先日の「HiVi夏のベストバイ」選考締切日(4月下旬)までに画質が仕上がっていないということで投票できなかったTVS REGZAの4K有機ELテレビ「X9900L」シリーズ。レグザファンの筆者としてはたいへん残念だったが、この7月中旬、すでに発売済み(6月3日)の「55X9900L」のパフォーマンスをテストする機会を得たので、そのインプレッションをお伝えしたい。

“本来の美しい色合いを再現する”レグザ史上最高品質
4K有機ELレグザの新時代を拓く「X9900L」シリーズ

画像1: 息をのむほどの“華やかな色”と“品位のある映像”を両立し、しかも“音がいい”。レグザ「X9900Lシリーズ」は、高級大画面テレビをお求めの方に自信を持ってお勧めしたい【注目製品に肉薄 01】

●4K有機ELテレビ
65X9900L(市場想定価格¥500,000前後)、55X9900L(市場想定価格¥350,000前後)

画像: 4K有機ELレグザ「X9900L」と4K液晶レグザ「Z875L」シリーズに搭載されている「レグザエンジンZR α」。独自開発したAI機能を内蔵することで、より自然な奥行再現も実現している点が特長だ

4K有機ELレグザ「X9900L」と4K液晶レグザ「Z875L」シリーズに搭載されている「レグザエンジンZR α」。独自開発したAI機能を内蔵することで、より自然な奥行再現も実現している点が特長だ

画像: 最新有機ELパネルに、新開発された高冷却インナープレートとメタルバックカバーを組み合わせることで、従来モデルから輝度を約20%アップ。これにより明るく鮮やかで黒の締まった新次元の画質を獲得している

最新有機ELパネルに、新開発された高冷却インナープレートとメタルバックカバーを組み合わせることで、従来モデルから輝度を約20%アップ。これにより明るく鮮やかで黒の締まった新次元の画質を獲得している

 X9900Lシリーズの注目ポイントは大きくふたつある。ひとつは従来比約4倍の処理能力を誇る画像処理エンジン「レグザエンジンZR α」の採用による高画質化、もうひとつはレグザ初となる、アクチュエーターで画面を叩く「スクリーンスピーカー」の採用である。

 採用された有機ELパネルはLGディスプレイから供給された新世代タイプ。それにレグザ独自開発の高冷却インナープレートを組み合わせて大電流を振り込めるようにし、従来比約2割アップの高輝度を実現したという。

 AI技術をふんだんに盛り込んだ「ZR α」エンジンの威力を強く実感できるのは、水平解像度がフルHD(1920画素)に満たない1440画素の地デジや多くのBS放送、そして高圧縮低レートのネット動画だ。

 実際に画質モード「おまかせAI」で地デジやネット動画を見てみたが、その成果は歴然。とくに複数回の超解像処理と3次元NR処理を施す「地デジAIビューティZR α」の効果は見事だった。

 テロップ周辺のモスキートノイズや大面積の平坦部に乗るカラーノイズがすっと消える効果によって、画面全体の見通しが俄然よくなるし、超解像処理の巧さによって、精細感がぐんと上がって見えるのである。

 レグザの歴代モデルの放送波、とくに地デジ画質のよさは他社製品を圧倒していたが、ここにきていっそうの飛躍を遂げていることがよくわかった。

画像: レグザシリーズは地デジの高画質化にも長年取り組んでおり、X9900Lシリーズにはその最新版となる「地デジAIビューティZR α」が搭載されている。字幕テロップやワイズ内の人物なども自然に再現できるという

レグザシリーズは地デジの高画質化にも長年取り組んでおり、X9900Lシリーズにはその最新版となる「地デジAIビューティZR α」が搭載されている。字幕テロップやワイズ内の人物なども自然に再現できるという

 では、なぜレグザはここまで地デジ画質の向上に力を注ぐのだろうか。レグザの画質リーダーであるテレビ映像マイスタの住吉肇さんは言う。

 「テレビの第一義的な役割は放送番組を観ることにあると考えているからです。まず多くのユーザーが楽しんでいる地デジの画質がよくなければテレビとして落第でしょう。また、地デジやBSなどのMPEG2による1440×1080放送はネット動画等に比べて圧縮率が低く、原画解像度に戻せる痕跡が残っているんです。それを正しく甦らせるのは、われわれ画質エンジニアの責務だと思います」

