この世に存在しない「きさらぎ駅」を巡る都市伝説をホラー感たっぷりに映像化した『きさらぎ駅』が、よりパワーアップして『きさらぎ駅 Re:』として帰ってきた。メガホンは、前作に引き続き永江二朗監督がとり、新たな世界観を創造してくれた。ここでは前作からの引き続きのキャストである主役・宮崎明日香を演じた本田望結にインタビュー。役作りから、現場での苦労について話を聞いた。
――よろしくお願いします。前作の最後の舞台挨拶に監督とお二人で登壇した際、続編を一緒にやりたいと仰っていて、今回それが実現しました。
そうなんですよ! 企画書にも私のその発言が書いてありましたから、言ってよかったって思いました。私自身、内に秘めている夢とか目標が叶った時に喜ぶ姿を見せるのが好きなタイプなので(笑)、事前に(夢などを)話すことは少ないんですけど、あの時は監督にも“本当にやりたいです”とお話していたんです。
だから、もともと続編が決まっていたのではない分、続編ができたことが、夢が叶ったことが、本当にうれしかったです。
――いきなり少しネタバレしますが、続編(パート3)ができそうな終わり方でした。
さらに続きを期待しちゃってもいいですかね(喜)。1作目の時にも思いましたけど、続きを想像できる終わり方が、監督ならではかなって感じました。あまり話しすぎるとネタバレになりますけど、この先もずっと、もう何年も続いていくんじゃないの!? っていう展開になっているので、私も期待しています。
――ご自身の年齢と一緒に作品も続いていくと。
本当ですね。前作では高校生、今回は20歳の大人になりましたから、次は何歳の設定になるか? 楽しみです。ちょうど作品の始まりが2004年で、私が生まれたのも2004年ですから、縁を感じました。
――ホラー作への出演は前作が初めてで、監督からいろいろとホラーならではの芝居の仕方をアドバイスしてもらったそうですが、本作では芝居の面で意識したところはありますか?
そこはかなり緊張した部分です。というのも、監督はホラー作を得意としているからこそ、前作ではホラーらしさを強調するお芝居の仕方をていねいに教えていただいたんです。それはもう別枠というか、それまで経験してきたお芝居をしていてはホラーでは通用しないということがよく分かりました。
本作でもう一度、監督に指導させてはいけないと思ったので、前作で教えていただいたことは復習して、自分にプレッシャーをかけて、監督の期待を超える演技をと思っていました。
一方で、今回はホラー要素のないシーンもしっかりありましたから、ホラー的なお芝居ではない、素の自分の姿を(監督に)どう思われるのか、という部分はすごくドキドキしていたんです。そこは(監督から)任せてもらいましたし、私の思いを尊重して進めてくださったので、監督にはぜひ、どうだったのかを聞いてみたいです。

――ホラーのお芝居はパーフェクトにできた?
前作では本当に、シーンごとにご指導を受けていて、もう少し溜めてとか、もう少し驚くのを我慢してから驚いてとか、毎回苦戦していましたけど、今回は指導を受けることはあまりなかったので、ガッツポーズしていいんじゃないかと思います!
――もうホラーの女王と呼べる感じですね。
それは言い過ぎです(笑)。
――今回の物語を読んでの感想は?
脚本には何度も何度も微調整が入っていたので、それだけ前作の期待を超えるものを創りたいというスタッフさんの熱意を感じましたし、その脚本を超えるのが私たちの仕事だと思うので、プレッシャーを自らに与えながら、現場に臨んでいました。
――それはクリアしたと。
無事に(笑)。
――作品の展開については。
ある意味、「きさらぎ駅」ファンのみなさんを裏切れると思います。前作は、日本のホラー映画界に新しい枠ができたような存在になったと思うので、本作はそれを超えるんだ! という意識は強かったです。そのハードルを越えるという熱量をスタッフさんから感じていましたので、きさらぎ駅ファンのみなさんの期待を超える、そんな進化した作品になっていると思います。
前作を観て下さった方は絶対観てくれる自信がありますし、観てくれた全ての方、この映画を好きになってくれた全ての方が、続きが観たいと思ってくれているという実感は、当時からあったので、だからこそ今回は、前作を観ていない、知らない方にどう届けるかということを、すごく考えた展開になっています。
――2作目を観てから前作(1作目)に戻るのも面白そうですね。
そうなんですよ。なんなら1作目を観た方には、その記憶を消して新作を観てほしいっていうぐらい、続編ではありますけど、進化しているし、初めての方でも楽しめます。
――少し話は戻りますが、先ほどホラーのお芝居については伺いましたが、本作における明日香の役作りについて教えてください。
自分で見ても、明日香は(前作から)変わったなって思いました。それもあって、私自身、本作での初登場シーンから、明日香の雰囲気が変わったという部分を出したいと思っていました。もちろん、同じ役ですから、3年という月日が経っていたとしても、同じ人物像を貫かないといけないわけですが、一見して人格が変わったと感じるぐらい、その3年間がすごく濃くて、ある意味辛い経験をしている子に見せたかったからこそ、前作の明日香に引っ張られないようにしました。

