画像: オートサウンドウェブグランプリはこうして選ばれた
Auto Sound Web Grand Prix 2020:選考について&考察

 オートサウンドウェブグランプリ2020の選考委員は、評論家[石田 功、鈴木 裕、藤原 陽祐、黛 健司、脇森 宏、長谷川圭(ASウェブ)]の計6名によって構成している。
 本年のグランプリ受賞数は全14賞、AVナビゲーション4モデル、スピーカー4モデル、パワーアンプ2モデル、DSPとメディアプレーヤーとディスプレイオーディオがそれぞれ1モデルという内訳になる。
 ここでは、グランプリ製品の選考に関する解説と今年の動向についてまとめている。

文=長谷川 圭

選考メンバーが協議し各賞を選定

 オートサウンドウェブグランプリ2020は、2019年12月(発表および発売時期の都合で前年選考対象から外れた製品)から2020年12月に発売されるカーオーディオ製品を対象に、音質面で高く評価されるものを選出するものである。選考は先述の6名によって行われる。

 選考手順は、選考メンバー各氏が推薦する製品をノミネート製品とし、対象製品に対する評価を各メンバーが表明し、グランプリに相応しいと判断された製品を選出している。2020年は熟考の末、AVナビゲーション4モデル、プレーヤー&メインユニット各1モデル、スピーカー4モデル、パワーアンプ2モデル、DSP1モデルである。受賞は全13賞とした。

 Grand Prix Gold Award アルパイン ビッグXシリーズ
 Grand Prix Silver Award カロッツェリア TS-Z900PRS
 Grand Prix Bronze Award カロッツェリア サイバーナビシリーズ
 Grand Prix Bronze Award ダモーレエンジニアリング A1500.2/A1500.4
 Grand Prix Special Award オーディオテクニカ AT-HRP5
 Grand Prix カロッツェリア DMH-SF700
 Grand Prix イートン オニキスシリーズスピーカー
 Grand Prix ヘリックス DSP ULTRA
 Grand Prix ケンウッド 彩速ナビTypeM
 Grand Prix マイクロプレシジョン Z-Studio 4Ch Amplifier version 1.1
 Grand Prix モレル ELATE CARBON PROスピーカー
 Grand Prix パナソニック CN-F1X10BLD
 Grand Prix RSオーディオ RS Master 3 MKII

 選考手順は次の通り。

◆選考メンバー推薦による製品ノミネート
◆ノミネート製品に対する採点
◆得点数をもとにグランプリ入賞製品を協議
◆入賞製品の中で特に高く評価できるものに対し、ゴールドアワード以下、シルバー、ブロンズ、スペシャルなどの賞を決定

 本年の場合、13賞のうち、ゴールドアワード1、シルバーアワード1、ブロンズアワード2、スペシャルアワード1としている。ゴールド、シルバー、ブロンズは、基本的に得点数が多かった製品について各賞としてふさわしいかどうかを話し合い決定している。今年はブロンズアワードとして2製品が選ばれているが、話し合いを重ねた末、いずれも積極的に評価されるべきモデルであると結論し、同率受賞とした。スペシャルアワードに関しては、製品コンセプトや採用技術といった部分を重視して選んでいる。

すべての製品を試聴取材のうえ評価

 製品の評価については、基本的にオートサウンドウェブの試聴取材環境で実際に音を聴いておこなっている。ステレオサウンド社の試聴室における試聴条件は以下の通り。

〇スピーカーは、ユニットサイズや構成による一部の製品を除き、独自のプレーンバッフルにマウントして試聴している。
〇電源は車載用バッテリー(パナソニック製caos)に定電圧電源を接続し、つねにチャージしながら各コンポーネントを駆動。
〇接続ケーブルは、電源、ライン、スピーカーとも車載用製品を使用。
〇各製品ジャンルごと、評論家ごとにリファレンスとなる機器を接続。適宜組合せを変えるなど、できうる限り製品のパフォーマンスが引き出せるよう試聴を行っている。

 いずれの条件も、車載用という製品仕様ではあるものの、オーディオ機器として理想的な再生条件で評価しようというものだ。当サイトの前身でもある雑誌Auto Soundで確立させた試聴スタイルを踏襲した形でもある。

2020年の動向

 2020年の市場では、コロナ禍に翻弄された1年であった。生産メーカーは国外に生産拠点を置いているケースが少なくなく、生産ラインがストップしたことなどもあり新製品の発売タイミングが遅れたり、既存ラインナップの在庫が極端に少なくなることもあったようだ。また、本年後半にはデジタルデバイスメーカーの工場で発生した事故の影響で、カーナビゲーションやヘッドユニット、デジタルプロセッサーへのパーツ供給が途絶え生産がストップ、本記事公表時には品薄状態になっている。このデバイス工場事故の影響はオーディオ業界、自動車業界に広く影響を及ぼしている。これほどまで不遇な年はなかった。
 とはいえ、本年早々に発売された製品や、企業努力によりリリースされた製品には優秀機が多く、近年まれに見る豊作の年ともいえる。本年のグランプリ受賞製品の特長を考察してみよう。

