AudioQuest(オーディオクエスト)から、eARC対応を謳ったHDMIケーブルと、エントリークラスのRCAケーブルが発表された。どちらも6月20日の発売で、それぞれのラインナップと価格(税込)は以下の通り。
●HDMIケーブル:VODKA 48 eARC Priority ¥41,800(1.5m)、¥47,300(2m)、¥55,000(3m)
●ラインケーブル:TOWER RCA ¥7,810(0.6m)、¥8,580(1m)、¥9,350(1.5m)、¥10,230(2m)

オーディオクエスト社は、創業45周年を迎えたブランドで、“オーディオアクセサリーも重要なコンポーネントである” ことを、製品を通じて実践している。今年3月に45周年を発表して以来、改めて注目を集めているそうで、実際に製品の出荷額も伸びているという。今回の2モデルは45周年を迎えた最初のラインナップとなる。
HDMIケーブルの「VODKA 48 eARC Priority」は、型番からも分かる通り、eARCでの伝送品質に配慮した新しいラインナップだ。
参考までにARC(オーディオ・リターン・チャンネル)/eARCとは、同機能に対応したテレビのHDMI入力と、同じく同機能に対応したサウンドバーやAVアンプ、プリメインアンプなどのHDMI出力をつなぐことで、テレビの内蔵チューナーや動画アプリで再生しているコンテンツの音声信号を戻し(リターンし)、これらの外部機器で再生できるもの。

「VODKA 48 eARC Priority」
最近はARC接続に対応したハイファイコンポーネントが増えていることを受け(マランツやデノンの対応モデルも人気とか)、それらのユーザーに対して、よりいい音で楽しんでもらいたいという狙いだそうだ。
そもそもHDMIケーブルは19本の導体で構成されており、それぞれが映像や音声、制御信号などを伝送している。通常はこれらの導体は同じグレードが使われるのが一般的だが、eARC用として使う場合、映像は全画面で黒やグレーになり、しかも画面には写らないので、そこまでの高品質伝送が求められるわけではない。
そこでVODKA 48 eARC Priorityでは、映像(AV)用とeARC用、グラウンド用の導体を使い分けることで、この接続の際に大切になるeARCでの音声信号を高品質に伝えられるように設計している。

「VODKA 48 eARC Priority」の構造イメージ。写真の赤い丸で囲われている3本がeARC用とのこと
具体的には、eARC導体に10%シルバーコーディングLGC(ロング・グレイン・カッパー=長粒銅)を、AV導体は0.5%シルバーコーティングLGC、グランド導体は5%シルバーコーティングLGCが使われている。
eARCの導体としては従来ラインナップの「Vodka 48」(0.5%シルバー)と「Carbon 48」(5%シルバーコーティングLGC)の間に位置し、AV導体は「Forest 48」と同じ、グランド導体はVodka 48(5%シルバー)とCarbon48(1.25%シルバーコーティングLGC)の中間グレードに当たる。
このような導体構成にすることで、価格はCarbon 48に近いゾーンに抑えながら、eARC接続での再生はVodka 48に近い音質を実現したとのことだ。
なおVODKA 48 eARC PriorityはeARC対応ハイファイアンプやサウンドバーとの接続を想定した製品で、AVアンプとの接続時にはVodka 48やCarbon 48がお薦めだろう。というのも、AVアンプを使う場合は、映像信号もAVアンプ経由でテレビに送るわけで、AV導体の品質も重要になるからだ。このあたり、お使いのシステムを考えた選択が必要だ。

「TOWER RCA」
一方のアナログケーブル「TOWER RCA」は、“初めてのオーディオクエスト” として、ユーザーの期待を裏切らない製品を目指してリリースされる。もともと同社では “ケーブルはコストを超える感動を手に入れられる” ことを提唱しており、TOWER RCAでは製品の付属ケーブルからグレードアップする価値を提案する。
導体はLGCの単線で、絶縁体には発泡ポリエチレンを使用。ケーブル自体は両端がL/Rふたつに分かれたアシンメトリカル・ダブル・バランス構造を採用する。さらに、金属層ノイズディシペーション(ノイズ消散)システムが高周波ノイズを効率的に分散することで、自然で美しい音楽を実現してくれるという。コネクター部に方向性を表記するなど、使いこなしにも配慮されている。
担当者によると、「付属ケーブルから買い替えていただくのであれば、たとえエントリークラスであっても、その人にとっては初めてのハイエンドケーブルです。TOWERシリーズは、ここでユーザーを驚かせる、手を抜かない製品になっています」とのことだ。

ディーアンドエムホールディングスの試聴室で比較試聴を行った
ディーアンドエムホールディングスの試聴室で、マランツのCDプレーヤー「CD 50n」とプリメインアンプ「MODEL 40n」、スピーカーにB&W「703 S3」というシステムでそれぞれの音を確認させてもらった。
まず、CD 50nとMODEL 40nの間を、「DCD-600NE」の付属ケーブルとTOWER RCAでつなぎ替えたら音が変化するかを確認した。CDで手嶌 葵「月のぬくもり」を再生してもらうと、付属ケーブルでもそれなりにウォームな音が再現される。余韻やディテイルはややあっさりしているが、声のニュアンスは優しく聞きやすい。
TOWER RCAにつなぎ替えると、ステージがぐっと大きくなって、音の緻密さ、密度感も増してくる。ヴォーカルもより生々しくなり、音楽を楽しむための要素が揃ってくる印象だ。TOWER RCAは、“コストを抑えながらも、ケーブルにとって必要なものはすべて残している” 製品とのことで、その言葉が納得できるクォリティを備えている。

左が「TOWER RCA」で、右は「DCD-600NE」の付属ケーブル
次に有機ELテレビのLG「65G1PJA」とMODEL 40nをHDMIケーブルでつないでeARCの音を確認した。
オーディオクエストの「Carbon」(4K対応仕様)で、YouTubeのTHE FIRST TAKEから大塚愛「プラネタリウム」を再生する。クリアーなサウンドで、高域が明瞭に再現される。音場は全体にくっきりした印象で、ひとつひとつの音をわかりやすく再現している方向と思う。
次にVODKA 48 eARC Priorityにつなぎ替えると、クリアーな印象はそのままに、さらに細かい情報、音のディテイルが浮き出てくる。ピアノも伸びやかに感じられ、肉声感もアップ。声のなめらかさも感じ取れる。価格は現行のCarbon 48から数千円アップする(実売で)ようだが、eARC環境がメインという方は、VODKA 48 eARC Priorityは要チェックだ。(取材・文:泉 哲也)

「VODKA 48 eARC Priority」(左)と「Carbon」(右)。ケーブルは「VODKA 48 eARC Priority」の方がわずかに硬くなっているようだった