 なるほど、これはストンと腑に落ちる発言だ。映画や音楽ソフトを愛好するAVファンでも、いちばん長い時間観ているのは放送番組だという人が案外多いのではないだろうか。そう考えると地上波やBSの画質がダメダメでは話にならないだろう。

 そういえば住吉さんは、画質に問題があると思われる地デジ番組に個別に高画質処理を加えてクラウドにアップして「おまかせAI」モード等に反映させる仕事を一人コツコツと続けているのだった。住吉さんは続ける。

 「とは言ってもテレビの役割は多様化していて、ネット動画がメインという若年層が増えている現実もあります。そこでX9900Lシリーズにおいては高圧縮のネット動画でもっとも気になるバンディングノイズ(階調段差)を目立たなくする『ネット動画AIビューティZR α』を投入しました」

画像: ネット動画では、平坦部分のバンディングノイズが目に付きやすい。「ネット動画AIビューティZR α」では被写体の精細感を保ちつつ、背景のノイズを抑える処理を実現している。取材時もYouTubeコンテンツで検証した

ネット動画では、平坦部分のバンディングノイズが目に付きやすい。「ネット動画AIビューティZR α」では被写体の精細感を保ちつつ、背景のノイズを抑える処理を実現している。取材時もYouTubeコンテンツで検証した

 実際に圧縮率の高いYouTubeの映像を「ネット動画AIビューティZR α」をオンにして観てみたが、なるほどYouTubeのほとんどのコンテンツで気になるバンディングノイズが目立たなくなる劇的な効果が実感できた。これはランダムなノイズを加えることで階調段差を目立たなくさせる誤差拡散処理ではなく、高度なフィルタリングで実現したバンディングノイズ対策だという。

 それからもうひとつ感心したのが「美肌AIフェイストーンZR α」の効能。コレが入ることで肌色のグリーン被りや黄味の強調が雲散霧消、じつにすっきりとした美しいフェイストーンが甦るのである。「女性肌色研究家」を自称するワタクシも、太鼓判を押す高画質回路だと断言します。

 まあいずれにしても、「おまかせAI」モードで観るX9900Lの放送番組&ネット動画画質は、わが国で流通している高級大画面テレビの中でナンバーワンであることは間違いない。まずここにかけがえのないレグザ の魅力があると言っていいだろう。

 続いて視聴室の照明を全部落とし、「映画プロ」モードでUHDブルーレイを何枚か観てみた。UHDブルーレイの映画ソフトは放送番組などに比べると断然S/Nがよいので、ここでは3次元処理をジャンプする「ピュアダイレクト」オンで観ることに。こうするとZR αの内部演算はフル12ビット/4:4:4処理となり、階調表現を始めとしてオーバーオールの画質向上が期待できる。

 まずはスピルバーグ監督の『ウェストサイド・ストーリー』、プエルトリコ系移民たちの群舞シーンを観てみた。

 「色の濃さ」のデフォルト値「0」では、彩度が少しあっさりする印象だったので、「+10」くらいまで色を乗せてみたが、原色で彩られた女性たちのドレスの色合いの豊かさ、その華やかさは息をのむほど。またノイズがまったく目立たず、その映像の見通しのよさも抜群だ。

画像: X9900Lのメニュー画面より。「ピュアダイレクト」をオンにすることで、入力信号をフル12ビット/4:4:4で処理できるようになる

X9900Lのメニュー画面より。「ピュアダイレクト」をオンにすることで、入力信号をフル12ビット/4:4:4で処理できるようになる

 また、このUHD ブルーレイを観て感心させられたのが、音質だ。

 本機は先述したように画面中央にアクチュエーターを1個配置して300Hz以上を受け持たせ、画面下部に2ウェイ・バスレフボックスのL/R スピーカーが、画面両サイドとトップの左右2ヵ所にトゥイーター、背面に200Hz以下を鳴らすサブウーファーが配置される本格仕様だ。

