画像1: Auto Sound Web Grand Prix 2020:【特別座談会】シルバーアワード獲得 カロッツェリアTS-Z900PRSスピーカーの魅力を語る

オートサウンドウェブグランプリ2020でシルバーアワードを獲得したカロッツェリアの新型スピーカーTS-Z900PRS。3ウェイながらトゥイーターとミッドレンジを1体構造としたCSTドライバーを採用することで2ユニット構成としたモデル。一体化したトゥイーターとミッドレンジは、それぞれ26mmバランスドドームと73mmコーン型、バランスドドームはアルミ合金ダイヤフラムとし、ミッドレンジは2層クロスカーボン振動板を採用する。組み合わされるウーファーは170mmのコーン型、振動板はミッドレンジと同じく2層クロスカーボンだ。CSTドライバー用パッシブネットワークと、ウーファー用ローパスフィルターにより帯域分割される。CSTドラーバーと専用パッシブネットワークはTS-HX900PRSとしても販売されている。
本記事は、グランプリ選考メンバーによる座談会である。グランプリ製品選考会直後に語られたTS-Z900PRSの魅力をじっくりとお読みいただきたい。[編集部]

画像: オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から石田功氏、鈴木裕氏、藤原陽祐氏、黛健司氏、脇森宏氏、長谷川圭氏。

オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から石田功氏、鈴木裕氏、藤原陽祐氏、黛健司氏、脇森宏氏、長谷川圭氏。

パネラー・オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー
[石田功、鈴木裕、藤原陽祐、黛健司、脇森宏、長谷川圭]
(まとめ=ASW編集部/写真=嶋津彰夫)

画像2: Auto Sound Web Grand Prix 2020:【特別座談会】シルバーアワード獲得 カロッツェリアTS-Z900PRSスピーカーの魅力を語る

ASW:グランプリのシルバーアワードとなりましたカロッツェリアのスピーカー、TS-Z900PRSについて皆さんのお話をうかがいます。同社のトップグレードスピーカーとして久々のリリースとなりました。TAD(テクニカルオーディオデバイセズ)のCSTドライバーを市販車載モデルに使ったことでも注目されていますね。ではまず石田先生からお願いいたします。

石田 功(以下、石田):僕はデモカーでの試聴体験もあるんですけれど、クルマで聴ける音にびっくりしました。分解能の高さとか音場の出方とか、とにかく今までのクルマと全く違った聴かせ方をしていました。おそらく、これまでのカーオーディオを変える存在だと思います。試聴室で聴くとダモーレエンジニアリングのパワーアンプと組み合わせてみたんですが……。

鈴木 裕(以下鈴木):その組合せで聴いたんですか?!

石田:聴いちゃいました。これが抜群にいいんですよ。

鈴木:でしょうね! そうか、あれで聴いたんだ。

石田 :音像の実在感といったものが物凄くて、ひさびさに身体に震えがきました。

画像: 石田 功氏。

石田 功氏。

鈴木:やっぱりね……そうなるだろうなぁ。いろいろなアンプと組み合わせて聴いてみたくなりますよね。僕は試聴の時に、もっといいアンプがないかなと思っていたんです。

石田:アンプで確かに聴こえ方が変わるんですけれど、TS-Z900PRSほどしっかりした音像の描き方ができるスピーカーは他になかったので、どんなアンプでもこの良さは楽しめると思います。

ASW:続いて、いま思わず声が出てしまった鈴木先生にうかがいましょう。

鈴木:僕はカーオーディオのコンテストなどでも審査員として聴かせてもらう機会がありますが、よくよく思うことがあるんです。『どうして君たちは、スピーカーをヘンなところにヘンな角度で着けるんだ……』と思うんです。そうすることが、どれほど音をまとめるのを難しくしていることか、とね。ステレオの録音と再生の基本というのは、コンサートホールのひとつの音をふたつのマイクで録ってふたつのスピーカーで再生してひとつの音に戻すことですよと説明するんです。このひとつの音を、なぜ君たちは6つも8つもあるスピーカーを使って、こんなあっちこっちに向けて鳴らそうとするんだとなってしまう。このTS-Z900PRSは、そういった基本的な部分を解決してくれたスピーカーだと思いました。

