いまおかしんじ監督の最新作は、あべみほを主演に迎えておくる、切なくて愛おしいひと夏のラブストーリーを描いた『真夏の果実』。その名の通り、不器用な夫婦のひと夏の波乱をいまおか監督らしいユーモアを交えた演出で創り上げた注目の作品。ここでは、本作で映画初主演を飾ったあべみほにインタビュー。役作りから現場の思い出、自身の恋愛観などについて話を聞いた。

――よろしくお願いします。主演作の公開が迫ってきました。今の心境はいかがですか?
 ありがとうございます。私が映画に出るなんて想像していましたか! もうびっくりです。

――前にお話しを伺った際、今後はお芝居もやりたいと仰っていましたから。
 そうでしたね。でもあれは、「第三水曜日即興舞台」に力を入れていきたいっていう意味だったんです。「第三水曜日即興舞台」自体はお陰様で10年目に入っていて、その延長上にお芝居をやってみたいという想いはありましたけど、やっとそれが実現したらいきなり主演でしたから、本当に恐縮しました。

――あべさんなら“主演お願いします”“はい、分かりました”なのかと思っていました。
 そんなことないです。活動自体は来年で20年を迎えますが、グラビアをメインで活動していた頃は、水を得た魚のように自由に泳いでいるだけで、あとはスタッフのみなさんが映像を完成させてくれるので、どの角度で撮られているかとか、どんな表情をすればいいかについては考えていました。けど、映画って、さらに感情とか仕草など、心の動きも加えないといけませんから、もう勝手が違いすぎて大変でした。

――映像作品、という意味では慣れていると思っていました。
 それはそうですけど……。もう、セリフ量が段違いで、本当に多いんです。なので、撮影ではこのシーンはいつ撮るというスケジュールを頭に入れて、台本に付箋を貼って分かるようにして、終わったら剥がす。とにかく、スムーズに撮影ができるように、シーンの感情・芝居がすぐ分かるようにしていました。

――少し戻りますけど、即興芝居をしている時は、芝居をしたいという意識は強かった?
 お芝居自体は、子供の頃にオペラミュージカルをやっていたので、経験がなくはなかったのですが、歌でお芝居をする感じでした。東京に出てきてからも何度か舞台は経験していますけど、キャラクターはあて書きでしたから、役を演じる(お芝居する)というより、自分がそこにいるという感覚のほうが強かったです。それもあり、特にお芝居がしたい、という想いはそれほど強くはなかったです。

――では、あべみほが舞台上にいる感じ?
 そうです、そうです。私が私らしく喋っているという感覚です。

――そうなんですか。では今回、設楽あゆみ役を演じるにあたっては、どのように臨んだのでしょうか。
 まず、あゆみってどんな人物なんだろうっていう考察から始めて、企画書には【農家の嫁の役】と書いてありましたから、太らなくちゃ! と思って(撮影までに)5キロ増やしました。

 劇中でははっきりと描かれていませんけど、結婚して10年経っている。その間、ぶどう畑や園芸店で働いてはいますけど、アウトドアなタイプではないので、休みは基本的に家にいて、本を読んだり、お花を育てていたり、お料理に力を入れていたりする。すると、「そこそこ太っているんじゃないか」と思ったんです。

画像1: 「あべみほ」の初主演作『真夏の果実』が公開。「ピュアで不器用なあゆみと龍馬の関係を味わってほしい」

――そうなんですね。映像からは、少しふっくらしたように感じました。
 記者さんは、デビューの頃からグラビアを取材してくださっていたから分かりますよね。

――今は。
 5キロ増量した状態をキープしています。ちょうど、この作品と同時期に写真集(講談社)の撮影もしていて、お胸がいい感じにふくよかになっていましたから(笑)、写真の仕上がりも良くてうれしかったです。ミス・ユニバース・ユニバースに出た時の経験を活かして健康的に太ったので、体の馴染み・体調もいいですね。

画像2: 「あべみほ」の初主演作『真夏の果実』が公開。「ピュアで不器用なあゆみと龍馬の関係を味わってほしい」

――一方で、内面のほうの作業はいかがでしたか?
 冒頭の食事シーンを観ていただくと、あゆみの立場が分かると思いますけど、長男の嫁としてかなり昭和的な家庭(笑)で暮らしていますから、まずは(結婚当初の)ときめきを思い出したり、それを感じるために、多くの作品に触れるようにしました。

――触れるとは?
 アニメや映画をたくさん観て、感性を磨く作業ですね。登場人物を見ながら、「ここはあゆみちゃんに似ているな」とか、感情表現やしぐさなどをインプットしていきました。