 アクチュエーターによる「スクリーンスピーカー」で声の主要帯域をカバーしているためだろう、画面に映し出されている人物がしゃべっている、歌っているというリアルな実感が得られるのだ。

 ぼくはAV再生でもっとも重要なポイントは、映像と音像位置の一致だと信じるが、それを大画面テレビで実現するには、スクリーンスピーカーによる「画面叩き」か、テレビ両サイドに単体スピーカーを置いてセンターチャンネル成分をファントム(虚像)定位させるしかないのである。

 また、緻密にスピーカーシステムを組み上げた本機のサウンドそのものがきわめて良質なことにも驚かされた。アクチュエーターでガラスパネルを叩くと、共振による雑音が乗ってクセっぽい音になるのでは? と予想してしまうが、そんな違和感はまったくない。加えて全帯域の音のつながりがきわめていいのである。

 また、セリフに適度な肉が付いていて音質面でも映像に負けないリアリティが付与されていることにも感心させられた。このへんには同社音響設計担当者の腕の冴えを実感する。

画像: X9900Lシリーズには、7chスピーカー+サブウーファーのスピーカーシステムが内蔵されている

X9900Lシリーズには、7chスピーカー+サブウーファーのスピーカーシステムが内蔵されている

 UHDブルーレイ『最後の決闘裁判』で感心したのが、高S/Nに裏打ちされた映像の品格の高さだった。まるでフェルメールの絵画が動き出したかのような美しい映像が続くが、馬小屋の中でヒロインが逆光で捉えられたシーンの階調情報の豊かさは信じられないほど。これはフル12ビット/4:4:4処理となる「ピュアダイレクト」オンの効能も大きいと思われる。

 “低コントラスト&高階調” の、再生が難しい映画ばかり撮るドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン/砂の惑星』の画質のよさにも唸らされた。

 薄暗い屋敷の中で、秘密結社ベネ・ゲセリットの教母モアヒム(シャーロット・ランプリング)が主人公のポール(ティモシー・シャラメ)をテストする場面を観たが、高精細デジタルカメラで撮影された素材をわざわざ35mmフィルムに変換したのち再びデジタル変換して4K DCPを制作したというだけあって、APL(平均輝度レベル)の低いその場面で細かなフィルムグレインを精密に描写しながら、黒い衣裳のモアヒムやポールを立体的に浮き上がらせるのである。

 この場面はほぼすべての最新大画面高級テレビでチェックしたが、X9900Lはそのトップを争う表現力と言っていいだろう。

 最後に観たUHDブルーレイの音楽ソフト『ザ・レイディ・イン・ザ・バルコニー/エリック・クラプトン』は画質もよかったが、何と言っても音が素晴らしかった。

 3種類ある音声ストリームの中からリニアPCM2.0chを選んで再生してみたが、ギターを弾きながら歌うクラプトンのヴォーカルがピタリと画面上に定位し、眼前で本当に歌っているかのようなイリュージョンを引き起こすのである。

画像: X9900Lシリーズのスピーカー。写真上段がトップ/サイド用トゥイーターで、中段両端がフロントL/Rユニット、真ん中はスクリーンスピーカー用のアクテュエーター。下段が背面中央に設置されたサブウーファー

X9900Lシリーズのスピーカー。写真上段がトップ/サイド用トゥイーターで、中段両端がフロントL/Rユニット、真ん中はスクリーンスピーカー用のアクテュエーター。下段が背面中央に設置されたサブウーファー

 また、ベースには適度な量感があり、ギターのアタックの表現も精妙。スティーヴ・ガッドのスネアのブラッシュ・ワークも生々しい。ほとんどのテレビ内蔵スピーカーではガサコソしたノイズにしか聞こえないブラッシュ・ワークが、本機はちゃんとブラシでスネアをこすっているリアリティが感じられるのである。

 ちょっと褒めすぎじゃ? と思われるかもしれないが、間違いなく本機の音はこんにちのテレビ内蔵スピーカーの中で最上クラスだと思う。

 前モデルからレグザは外部スピーカー端子を取り去ってしまって、個人的には残念な思いを抱いていたのだが、このレベルの音質が達成されているのなら、文句を言うのはやめようと思う。この音に不満なら外部アンプと外部スピーカーを組み合わせて本格AVシステムを組み上げればいいのだから。