 聴いたときに、たとえば柴咲コウの曲を聴いたときに、エコー成分とかきめ細かな音の世界が拡がったんですね。しかも目の前に拡がる音場がきれいにひとつにつながっている一体感が聴ける、ああいう音はほかにはないですよね。これはもうカーオーディオの世界を変える存在と言っていいでしょう。

 パイオニアというメーカーがずっと培ってきたスピーカー作りのための細かないろいろなものがすべて集約されている感じがしますね。3つのユニットから出る音波が綺麗に揃って立体的に聴かせてくれて、なおかつ高い実在感と音色感とをともなって、すごく、こう、楽しませてくれる、音楽に没入できるような再生音になっていました。

画像: 鈴木 裕氏。

鈴木 裕氏。

石田:違和感のない音ですよね。あの自然な鳴り方は他にはないものでしょう。

ASW:ありがとうございます。続いて、脇森先生はいかがでしたか?

脇森 宏(以下、脇森):はい。『やっと同軸に目覚めたの?』というのが正直な……。

一同:(笑)。

脇森:同軸っていいでしょって(笑)

鈴木:でもあんな良い同軸って今までなかったですからね。

脇森:そう。いままでは同軸というと、セパレートよりランクが下みたいな扱いで、ライナップの展開上そういう感じでした。でも、この音を聴いたら普通にセパレートより良いという感想を持つと思う。特にクルマに着けたらそう感じるんじゃないでしょうか。音でスピーカーの造りの良さを教えてくれるものだろうなと思います。

石田 功(以下、石田):開発初期ではTADのCSTは、大きさ的に車向け製品としてまとめるのは無理だろうという意見が出ていたそうですね。

長谷川 圭(以下、長谷川):たしかにそういう意見が出て当然だと思うし、できあがった製品を見ると、あの構造のものをよくもこの大きさにできたなと感じますね。

石田 功(以下、石田):そうですね。なので、最初はボツになりそうだった企画だったと聞いています。社内でCSTドライバーというものを小さくするのは絶対に無理という声があったにもかかわらず、工夫を凝らして製品化が叶ったようです。

脇森:とにかく、このスピーカーに関して言いたいのは、ちゃんとこの音をよーく聴いて欲しいということ。これを聴けば、トゥイーターというのは……ミッドレンジやウーファーでもいいけれど……ちゃんとつながっているユニット同士というのはこういう音がするんだよと、それをいままであまり……ちゃんとしたつながりのいい音というのを聴いたことがない人が大半だと思うんです。そういう人に聴いてもらいたい。そしてこの価格のスピーカーでクルマに着けて聴けるというのは、けっこうエポックメイキングなことです。

画像: 脇森 宏氏。

脇森 宏氏。

長谷川:音のつながりというと、スピーカーユニットの造りそのものももちろんなんですけれど、パッシブネットワークも出来がいいですよね。

脇森:そうですね。単純に何ヘルツで何デシベルで切ってみたらということだけじゃなくて、いろいろなことを考えないとつながらないんだよということを、TS-Z900PRSの音は教えてくれると思います。だから同じ周波数で、同じカーブで、たとえあの同じ2つのユニットを使ってマルチアンプドライブで合わせてみても、おそらくああいう音は出ないでしょう。ノウハウが詰め込まれているというのをちゃんと理解してもらって、このスピーカーを使う使わないは別にしても、あの音をひとつの指標にしてオーディオに挑んでもらえるともっと楽しめるだろうなと思います。

石田:CSTドライバーを技術的な面からみると、位相を揃えることというのが重要視されていることがわかりますよね。この位相の整合が大事なことは我々のような立場の者は昔から言い続けてきていたけれど、開発者側がようやくそこを真剣に取り組んでくれたという感じですね。

鈴木:位相が合っているというのを、音の立ち上がりのタイミングが合っていると捉えると、周波数特性に関しては人間の耳は自分で補正して聴けるのだけれど、音が耳に到達するタイミングは補正できないという説があって。つまり出る方で整えてあげないとダメなんですよね。TS-Z900PRSの開発にあたっては、発音タイミングがずれているかどうか判断してちゃんと認識することで、しっかり合わせることができてまとまった音にすることができたのでしょうね。