――食事シーンでは、ずっと、から揚げから揚げと言われていました。
 から揚げから揚げろ、ってオヤジギャグを言い始めるシーンなんです。劇中では何度も出てきますけど、あゆみは無視(!)していて、実は終盤へ向けての伏線にもなっているんです。

――結婚して10年……も経っていたのですね。それにしてもあゆみは大分鬱憤が溜まっているように見えました。
 そうなんです。それに、誕生日を忘れられているので“今日は私の誕生日なんですけど、こらっ! ふん”って怒っているんです。まあ“こらっ! ふん”はアドリブです、自然と出てきました。

――少し話を変えまして、冒頭で、ぶどうを食べて美味しいと言っているシーンは印象的な表情でした。
 ありがとうございます。あそこは、美味しいっていう心からの感情を出すために、撮影前にフルーツ(ぶどう)を食べないようにしていたんです。現場では、「このぶどう美味しいよ」って、いっぱいいただいたんですけど、一粒も食べずにいました。恥ずかしいので周囲の人には(食べない)理由は言わなかったので、なんで食べないんだろうと思われていたかもしれません。いやもう、こうして言うのも恥ずかしいです。

――そういう裏話があったんですね。それがあってのあの表情になったと。そこからいきなり食事のシーンに飛びますけど、結婚も急に決めた?
 それは、みなさんの心でそれぞれ考察していただきたいです。まあ、連絡先を渡したところで、龍馬さんってマメなタイプではなさそうなので、すぐには連絡は来ないと、私は思います。

――あゆみの一目ぼれ。
 逆です。あゆみが一所懸命にぶどうを売っている姿を見て、一瞬なんですけど、あゆみのことを女性として見てくれた。そこなんです。それを感じてあゆみが動いた、と。あくまで私の考察ですよ。

――深いですね。ぶどうを売って、そのまま龍馬の実家に行って、結婚した、と思っていました。
 そんなにすぐには行っていませんよ。連絡先を交換して、時間をかけて恋愛して結婚した、と思っています。だって、龍馬さんは作品を観ていただいたら分かると思いますが、ピュアな男性なんですから。

――そして結婚したら、たいへんなことになって!
 そういうことだと思います

――あれをよく10年も耐えていますね。
 あゆみは私と同じで、我慢強い女性なんです。「愛故に」の我慢と言いましょうか(笑)。そうでなかったら、(私は)あんなに痛くて怖いお仕事(プロレスのディーヴァ)を、10年近くも続けられていません。まあ、そういうところだけなく、他にも似ているところは多くて、急に歌ったり、踊ったりするのも、私だなと思いました。その点では、いまおか監督とも似ているかもしれません。街中で、スキップしながら歌っていたら、それは多分私です(笑)。劇中にもありますけど、道路の縁を歩くシーンは楽しかったです。

―――ピュアですね。
 そう、だからそのピュアさをあゆみちゃんに活かせてよかったと思っています。あゆみちゃんは、ただただピュアなだけなんです。

画像3: 「あべみほ」の初主演作『真夏の果実』が公開。「ピュアで不器用なあゆみと龍馬の関係を味わってほしい」

――そんなあべさんが映画に出演して、しかも主演になりました。
 そうなんですよ。プロレスの世界から距離を置いて、まさか自分が女優の道に進むとは思ってもいませんでした。試写会が終わって、写真集も発売して、息つく間もなくこうして取材を受けている。ようやくお芝居の道にいるんだなという感じを受けています。だから、少しでも作品を宣伝しようと思って、いろいろなお店を回って、ポスターを貼らせてもらっています。繁華街でポスターを持っている女性がいたら、それも多分私です(笑)。

――それは、飲みがメイン、それともポスター貼りがメイン?
 お店ですから、きちんと飲みますよ。知っているお店に行って、飲んで、それからポスターを貼らせてもらっています。

――公開が楽しみですね。
 はい! 舞台挨拶にはどういう服を着ようか、ずっと考えているんです。もともとはアパレル志望からモデルになっての今ですから、ドレスアップしたいですよね。会見(舞台挨拶)=ドレスアップというイメージがあるので、どのドレスにしようか考えています。

――監督はおそらく、半ズボンにビーチサンダルですよ。
 それはそれ、私は私です(笑)。しかも、二人で急に歌い出すかもしれません。

――劇中のイチジクの歌は、監督の作?
 はい、歌詞は監督が作っていますけど、メロディは作曲家さんに頼んでいます。劇中で歌うところは、かつての合唱団にいたころを思い出しながら歌っています。