 AVナビゲーションやソースユニット(ディスプレイオーディオやメディアプレーヤー)においては、先に触れた理由からこれから購入するのは困難を極める事が予想されるため、ぜひ早々に店舗在庫をご確認のうえ購入していただきたい。AVナビは大画面モデルが一般化する中で、ディスプレイをフローティング構造として多くのクルマに搭載可能とする製品が各社から発売されるようになった。受賞を果たしたモデルはいずれも発売メーカーの最上級シリーズで、ハイレゾへの対応はもちろん、それを高品位に再生するべく回路構成やオーディオ回路パターン、搭載デバイスを吟味したものばかり。個々の詳細な評価は、それぞれが選ばれた理由を別記事にてご覧いただきたいが、ひとことずつ触れてみたい。

 ゴールドアワードのアルパイン「ビッグX11」では、内蔵アンプを新規のデジタルアンプデバイスとするほか、これまでになかった構造を採用し、我々を驚かせてくれた。メーカーでは「All New」の文言を添えた新シリーズを謳っているが、看板に偽りなしといえよう。

 ブロンズアワードのカロッツェリアサイバーナビは、機能でこそ2019年モデルを踏襲しているものの、性能面では明らかな進化を遂げている。基本性能を底上げさせて、高音質AVナビとしての魅力を高めている点が大きく評価された。

 スペシャルアワードとなったオーディオテクニカのAT-HRP5は、映像入力を備えた既存カーオーディオシステムが必要となるが、USB経由でハイレゾファイルや動画ファイルなど、さまざまなファイル形式のデジタルデータを再生するプレーヤーという新たな製品パッケージを提案。加えて高品位な再生音も実現させた点を評価している。

 ケンウッド彩速ナビTypeMは、最上位モデルらしく、同社AVナビにおいて最多機能、最高性能を備えた製品。フローティングディスプレイも登場してラインナップの充実が図られた。ハイレゾ対応面では業界トップを誇り、PCMファイルはもちろん、DSDやMQA-CDにも対応するほか、ワイヤレスにも対応を果たしている。同社彩速ナビは前年にもグランプリ獲得しているが、モデル906からモデル907への進化度合いはひじょうに大きく、この点も評価されている。

 同じくカロッツェリアのディスプレイオーディオDMH-SF700は、CDなどのディスクメディアを廃し、USBやストリーミングを重視した再生機能としている。なかでもアマゾン アレクサを内蔵することで、車内にソースメディアを持ち込むことなく多くの楽曲が自在に再生できる新たなスタイルが評価された。

 パナソニックのDYNABIGスイングディスプレイ搭載のStradaは、市場初の有機ELディスプレイ搭載機となった。液晶とは異なるメリハリある豊かな発色、ディスプレイパネルそのものの薄型化など多くの点で他社モデルと一線を画す製品となった。また、ディスプレイデバイスの変更だけではなく、音質面でも高いパフォーマンスを聴かせ評価された。

画像1: 2020年の動向

 DSPについては、機能面ではほぼ完成されてきた感があり、高性能化を主軸とした新製品がリリースされてきた。単にデジタルプロセッサーとして機能するだけでなく、プリアンプとして機能するモデルが多くなり、サウンド面ではDSPをソースユニットとしてハイクォリティ化とするのがハイエンドカーオーディオ市場のメジャースタイルとなって久しいが、受賞機のヘリックスではこの部分が評価された。

画像2: 2020年の動向

 パワーアンプというジャンルは、現在のカーオーディオ市場ではひじょうにニッチな存在となってきている。しかし、スピーカーを存分に駆動しようと望むならまだまだ欠かせないアイテムといえる。2020年に受賞を果たしたダモーレエンジニアリングおよびマイクロプレシジョンは、いずれも大型の筐体をもつモデルで、どちらも高額な製品。『一体誰がこの巨漢を載せるのか』とも思われるだろうが、そのサウンドパフォーマンスは卓越しており、本機でなければ得ることができない再生音が聴ける。AVナビの内蔵アンプでは到達できない世界を味わわせてくれる能力は大いに評価したい。

画像3: 2020年の動向

 オーディオシステムの音を決める絶対的存在がスピーカーだ。昨今では新車に純正装着されているスピーカーの交換を拒む車種も出てきているが、このスピーカーの性能がままならないとカーオーディオは感動をもたらしてはくれないといえるだろう。

 シルバーアワードに輝いたカロッツェリアTS-Z900PRSは、不可能とも思われていたCSTドライバーを車載用に開発し、これまでにない音場創造力を見せつけた。本機の派生モデルとしてCSTドライバーとパッシブネットワークで構成するTS-HX900PRSもリリースされており、そのパフォーマンスは大いに期待できそうだ。

 イートンやモレル、RSオーディオの各スピーカーでは、再生音の正確性や整ったバランスはもちろんながら、それぞれのブランドが持つ個性も垣間見え、それぞれに高く評価できるためグランプリに選出された。本年のスピーカーでもっとも顕著だった点は、スピーカーユニットの高性能ぶりが音に現れていたところではないだろうか。

画像4: 2020年の動向

 各製品の詳細な評価については、それぞれ別記事としてご紹介する。ぜひ参考にしていただきたい。

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