タイムロード
エスカレーターで6階に上ると、正面に601、602と横並びに部屋があり、601の部屋が混雑していたとことから、602に入室。この部屋には、24ものブースが出展するなど、もっともにぎわっていた部屋だった。そんなこととはつゆ知らず、人の流れに身を任せて入室すると、一番初めに目に入ったのが、タイムロードだった。
タイムロードのブースを訪れると、担当の方が、すかさず製品の説明をしてくれた。いの一番に、説明してくれのは、今回のイベントで世界初公開となったドイツのヘッドフォンアンプで、VIOLECTRIC(バイオレクトリック)の 「HPA V324」というバランス型のヘッドフォンアンプだった。

「HPA V324」のフロントパネル。中央のボリュームダイヤルは、オートで動く。オレンジに光るVUメーターがアナログ的な色合いで、針の動きも、アナログっぽいく、ずっと見ていられそうだった
フロントに、XLR、4.4mm、6.3mmの3種類のヘッドフォン出力を備えたモデルで、トゥルーバランス再生を実現するため4つのアンプと2つのアナログ入力、プリゲイン調整、リモートでコントロールが可能なボリュウム(モーターで駆動する)のほか、プリアンプ機能やバランス、アンバランスのライン出力、そして、入力レベル表示用のVUメーターなど、さまざまな機能を搭載されているモデルだった。

「HPA V324」のバックパネル
担当の方が、いろいろと操作しながら製品の特徴を教えてくれたのだが、その中でも私が最もお気に入りだったのが、VUメーターの動きだった。キャリブレーション済みの針の動きがゆらゆらと揺れ動くさまが、得も言われぬアナログ感を漂わせていた。筐体は、アルミのヘアライン加工が施されたモダンな感じでありながら、VUメーターの針がアナログ的な動きをするあたりが、デジタルが主流の今の時代に何とも情緒的に思え、メーターのバックライトと相まって、それだけでも満足できそうな印象だった。
ドイツのアナログメーカーが、しっかりと作り込んできた製品ということもあり、自信を持って今回のイチオシ製品だと、話しをしてくれた。
ちなみに、受注開始時期は、2025年5月20日、予想実売価格は、¥605,000程度(税込)を想定している。本体のサイズは、幅170mm、奥行250mm、高さ113mm、とてもコンパクトなサイズ感となっていた。
もう一つ気になった製品が
もう一つ、気になった製品があったのだが、それはChord Electronicsの「ALTO」という製品。最大4組のヘッドフォンと小型のスピーカーを同時に駆動することができるアナログアンプになる。フロントにヘッドフォン出力を備えており、リアパネルには、スピーカー出力を備え、8Ω25W(4Ω50W)のパワーを供給するという。低歪で評価の高いULTIMAアンプトポロジーによって、小型スピーカーを含む幅広いモニタリング環境で質の高いサウンドを実現するとのこと。

Chord Electronicsの「ALTO」というアナログアンプ
ちなみに、フロントのヘッドフォン出力は、ステレオミニプラグの3.5mm×1、ペンタコンバランスプラグの4.4mm×1、ステレオ用プラグの6.35mm×2、を装備し、スピーカー出力は、バナナプラグを1ペア分装備している。
試聴時は、Roonサーバーを経由してQobuzの音を聴くというシステムが構築されており、Roonサーバーの機器にイーサネットLANケーブルを挿し込み、そのサーバーから、ノイズ除去のためにブリッジに繋ぎ、D/Aコンバーターの「DAVE」に繋いで最後に「ALTO」に戻すという設定だった。そこにフロントにヘッドフォンをつないで聴くというシステムだったが、これまで聞いたことのない程の音の迫力に正直驚いた。もちろん、出口となるヘッドフォンの性能もさることながら、Roonサーバー、Nano Bridge、DAVE(D/Aコンバーター)、そして、「ALTO」という構成がこのサウンドを可能にしているのだとしたら、コンパクトでありながらこのクオリティを実現できる技術に興味が湧いた。

Qobuzで音楽を聴くために、Roonサーバーを経由させる

Bridgeを通すことで、ノイズを除去

Chord DAVE(DAC)を通して「ALTO」に接続、そのサウンドをヘッドホンで試聴してきた
ここまですれば、ストリーミング再生でも、文句なしの最高の音で楽しめるのかもしれないと思いながら、構築されたセットの合計金額を考えると、悩ましくも思えた。ちなみに、私には到底購入できるものではないが。
「ALTO」は、すでに4月に一般販売がされており、価格は、¥902,000となっている。
WHISMR(ウイスマー)
続いて気になったのが、「WHISMR」という日本の立体音響専門の会社が手掛けたバイノーラルマイクだ。
そもそもバイノーラルマイクとは、何ぞや、ということで、至極簡単に説明すると、バイノーラルは両耳を意味し、バイノーラルマイクは、バイノーラル録音用のマイクになる。バイノーラル録音とは、人の耳の位置で音を録音して、人が聞こえている音場、方向感などを再現するための録音方法、または、それで録音されたソフトのことになる。バイノーラルマイクで録音した音は、指向性や距離感など、まるでその場にいるかのようなリアルな音を体感することができることから、立体音響と呼ばれたりもするとのこと。

