「不慮の事故死」が、実は当人の知らぬ存ぜぬところで徹底的に考えられた末に実行された「計画殺人」だとしたら? 1秒ずれていたとしたら、もし天候が違っていたら、助かっていたかもしれないと考えたくなるような「偶然が重なったうえで起きたような不幸」が、犯人たちの徹底的な計算のもとにつくりだされた「殺人」だとしたら?
恐怖である。その恐怖が、この映画を覆う。主人公は計画殺人犯・ヨンイル。クールな頭脳の持ち主で無駄のない動きをする。いろんな「不慮の事故死」をプロデュースしてきて、当然ながらそれはバレず、だが殺害現場には基本的にしっかりといる。感情の起伏を抑えた表情の中に、他人の死など俺が操れば自由自在だ的な、いくばくかのうぬぼれはあったかもしれない。次なる大仕事として、ヨンイルのチームは次期検事総長候補の殺害計画に練っているのだが、いつしか、その彼と、彼が属する殺人設計者集団が、「殺しのターゲット」となる。ベタにいえば、殺人者が殺人者を殺そうというわけだ。当然両者は殺人のプロであり、ヨンイル集団の存在を知ったうえで、それに手を出そうというのだから相手側も相当な頭脳の持ち主であることは疑うまでもない。トリックも仕掛けられているので詳細について触れるのは避けるが、とにかく、天気、気温、道路の込み具合、メインの道路と裏道の関係、電気の配線、人間の目の光に対する耐性など、あらゆるものに気を配っての「殺人設計」ではある。
2004年5月、興行収入ランキングで韓国映画初登場第1位を記録した一作。監督はイ・ヨソプ、主演は『新感染半島 ファイナル・ステージ』や『ベイビー・ブローカー』でも人気のカン・ドンウォン。イ・ジョンソクもパワフルに助演する。ソイ・チェン監督の香港映画『アクシデント/意外』のリメイクであるともきいたが、私はそれをまだ見ていない。ぜひ比べて鑑賞したいと思った。
映画『プロット 殺人設計者』
6月20日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
監督・脚本:イ・ヨソプ
出演:カン・ドンウォン、イ・ミスク、イ・ヒョヌク、チョン・ウンチェ、タン・ジュンサン/イ・ジョンソク
2024年/韓国/5.1ch/シネマスコープ/韓国語/ 99分/英題:THE PLOT/字幕翻訳:石井絹香/配給:クロックワークス/G
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