突如、宗教の勧誘が家にやってきたらどうしますか?
私はビビる。が、この映画に登場する男性、リードは一味違う。遠いところからようこそいらっしゃいました、もちろんウェルカムですという感じで迎え入れる。柔らかな物腰、明晰な頭脳、広く奥行きのある家。だが「どの宗教も真実とは思えない」という考えを持っていた。そこに、シスターふたりが訪ねたということは、いわば、「飛んで火にいる夏の虫」状態。リードは「帰ってください」と言うかわりに、シスターたちを“密室の迷路”に引きずり込む。
リードを演じるのは、日本でも高い人気を誇るヒュー・グラント。だが今回はロマンティックでもなんでもない。ずばり、彼が扮するのは、不気味な紳士だ。妻も在宅していると聞き、シスターふたりはリードの邸宅に入る。性加害の心配はなさそうだ、ということなのだろう。シスターとしてはリードを勧誘できればミッション完了、というところなのだろうが、リードは会話をゆっくりと楽しむタイプであるようで、そのリラックスした雰囲気にシスターたちは次第に飲み込まれていく。が、いつのまにかリードの表情は険しく、不気味になり、シスターたちは一刻も早くこの家を出なければ、とばかりに顔面蒼白になる。ここからがいっそう、リードの本領発揮。いつしかリードの家は、シスターの真の信仰心が試される「脱出ゲーム」の舞台となってゆく。ここで私は、何とも不思議な感じがした映画導入部の会話が、実に意味のあるイントロダクションであったことに気づかされた。
「それで、次は?」とわくわくさせられながら、だが自分の身には絶対に起きて欲しくないと思いながらの時間の経過は本当にスリリングだ。スコット・ベック&ブライアン・ウッズが監督・脚本を担当、ヒュー・グラントはこの「恐ろしい演技」で第82回ゴールデングローブ賞などにノミネートされた。
映画『異端者の家』
4月25日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開
監督/脚本:スコット・ベック、ブライアン・ウッズ
キャスト:ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト
原題:Heretic|2024年|アメリカ・カナダ|字幕翻訳:松浦美奈|上映時間:1時間51分|配給:ハピネットファントム・スタジオ
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