 というわけで、大満足のパフォーマンスが得られた55X9900L。真摯に高画質ソフトと向き合いたいという方は「映画プロ」で、映像調整とかよくわからないけれど、地デジもネット動画も高画質・高音質で楽しみたいという方は「おまかせAI」で。

 高級大画面テレビをお求めのすべての方に、絶対の自信を持ってX9900Lをお勧めしたい。

液晶テレビの常識を打ち破るZ770Lの生々しい色表現力に、多くの人が驚くだろう。
2022年の薄型テレビは “美しい色” の再現がポイント!

画像2: 息をのむほどの“華やかな色”と“品位のある映像”を両立し、しかも“音がいい”。レグザ「X9900Lシリーズ」は、高級大画面テレビをお求めの方に自信を持ってお勧めしたい【注目製品に肉薄 01】

4K液晶レグザ
75Z770L(市場想定価格¥375,000前後)、65Z770L(市場想定価格¥310,000前後)、
55Z770L(市場想定価格¥255,000前後)

 今回の取材は、東京・多摩永山にあるTVS REGZAのR&Dセンターに出向いて行なったが、「量子ドット技術」を採用して色の魅力を訴求する4K液晶テレビの55型新製品「55Z770L」の試作機を同時にチェックする機会を得たので、そのインプレッションもお伝えしておきたい。

 液晶テレビの量子ドット技術は、同時発表されたレグザ「Z875L」「Z870L」シリーズやシャープ機、ソニー機など、すべてミニLEDバックライトとセットで採用されていたが、本機のバックライトは従来同様の大きさ、数のLEDを採用した直下型。それが「770L」「Z670L」シリーズのもっとも目新しいところだ。

画像: Z770Lのカットモデル。バックライトには通常サイズの青色LEDを使用し、その前面に量子ドットフィルターを取り付けている。これにより、純度の高い緑と赤の光を得ているという

Z770Lのカットモデル。バックライトには通常サイズの青色LEDを使用し、その前面に量子ドットフィルターを取り付けている。これにより、純度の高い緑と赤の光を得ているという

 表示パネルは広視野角タイプのIPS系。Z770LとZ670Lシリーズの違いは「タイムシフトマシン」の有り/無しだ(Z770Lが有り、Z670Lが無し)。

 まだ「あざやか」画質しか仕上がってしないということだったが、その色のインパクトは衝撃的だった。

 隣に昨年モデルの「65Z740XS」を置いて、カラフルなステージを収録した昨年の『NHK 紅白歌合戦』の4K放送エアチェックで見比べてみたのだが、発色のよさ、色合いの豊かさの違いは予想をはるかに上回るものだった。

画像: こちらはZ770Lシリーズの内蔵スピーカー。画面上部にトップトゥイーター(写真下段)を、下側両サイドに2ウェイスピーカー(写真左)を搭載する。右上側が背面に取り付けたサブウーファー

こちらはZ770Lシリーズの内蔵スピーカー。画面上部にトップトゥイーター(写真下段)を、下側両サイドに2ウェイスピーカー(写真左)を搭載する。右上側が背面に取り付けたサブウーファー

 ブルーLEDバックライトと広色域量子ドットを組み合わせた55Z770Lは、まるで自発光ディスプレイを見ているかのようなヴィヴィッドさと色のリッチネスを訴求する。見比べると従来タイプの65Z740XSはマットな質感で、色が褪せたかのような生気のなさを感じさせるのである。

 APL(平均輝度レベル)の低い場面での黒の黒らしさの表現や階調描写などをチェックすることはできなかったが、液晶テレビの常識を打ち破るZ770Lシリーズの生々しい色表現力に、多くの方がきっと驚かれるだろう。

 またミニLEDバックライトを採用していないので、価格面の魅力も大きいはず。Z770/Z670シリーズは、今年後半の大画面テレビ市場の台風の目になるのは間違いない。(山本浩司)

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