――さて、本作のタイトルは、有名グループの有名な楽曲をモチーフに、熱烈な恋を描いています。
 いえ、偶然らしいです。そうかもしれないし、違うかもしれないと監督が言っていました。ただ、その情熱の度合いは人によって……あゆみは佐野岳さん演じる草壁さんと、懐かしのイチジクを探しに行くのですが、足を滑らせて抱き寄せられるシーンがあって、本当にギュッとしてくれて。そういう感覚は私自身に経験がないので(笑)、本当にキュンキュンしてしまって! 役を超えてときめいていました。佐野さんは楽屋でも素敵なお話をたくさんしてくださいましたし、素敵な方でした。あゆみは、かつてのようにときめきたかったし、そもそもかまってほしい性格なので、一気に燃え盛ってしまったんです。

――その後、多少ネタバレしますが、あゆみには、いろいろなことが起こります。
 あゆみちゃんって、我慢強い割には結構、瞬間湯沸かし器みたいなところがあるので、突然大きな行動を取ってしまうんですが、心の中にはまだ“嫁”という意識があるんです。

――ラストの龍馬とのシーンは印象強いです。
 そのシーンは本当に、キャスト・スタッフが一丸となって、こだわり抜いて創り上げたものになります。実際はもっと早く終わるはずだったんですけど、何度テイクを重ねても、みんながしっくりこなくて。私も泣いちゃうぐらい違うんだよなと思っていて。(あゆみは)怒っているわけではなくて、意地を張っているだけ。自分が悪いと思っているけど、素直になれない。“いいところがすぐに思い浮かばないような嫁で悪かったね”というセリフがありますけど、“嫁”がキーワードですね。

――では、主演作が完成しての感想をお願いします。
 試写を観ている時に、エンドロールの1番頭に自分の名前が出てきて、あっ私主演なんだ、女優になったんだって、やっと実感が湧きました。今後は、主演とか関係なく、いろいろな役柄に挑戦していきたいです。

 それはやはり、先輩たちの背中をしっかりと見させていただいたからだと思いますし、いまおか監督が創り上げたキャラクターと私との相性が良かったというのもあると思います。本当にあっという間の出来事でしたけど、大きなスクリーンに私の顔が大きく映し出されるのも、主演作なのも、びっくりです。もう感謝しかありません。

 たくさんの人に観ていただきたいです。ぜひ、劇場に足を運んでいただいて、スクリーンで何度も観ていただければ幸いです。よろしくお願いします。

画像4: 「あべみほ」の初主演作『真夏の果実』が公開。「ピュアで不器用なあゆみと龍馬の関係を味わってほしい」

――今日は、ありがとうございました。

映画『真夏の果実』

2025年5月17日(土)より 新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー

画像: 映画『真夏の果実』

<キャスト>
あべみほ
奥野瑛太 佐野岳 小原徳子 東ちづる 仁科亜季子
中野マサアキ 中西美帆 丸純子
古藤真彦 才藤了介

<スタッフ>
監督:いまおかしんじ 脚本:松本 稔 企画:利倉 亮 郷 龍二 プロデューサー:江尻健司 アシスタントプロデューサー:竹内宏子 撮影:田宮健彦 録音:飴田秀彦 植田 中 編集:蛭田智子 助監督:伊藤一平 ヘアメイク:刈茅樹里 衣裳:藤田賢美 制作:井口光穂 インティマシー・シーン監修:佐倉 萌 写真:三宅英文 音楽:宇波 拓 整音・音響効果:藤本 淳 キャスティング協力:関根浩一 営業統括:堤 亜希彦 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタ・エンタテインメント 制作:レジェンド・ピクチャーズ 配給:ムービー・アクト・プロジェクト
2025年/85分/ステレオ/R-15作品
(C)2025「真夏の果実」製作委員会

●あべみほ プロフィール
1988年生まれ、北海道石狩市出身。
北翔大学短期大学部服飾美術科在学中、学内でのファッションショーがきっかけでモデル事務所に所属し、花王アタックのCMでデビュー。ミス・ユニバース・ジャパン2012横浜大会にてグランプリを受賞し、その後グラビア活動やレースクイーンを務め、様々なミスコンでも受賞する。

2015年、新日本プロレス所属、タイチに帯同しプロレス界に登場。以降、2022年までタイチのディーヴァとして試合に帯同した。TVではバラエティを中心に人気を集め、舞台、CM、モデル業と多方面で活躍。映画出演作としては『009 ノ1』『ハダカの美奈子』(13)、『ひとよ』(19)などがある。

●SNS
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