そんなバイノーラルマイクを搭載した製品として、今回「WHISMAR W-BM1」が展示されていた。最大の特徴は、アプリを搭載したスマートフォンがあれば、バイノーラルマイクでの録音がとても手軽に行えるようになっている、ということ。用意するモノは、本製品のほか、専用アプリ「WHISMR Remote」(現在、ベータ版を公開中)あるいは、「WHISMRRECORDER」を設定したスマートフォンと、USB Type Cケーブル1本だけ。外付けのマイクアンプや追加のオーディオインターフェース、内蔵バッテリー、は必要なく、設定から録音まで、スマートフォンで完結できるとのことだった。
本体にスマートフォンを設置しながら映像と併せて録音を行なえば、没入感のあるサウンドが視覚と聴覚で楽しむこともできることから、担当の方の説明を聞いている最中も、ワクワク感が止まらなかった。実際、本製品のマイクで拾った音(会場の)を聞かせてもらったが、臨場感、立体音響という意味がよく分かった。自分の耳が、人の数倍聞こえが良くなったというのか、色々な音が、メリハリをもって、それこそ、平面ではなく立体的なサウンドとして、耳に入ってきた。

マイク部分が耳の形をしているのが、特徴的だった
これが、バイノーラルなのかと感心しながら、価格を聞くと、¥60,000を切る¥59,800というのだから驚きだ。この性能で、この価格なら、色々な音をサンプルとしてと録音し、その音を録り貯めておけば、それこそ、自宅に居ながら、まるで、録音した場所にいるかのような錯覚を味わえる、そんな印象を受けた。

正面方向からの音像の定位を改善するオプションのフェイスマスク。デバイスの正面に取り付けられるようになっているが、まあこれを持った人が正面から歩いて来たら少し怖いかも(笑)。予価は1~2万円ほどという

本体のサイズは、幅170mm、奥行100mm、高さ80mm、重さは、約290gと軽量なので、気軽にモバイルすることができる。なお、人の顔を模したフェイスマスクも販売を予定しているとのことだった。
KORG
続いて興味深く拝見させていただいたのが、KORGのブースになる。言わずもがな、KORGは、電子楽器の製造を手掛ける、メーカーだ。多くのアーティストがKORGのシンセサイザーを使用するなど、オーディオファンならずとも知られた存在ではないかと思われる。そんなKORGのブースで展示されていたのが、「handytraxx」シリーズの2モデルだった。

「handytraxx」の最大の特徴は、なんといっても、ポータブルできるレコードプレーヤーであるということだろう。スピーカーを内蔵しており、単3型電池6本で駆動することから、電源が無い場所でもレコードを楽しむことができる。屋外で使用することも可能だ。特に「handytraxx play」は、デジタルエフェクトを搭載しているので、ストリートでのDJやスクラッチなどを楽しむことができるほか、オーディオルーパーも備えているので、さまざまな音楽表現が可能となっているとのこと。もちろん、スピーカー用のLINE OUTも装備しているので、スピーカーを接続することもできる。電源は、電池駆動も可能だが、USB Type-Cを備えているので、USBによる給電もできる。もちろん、ヘッドフォン端子も用意されているので、一人でレコードを楽しむこともできる。

こちらは、「handytraxx play」¥55,000と、比較的入手しやすい価格帯になっている
展示されていた「handytraxx」のうち、もう一台が「handytraxx tube」で、こちらは、次世代の真空管と評される「Nutube」を使用した、フォノイコを搭載したモデルで、ステレオ・スピーカーを内蔵し、「Play」モデル同様、単3型電池6本で駆動する。

こちらは、handytraxxのミドルモデル「handytraxx tube」、価格は¥110,000となっている。
価格は、それぞれ「handytraxx play」が¥55,000(税込)で、「handytraxx tube」が¥110,000(税込)となっている。
実際にヘッドフォンを通して聴いてみると、何でしょう、この懐かしさは。実家で以前所有していたレコードプレーヤーを思い起こしました。レコードプレーヤーを使わなくなって十数年、つまり十数年ぶりにレコード盤をプレーヤー通して聴くことができたのだが、このホッとする感じに、得も言われぬ喜びを感じた。これを機に、手軽に楽しめるレコードプレーヤーを探したくなるほど。もちろん、KORGの「handytraxx」シリーズも、そのうちの一つであることは間違いないのだが。改めてオーディオ製品は、懐が深いなぁと、実感した。