スマートホンは、いまや世代、性別、地域の垣根を越えて広く浸透し、コミュニケーションツールとしてのみならず、日々の生活に欠かせないキーデバイスになっています。その傑出した能力は、当然ながら音楽再生の分野でも遺憾なく発揮されています。

ここでは、5月に小社から発行したムック「かんたん、わかりやすい スマホで始めるオーディオ&ネット動画再生読本」の中から、スマホを音楽の再生機として、ハイレゾ音源の醍醐味を体験するための知識、ノウハウ、システムづくりのあり方などを紹介した記事を、順次掲載していきます(全36回を予定)。

今回は、スマホと組み合わせるワイヤレス(無線)イヤホン&ヘッドホン選びのコツをご紹介します。

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 テーマ1で音楽再生プレーヤーとしてのスマホについて詳しく触れたので(下記関連記事参照)、ここからはスマホでいい音を聴くために必要なイヤホン&ヘッドホンや外部オーディオ機器の選び方やおすすめ製品を順に紹介していきたい。

 テーマ2で扱うのは、ワイヤレス(無線)のイヤホン&ヘッドホン。2016年にiPhoneが3.5mmステレオミニ端子を廃止し、近年はAndroidスマホも同端子を装備しない機種が多くなり、無線規格のひとつである「Bluetooth」を採用したワイヤレスイヤホン&ヘッドホンが急速に普及している。対応機器が多く、スマホと接続するための「ペアリング」もきわめてかんたん。一度ペアリングした対応機器は、その後は電源をオンにすれば自動的につながるようになる。カバンのなかでケーブルが複雑に絡まったり、ケーブルに引っ張られてイヤホンが耳から抜け落ちるなどのストレスから解放されるメリットはとても大きく、通勤や通学はもちろん、ランニングやウォーキングなど、屋外を中心とするさまざまなシーンで人気だ。

 Bluetooth規格では、安定的な無線伝送を実現するためにデータの圧縮を行なっている。つまり、ロッシー圧縮による配信を基本とする音楽サブスクの音源を、Bluetooth機器で再生する場合、二重に圧縮のかかった音源を聴くことになるわけで、当然ながら音質的には不利になる。「Bluetoothは音が悪い」と言われる理由はそういったところにあるのだが、近年はBluetooth規格のなかでもさまざまなコーデック(音声データの圧縮方式)を選択できるようになっており、標準的な「SBC」のほか、より圧縮率が低く音質的に有利な「AAC」や「aptX」、ハイレゾ相当の音源を伝送できる「LDAC」を採用する機器が増えてきている。Bluetoothによる快適なワイヤレス音楽リスニングをいい音で享受するためには、イヤホン&ヘッドホンとしての基本的なスペックが優れていることに加え、こういった高音質コーデックに対応しているかどうかが大きなポイントになってくるわけだ。

ワイヤレス(無線)イヤホン&ヘッドホン選びの4つのコツ

❶用途をしっかり定めよう

まず大切なのが、自分の用途に合った機器選び。この分野でいま一番人気なのは、左右独立型の「完全ワイヤレスタイプ」と呼ばれるイヤホンだ。多くは充電機能搭載のケースとセットになっており、外出先でもかんたんに充電できる。「すぐに紛失しそうで心配」という向きには左右のイヤホンがケーブルでつながった「左右一体タイプ」という選択肢もある。「よりワイドレンジなサウンドを」という方にはワイヤレスヘッドホンがおすすめだ。

画像: SONY LinkBuds

SONY LinkBuds

❷格安で素晴らしい性能の製品を選ぶのは難しい

完全ワイヤレスタイプのイヤホンでも数千円で買えてしまう昨今。しかし、いくら安くて便利でも、本体にそれなりの物量が投入されていなければオーディオ機器として満足のいくサウンドは得られない。格安でも素晴らしい性能を備えた製品は存在するが、目安を挙げるのであれば、価格的にはワイヤレスイヤホンなら1万円以上、ワイヤレスヘッドホンなら2万円以上の製品が基本。その中から高音質で聴きたいなら対応コーデックの豊富な機種を、実用面で必要ならノイズキャンセリング機能や防水機能を持つ機種を選びたい。

画像: APPLE AirPods Max

APPLE AirPods Max

❸音質だけでなく通話性能にも注目したい

音楽の再生パフォーマンスだけでなく、通話性能にも注意したい。コロナ禍をきっかけにリモートによる会議や打合せ、あるいは授業、講義が一般化。こうした用途にむけてヘッドセットマイクなども普及しているが、音楽リスニング向けワイヤレスイヤホンにも最近は上質な通話用マイクが搭載された機種が多くなっている。また、ノイズキャンセリング機能の性能も通話時の相手の声の聞き取りやすさに大きく関わってくる重要なポイントだ。

画像: TECHNICS EAH-AZ60

TECHNICS EAH-AZ60

❹無線伝送方式の大枠は理解しておこう

iPhoneのBluetoothの対応コーデックは、現状SBCとAACのみ。Androidスマホは標準音質のSBCのほか、より高音質が期待できるaptX/aptX LL/aptX HD/LDACなどにも対応した機種が増えている。ただし、これらの高音質コーデックを利用するためには、スマホとイヤホン&ヘッドホンの両方がそのコーデックに対応している必要がある。たとえばイヤホンがLDAC対応でもスマホが非対応ならその恩恵にはあずかれないので注意したい。

画像: SHURE AONIC 50

SHURE AONIC 50

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