ネットワークオーディオにはさまざまなアプローチがあり、安くシンプルに挙げようと思えばそれも可能だし、大掛かりな超弩級に仕上げることもできる。各人の思惑に応じてシステムを組めるのが、今日のネットワークオーディオのいいところといえる。

 そうした潮流ができていく中で、ハイエンドなニーズの先鞭をつけたのが、今回採り上げるルーミンといってよい。

 その中核を担っていたネットワークプレーヤー「T2」が、この度ブラッシュアップを受けて「T3」へと生まれ変わった。ここでは再生機としてのポテンシャルをアキュフェーズのセパレートアンプと組んだケースと、内蔵デジタルボリュウムを使ってパワーアンプに直結したケースを試聴することとなった。

今の時代に合わせて進化を果たした、ルーミンのネットワークプレーヤー
LUMIN T3 ¥880,000(税込、シルバー)、¥968,100(税込、ブラック)

 LUMIN T3は、最大384kHz/32ビットのリニアPCMやDSD512の再生が可能なネットワークプレーヤーだ。従来モデルT2と同様に、DACチップにはESS製ES9028Pro SABRE DACを複数個仕様するデュアルモノオペレーションを踏襲、端子部等の基本スペックもT2から受け継ぎつつ、新しいパーツやソフトウェアを採用した進化版となる。計算処理能力及びキャパシティー拡大によるリサンプリングフレキシビリティ向上と将来のアップデート対応向上も果たされている。

画像1: ルーミンのネットワークプレーヤー「T3」は、音楽の微細なニュアンスまで再現する忠実性の高さが魅力。デジタルボリュウム機能を活かし、様々なパワーアンプとの組み合わせも楽しめる

●接続端子:アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、デジタル同軸出力1系統(BNC)、USB Type-A、Ethernet 1000Base-T
●対応サンプリング周波数/ビットレート:PCM 44.1kHz〜384kHz/16〜32ビット、DSD512/1ビット
●対応フォーマット:DSD(DSF、DIFF、DoP)、FLAC、Apple Lossless (ALAC)、WAV、AIFF、MP3、AAC
●デジタル出力対応フォーマット:
 USB=リニアPCM44.1kHz〜384kHz/16〜32ビット、DSD512
 BNC=リニアPCM44.1kHz〜192kHz/16〜24ビット、DSD64
●その他の特徴:ESS SABRE32 ES9028ProDACチップを2個搭載、Leedh Pcocessing lossless digital volume control対応、アップサンプリング、Roon Ready、Tidal/MQA/Qobuz/TuneIn Radioネイティブ対応、他
●寸法/質量:W350×H60.5×D350mm/6kg

画像: 音楽信号はUSB Type-AまたはLAN端子から受け取り、アナログ(XLR/RCA)またはデジタルBNC端子から出力する。この構成はT2から変更されていない。今回の試聴ではUSBメモリーに格納した音楽ファイルを再生し、バランス出力でプリアンプ/パワーアンプにつないでいる

音楽信号はUSB Type-AまたはLAN端子から受け取り、アナログ(XLR/RCA)またはデジタルBNC端子から出力する。この構成はT2から変更されていない。今回の試聴ではUSBメモリーに格納した音楽ファイルを再生し、バランス出力でプリアンプ/パワーアンプにつないでいる

 T3はESS社のDACチップES9028Proをデュアルオペレーションにて搭載すると共に、強力なアナログバッファー回路を有したD/A部をコアとするモデル。対応サンプリングレートはDSD512(22.6MHz)、PCMは384kHz/32ビットまで。ストリーミングに関しては、TIDAL、Qobuzに対応し、MQAフルデコードにも準拠する。

 本体前面には各種ステイタスを表示するディスプレイを備え、肉厚アルミ材のCNC加工による堅牢なシャーシパネルとシールド性能も見逃せない。出力はRCAアンバランス/XLRバランスを併設する。

 T2からT3への変更点については、基本スペックはほぼそっくり継承されており、折りからのデバイス不足によって調達が困難になった各種パーツを変更して回路を再構築。基板はより一層高密度となったとドキュメントには記されている。また、「P1」で採用された外装の表面処理(アノダイズ処理)と同じになり、高級感が増したこともセールスポイント。こうして見ると、型番は変更されているが、T2を今日の要求に則してアップデイトを図ったものがT3という理解でいいだろう。

画像: T3の内部構造。基板のサイズや配置等はT2とほぼ同じだが、基板右側の信号処理を受け持つ部分はパーツの配置を含めて大きく変更されている

T3の内部構造。基板のサイズや配置等はT2とほぼ同じだが、基板右側の信号処理を受け持つ部分はパーツの配置を含めて大きく変更されている

 まずはT3の出力レベルをFixedとし、アキュフェーズのセパレートアンプ「C-3900」&「A-300」に接続して試聴した(システム詳細は別掲参照)。音の第一印象は、たいそうクリアーで立体的なパースペクティブ再現で、S/Nのよさからか音場の奥行や広がりが実に豊かということ。