画像3: Auto Sound Web Grand Prix 2020:【特別座談会】シルバーアワード獲得 カロッツェリアTS-Z900PRSスピーカーの魅力を語る

ASW:では、だいぶお待たせしました。藤原先生のご意見をうかがわせてください。

藤原陽祐(以下、藤原):TADのCSTドライバーが応用されたんですけれど、もっと早く出てきても良かった気もしますよね……。

一同:(笑)。

石田:いやこれは、一度ボツになりかけましたから(笑)。

藤原:なるほど、そういう事情もありましたね(笑)。確かに、コストのこともありますよね。TADではベリリウムダイヤフラムで造っているものを、カロッツェリアではアルミ合金とクロスカーボンにしたりと、いろいろ落としどころがあるのだと思います。かなり苦労して完成させただろうことが容易に想像できます。しかもこれで価格が12万8千円で発売している。これはかなりの努力をしていますよね。

 僕はホーム用システムで聴く同軸って正直言ってあまり好きじゃないんです。なぜ嫌かというと、高さがあまり出ないんです。そこそこ高級なスピーカーシステムにおいても、そういう傾向を感じるんです。コンパクトな空間で気持ちよく聴けるというのがあるんだけれど、高さ方向の空間が出ないのであまり好きじゃないんです。でも、TS-Z900PRSは凄いですね。空間の作り方というのも高さ奥行きがしっかり出てくる。あと、楽器の位置関係が凄くハッキリ出ますね。

 なかなか、その、同軸って理論で「いいでしょ」と言われても、「オヤ?」というのが少なくなくて、実際にその良さが、音を聴くとそれほど感じられない、『いやこれは普通にトゥイーターを着けた方が良かったんじゃないの?』ということが多いんです。でもこのTS-Z900PRSは『ついにこの同軸が来たか!』という感じですね。

 パイオニアがCSTドライバーから音波が出るイメージ(動画)を、ウェブサイト上で紹介していますが、一部他社のエンジニアから「あれはインチキだ」などと言うところもあるんだけれど……。

一同:(笑)。

画像: 藤原陽祐氏。

藤原陽祐氏。

藤原:「同軸でこんなに綺麗な波が出るはずがない」ということらしいですが、でも音を聴くとそうとう良いレベルで理論通りになってると感じますよね。完全なフルレンジに近いようなね。しかもワイドレンジになっている。そういう出来ですよね。東北パイオニアの安西さんというエンジニアに「どうしてこんなことができるの?」と聞いたら、TADのR1がいつでもすぐに試聴できる環境が職場にあって、つねに聴き比べながらその音に近づけられるよう仕上げていったので、このような鳴り方をするものにできたんじゃないかと言うんです。でも、きっと技術的にこうしたからできたというのがあったんじゃないかと思っているんです、彼が言えなかっただけで。実に見事なスピーカーができましたね。

ASW:ありがとうございます。それでは黛先生はいかがですか?

黛 健司(以下、黛):脇森さんが同軸ユニットをの見直したというような発言がありましたけれど、やはり従来の同軸スピーカーとは別物ですよね。CSTドライバーというのは構造としては同軸になっているけれど、CSTドライバーを成立させるための技術には、これまでの高域用ユニットと低域用ユニットが同じ軸上に並んでいるというだけの構造とは全く違う技術で開発されていますね。TAD=テクニカルオーディオデバイセズ社で開発したCSTドライバーをクルマの中に持ち込むというのは相当難しかっただろうなと思うんです。

 CSTドライバーのオリジナルの基本的な構造、それからTADが開発したときにそこで得られたいろいろな知見がある程度フィードバックできているでしょうけれど、でも、結果的にできあがったものって、構造上同軸になっているというだけで、あとは別物だろうと思うんです。スピーカーの開発としてはとても困難だっただろうと想像します。それを、こういう製品としてまとめたのはとても評価できるところです。