そこは、きさらぎ駅ファンの方は、びっくりするでしょうね。前作ではすごくいい子だったのに、冒頭からなんか雰囲気が違うなって。そこには、色々と隠されていますから!
――その想いというか心情が、ラストに集約されていたように感じます。
そうですね、ネタバレギリギリですけど(笑)、観終わってから、もう1度最初から観返していただくと、あっ、もしかしてこの瞬間から、明日香はもう企んでいたんじゃないかっていう風に見せたかったので、その絶妙なところを出したつもりです。繰り返し観ていただくことで、2度も3度も楽しめるように、自分にプレッシャーをかけて臨みました。
――その時の表情は絶妙でした。芝居や撮影はいかがでしたか。
本作では前作以上に監督と話し合って進めていましたし、監督も、もうちょっとこうしてほしいとか、こうやってほしいという提案をすごくしてくださったので、私はそれを信頼してくれているからだと感じていました。けど、そのシーンでは、監督は私に話しかけてくれないので、これはハマってないのかな? って心配していたんです。それで監督に聞くと、よかったよかったと言ってくださったので、逆に、何も言ってくれない時は、監督は手応えを感じていたんだなって思いました。
――前作では、「きさらぎ駅」という世界観を映像化していましたが、本作では明日香という存在をメインに映像化したようにも感じました。
前作で、明日香推しになってくれた方が、すごくたくさんいらっしゃったという実感がありましたから、その子がどうなったのか? を知りたいという人間心理をうまくくすぐる続編になったと思いますし、いい子だった明日香をそこまで変えてしまう世界が描かれていますから、何度観ても楽しめると思います。
――ちなみに、本作ではきさらぎ駅へ行く儀式(?)をしています。
前作で、恒松さん演じる堤(春奈)がしたのと同じ動きをしたり、重ねる部分が多かったので、同じ動きをすることを意識しながらの撮影でした。現場では前作を見ながら堤さんと同じ動きになるように、たとえば階段を登るシーンでも、堤さんが通った同じところを歩くようにする、ということを考えていました。
――そんなに細かいところまで!
細かい部分までなぞるようにしました。そういう部分ってあまり気づいてもらえなかったりしますけど、きさらぎ駅のファンのみなさんなら、絶対気づいてくれると思って、スタッフさんと相談してやりました! 描かれてはいないけど、実は……という裏設定みたいなものあるので、絶対にファンの人たちは気づいてくれると信じて、楽しみながら演じていました。
――それこそループ(観劇)ですね(笑)。
ぜひ。3回、4回、5回と観ていただくと、あっと気付かれることがあると思います。何度観ても楽しめるようにしたかったので、うれしいです。
――繰り返し出てくるアノ人たちへの当たり(対処)が段々激しくなるなど、コミカルな部分もありました。
繰り返すと、観ている方が退屈したり、飽きてしまうという怖さがあるんですけど、そこをうまく使った笑いを監督がうまく描いてくださったので、それを着実に当てはめていく作業――それが私たち役者の仕事ですから――は、面白かったですね。
繰り返しって、次はこうなると分かっているんだけど、そこを利用して一緒に楽しめるようするのは、さすが永江監督って思いました。
――最初に出てくる杖をついたおじいさんへの対応は、激しかったですね。
カメラ位置でも全然面白さが変わりますから、どう見せるか、見えるようにするかをみんなで話し合いました。それは多分、前作でスタッフ・キャストを含めて絆が生まれているからこそ可能になったものだと思っています。

――その、段々エスカレート(?)していく対応については、恒松さんとは何か話し合ったりしたのですか?
アクションの部分は、あまり細かくは脚本に書いてなかったので、現場で合わせる(考える)という感じでした。例えば、正面から殴るシーンでは、次のターンでは、回転を入れていいですかって提案して、自分で回転を入れてやってみたりしました。攻める気持ちを大事にして、アクションにチャレンジしました。
――ちなみに、本田さんってホラーは苦手ですか?
苦手だけど(観に)行って、しっかり怖がって、最後に行ったことを後悔するタイプですね。
――すると「きさらぎ駅」へ行ってみたい?
行かないと思います。私は信じやすいので、ネット動画を見て、すごーいってすぐに感心してしまうんです。姉妹からは、それは合成なんだよと諭されることも多くあるので(笑)、とにかくすぐには信じないように、慎重に慎重に見極めます。
――そういえば、前作はご自身でも結構劇場に行かれたそうですね。
今回も行きます。とにかく、映画館が好きで、ほぼ毎週行っているぐらいなので、この作品も映画館で観たいですね。
――ホラー映画を観て、振り返ったらリアルな明日香(本田望結)がいるのも、ある意味ホラーですね。
怖がらないでください(笑)。
映画『きさらぎ駅 Re:』
2025年6月13日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、イオンシネマほか全国ロードショー

【出演】本田望結
芹澤興人 瀧七海 寺坂頼我 大川泰雅 柴田明良 中島淳子
奥菜恵 / 佐藤江梨子
恒松祐里
【監督】永江二朗
【配給】イオンエンターテイメント
【企画・制作】キャンター
【製作】「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
(C)2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
●本田望結 プロフィール
2004年生まれ。京都府出身。
2011年、ドラマ「家政婦のミタ」(日本テレビ系)への出演で話題になり、その後数多くの映画、ドラマに出演する。近年の出演作はドラマ「少年のアビス」(22/MBS)、NHK連続テレビ小説「らんまん」(23)、「ふたりソロキャンプ」(25/TOKYO MX)、映画『きさらぎ駅』(22)、『それいけ!ゲートボールさくら組』(23)、『カーリングの神様』(24)などがある。フィギュアスケーターとしても活動。
公式サイト
https://www.oscarpro.co.jp/#/profile/entry/449
ヘアメイク:山田佳苗
スタイリスト:稲葉江梨