増やすのではなく、自動スイッチングなどの技術を上手く使って、自分たちなりに配信のクオリティーを上げていけたらと思っています」(中嶋氏)

画像: 写真奥左から、音響/照明担当の細渕純平氏、株式会社G-SOUND代表取締役の中嶋優氏、ホール・スタッフ/配信担当の七井翔氏、写真手前左から、照明担当の髙梨瑞稀氏、デスク/カメラ担当の樋口真里奈氏

写真奥左から、音響/照明担当の細渕純平氏、株式会社G-SOUND代表取締役の中嶋優氏、ホール・スタッフ/配信担当の七井翔氏、写真手前左から、照明担当の髙梨瑞稀氏、デスク/カメラ担当の樋口真里奈氏

写真:鈴木千佳 監修:ローランド株式会社

吉祥寺SHUFFLE
東京都武蔵野市吉祥寺南町2丁目6-10 フジパームビルB1F
Tel: 0422-42-2223  http://k-shuffle.com/

ローランド AV ミキサー VR-4HD に関する問い合わせ:ローランド株式会社
Tel:050-3101-2555(お客様相談センター) https://proav.roland.com/jp/

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