石川県穴水町は若者と高齢者の数がともに減ってゆく「人口減少の最終段階」に入っている。いわゆる「過疎」というのともどこか違う。より唖然とさせられる。まだかろうじて減っていない「若者でも高齢者でもない人々」も、生きていれば誰もが高齢者となり、つかの間の長寿を誇ってもいつかは「減る」当事者となる。

 その穴水町で奮闘する滝井元之さんに焦点を当てた一作だ。住んでいるのは町の中心部分からさらに奥。猫がうろうろしている喜びは何ものにも代えがたいとしても、毎日の生活は厳しい。その中で手書きの新聞「紡ぐ」を発行してきた。映画の中ではその制作風景も紹介されているが、下書きなしの一発書き。しかも字体の書き分けにメリハリがある。「手書き文字の説得力」を久々に感じる機会を得た、という感じだ。

 「ひとり編集部」が大変な労苦を要することはいうまでもない。独善的にならぬよう取材して、調べて、書いて、読者に伝えて(ディストリビューションして)……。私は雑誌編集の経験があるので、「ああまったく、ひとりで大変なことに取り組んでいらっしゃるなあ」と見上げるような気持になった。

 2024年元旦、能登半島地震が発生。ぐちゃぐちゃになった家屋、暴力的なまでの吹雪、車道に転がりまくって交通を遮断する岩が言葉を失わせる。水道が復旧した時は、画面に向かって拍手したくなった。石川テレビは24年5月に『能登デモクラシー』のテレビ版を放送し、それは穴水町の独特の政治状況にいささかの刺激を与えることになった。この映画版ではさらにそれ以降の町の動向についても触れている。監督は、石川テレビの五百旗頭幸男。

映画『能登デモクラシー』

2025年5月17日(土)から[東京]ポレポレ東中野、[大阪]第七藝術劇場、5月24日(土)から[金沢]シネモンドほかにて劇場公開

監督:五百旗頭幸男 撮影:和田光弘 音声:石倉信義 題字・美術:高倉園美 編集・撮影:西田豊和 音楽:岩本圭介 音楽プロデューサー:矢﨑裕行 テーマ音楽「穴水ラプソディー」(作曲:岩本圭介) プロデューサー:木下敦子 製作:石川テレビ放送 配給:東風
2025年|日本|101分|ドキュメンタリー
(C)石川テレビ放送

公式サイト
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