 ダイアナ・パントンの11.2MHz DSD音源「So Nice」では、彼女独得のチャーミングでウェットな質感がしっとりとしたムードで再現された。音像フォルムも実体感があって生々しい。間奏部のマリンバもマレットの動きが見えそうなほどリアルで、伴奏の定位がバッチリ決まっている。

 情家みえの『The Rest of Your Life』から「Save the Last Dance for Me」192kHz/24ビットを聴く。ほどよい色艶を湛えたヴォーカルと、そこにそっと寄り添うように響くピアノ。各々の自然なリヴァーブ感がいい。それらよりもやや下がった位置に定位するベースのピッチも克明で、ひじょうに見通しのよいステレオイメージが展開した。

画像: 試聴時の主なシステム ●ネットワークプレーヤー:ルーミンT3 ●プリアンプ:アキュフェーズC-3900 ●パワーアンプ:アキュフェーズA-300×2、ルーミンLUMIN AMP ●スピーカーシステム:B&W 801D4

試聴時の主なシステム
●ネットワークプレーヤー:ルーミンT3
●プリアンプ:アキュフェーズC-3900
●パワーアンプ:アキュフェーズA-300×2、ルーミンLUMIN AMP
●スピーカーシステム:B&W 801D4

 グスターボ・デュダメル指揮/LAフィルの『ドボルザーク:新世界より』の第1楽章では、スケール感の壮大なシンフォニーが再現された。アンサンブルのハーモニーがたいそうリッチで、ここでもやはり奥行の豊かさが感じ取れる。

 半世紀以上前の録音である『マイルス・デイヴィス/カインド・オブ・ブルー』の「ブルー・イン・グリーン」ではどうか。ミュートトランペットは鋭く、テナーサックスには厚みがある。驚かされたのは、左チャンネルから響いてくるビル・エヴァンスのピアノ。微細なタッチのニュアンスを実に緻密に再現したのだ。

 一方でオリジナルのテープヒス・ノイズは包み隠さずにストレートに再現している印象。つまり、本機での脚色はほぼ皆無といってよく、忠実性がきわめて高いと感じた。

画像: T3に搭載されたデジタル音量調整機能のLeedh Pcocessingを使って、T3とパワーアンプを直結した場合の音も確認している。写真のLUMIN AMPの他に、アキュフェーズA-300との組み合わせも試した

T3に搭載されたデジタル音量調整機能のLeedh Pcocessingを使って、T3とパワーアンプを直結した場合の音も確認している。写真のLUMIN AMPの他に、アキュフェーズA-300との組み合わせも試した

 続いてT3内蔵の丸め誤差を排除したデジタルボリュウム機能「Leedh Processing」を使い、アキュフェーズのモノーラルパワーアンプ「A-300」に直結して試聴した。こちらの音の方が鮮度は断然高く、音場の見晴らしは俄然広々としたものとなり、高さ方向も奥行もより深くなった。一方では、低域が若干緩くなるようで、「ブルー・イン・グリーン」のベースがいくぶん膨らむような傾向も感じた。こうした音の変化から、プリアンプ使用の効能のひとつである『パワーアンプ・ドライバー』的な側面を改めて実感した。

 ダイアナ・パントンのヴォーカルは、声の実体感がさらに高まる印象。鋭く立ち上がるマリンバの響きからして、トランジェントの高まりもあるようだ。ドボルザークではティンパニの響きに少し制動が緩くなったようなきらいはあるものの、ハーモニーの色合いが一段とカラフルになるようだ。

 最後にパワーアンプを「LUMIN AMP」に入れ替え、再びT3内蔵のデジタルボリュウムで音量調整を行なった。LUMIN AMPはデュアルモノのディスクリート構成で、クラスAB動作。英国のウェストミンスターラボが開発に協力しているようだ。

画像: T3とLUMIN AMPの接続はひじょうにシンプル。なおT3のバランス出力は2番HOTのため、アキュフェーズのパワーアンプA-300と組み合わせた際にはA-300側のXLR入力を2番HOTに設定している

T3とLUMIN AMPの接続はひじょうにシンプル。なおT3のバランス出力は2番HOTのため、アキュフェーズのパワーアンプA-300と組み合わせた際にはA-300側のXLR入力を2番HOTに設定している

 音にコクが出るというか、筆致が濃厚な力強いタッチに変わった。おそらくこの組み合わせがルーミンの考える最良のサウンドパフォーマンスと思うが、アキュフェーズとの組み合わせがやや淡く感じられるほど、こちらのペアリングで鳴る音は分厚く濃密である。

 情家みえの歌声はいくぶんグラマラスな佇まいを見せるが、ピアノのタッチの軽やかさと強さといった強弱を明確に示すと共に、間奏部のピアノソロが実に躍動的に響いた。ドボルザークではハーモニーの緩急に伴うグラデーションが一段と稠密だ。

 今回のT2からT3の進化は、表向きにはマイナーチェンジといえる程度かもしれないが、パフォーマンスはずいぶん飛躍している印象。ぜひ店頭などでチェックされたし。

画像2: ルーミンのネットワークプレーヤー「T3」は、音楽の微細なニュアンスまで再現する忠実性の高さが魅力。デジタルボリュウム機能を活かし、様々なパワーアンプとの組み合わせも楽しめる

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