 クルマに装着するインストーラーからすると、苦労がひとつ減ったわけです。3ウェイのスピーカーなのにスピーカーユニットはひとつ減っているわけですから。トゥイーターとミッドレンジをどうやって装着しようか、迷う必要がない。メーカーが一体型にまとめてくれたわけです。しかもあの大きさだったらなんとでもできるでしょう。88mmというサイズに決めた理由というのもメーカーに聞いたんですが、それに対しては「クルマの中に着けられる限界値だと、これ以上大きくなると制約が大きくなりすぎて自由度がなくなってしまう。88mmまでの大きさなら、なんとか着けてもらえるだろうという想定から導き出した」ということでした。そういうギリギリのせめぎ合いの中で決められた寸法というので、一体型で、そこそこの低い音から最高域までを受け持ってくれるというのは、クルマの中で音を良くする可能性がとても広がったなと思います。

画像: 黛 健司氏。

黛 健司氏。

長谷川:スペック上ではCSTドライバーが受け持っているのは800Hz〜90kHzですね。いま、黛さんがおっしゃったこのCSTドライバー、トゥイーターとミッドレンジを一体化したことが素晴らしいというようなコメントがありましたけれど、メーカーとしてはこのCSTドライバーこそ市販製品として世に送り出したかったようですね。TS-Z900PRSと同時にTS-HX900PRSというCSTドライバーと専用パッシブネットワークのセット商品が発売されています。

 最近のクルマでは、ドアスピーカーが交換できない車種もあるので、手軽にダッシュボードの上にポン付けできて、しかも格段にクォリティアップできる製品というのも模索していたそうで、HX900PRSはそういった活用ができる製品としてパッケージングされたようです。すでにプロショップでは、TS-Z900PRSであったり、TS-HX900PRSでいい音に挑戦しているところもあるようですし、今後多くのクルマに装着されてみなさんがお話しされたような新しい音の世界に目覚めていくことを期待したいですよね。

石田:たしかにHX900PRSでというアプローチも興味深いですね、僕がやるならHXとサブウーファー着けて、高性能なDSPを使って調整してみたら面白いかなと思います。

長谷川:TS-Z900PRSの12万8千円って、この製品内容でこの価格というのは物凄く楽しみ甲斐があるように感じませんか? パッシブ使って鳴らすのもいいし、バイアンプにもできるし、マルチアンプドライブもできる。なかなかコストパフォーマンスも高いと思います。

:どうしてこんなに安くできたんでしょうね? 昔のRSスピーカーはクォリティも高かったけれど、価格も相当なものだったでしょう。

石田:PRSのシリーズだともともとこのくらいの値段でしたけど、今度のはCSTドライバーだし、安く感じますよね。

画像4: Auto Sound Web Grand Prix 2020:【特別座談会】シルバーアワード獲得 カロッツェリアTS-Z900PRSスピーカーの魅力を語る

藤原:ごく一般的な感覚で言うとお安いとは感じられないかもしれないけれど、長谷川さんが言うようにこれだけの製品ならば、確かにいろんな事やってみようかと思えるでしょうね、どういう使い方をしても楽しめるだろうし。

石田:10万超えてますからね、充分に高い。でも、この内容だとそうでもなく感じる。うまくできたと思います。

鈴木:値付けは絶妙なところでしょうね。これが15万だと手は出さないだろうし、9万というと安すぎる、12万8千円だからお得感もあって購入検討するといった感じじゃないでしょうか。

石田:HX900PRSだけだと7万8千円なんですよね。これもいい値付けですね。

鈴木:インストールも簡単にできますしね。

長谷川:そうですね、付属のパーツで角度調節できるスタンドがありますから、ダッシュボードの上に置いた感じで固定できますから、シンプルな装着もできます。もちろんプロショップでピラーに埋め込んだりというアプローチもあるでしょう。いずれにしても、多くの人が挑み甲斐のある、しかも楽しみ甲斐があるスピーカーといえると思います。

ASW:ありがとうございました。カロッツェリアの上級グレードスピーカーですから、今年はあまり実施されませんでしたけれど、来年コロナの影響がなければまた各地でコンテストも行われるでしょうし、そこでは新たな勢力になりそうですね。

This article is a sponsored article by
''.