2011年に日本公開された話題作『フード・インク』の続編。『フード・インク ポスト・コロナ』という邦題通り、パンデミック以降の「食」とそれをとりまく事象が大きなテーマとなっている。
内容は非常に重厚で、人生で一度でも何かを嚥下した経験のある者なら、知らず知らずのうちに姿勢を正して見てしまうことだろう。とりあげられている国は基本的に「アメリカ」だが、けっして「よそ」の話で片づけきれないのはいうまでもない。とどまることを知らない巨大企業のはびこり(その背後には超格安で雇われた移民たちの過酷な労働がある)、児童糖尿病の増加、脳に「おいしい」と感じさせるであろうさまざまなエフェクトが加えられた菓子や飲料などなど……。
そのなかで「希望」的な感じで描かれているひとつが「代替肉」だ。巨大な敷地を用意して膨大な餌を与えて膨大な動物を飼育する必要もなく、糞尿にかかわることなく、肉として出荷するために動物を屠畜する必要もない。なんてエコでヘルシーなのか、ということなのだろうが、この「代替肉」プロジェクトの進捗が、今後どこかで公開されるであろうさらなる続編の鍵となりそうな印象を受けた。私は『フード・インク』を公開当時に観てショックを受けたひとりだが、この『フード・インク ポスト・コロナ』はより光明を感じさせる展開になっている。誰もひとりではない――と書くとクサくなるが、要するに、今生きている世界中のみんなが「ポスト・コロナ」という傘の下に存在しているのだ。
共同監督・製作はロバート・ケナー、メリッサ・ロブレド。
映画『フード・インク ポスト・コロナ』
12月6日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
配給:アンプラグド
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