世界の液晶テレビ市場において、韓国サムスンに次ぐ市場シェアを誇るTCL。同社の最大の強みは、液晶パネル、LEDバックライトはもとより、本体キャビネット、スピーカーのドライバーユニットについても、自社グループ内で賄えること。テレビの主要な部品はほとんど自前で製造・調達することが可能で、新技術への取組みも実に意欲的だ。

 たとえば液晶パネルはTCL-CSOT(Shenzhen China Star Optoelectronics Technology/華星光電技術有限公司)で開発、製造を手がけるが、昨今、高級液晶の必須技術となりつつあるQuantum Dots(量子ドット。以下、QLED)技術をいち早く実用化。細かなLEDを多数配置し、きめ細かなローカルディミング(部分駆動)が可能なミニLEDとの合わせ技で、高輝度で色鮮やかな、高コントラスト映像を描き上げる。

 4Kチューナー内蔵の日本市場向け、最新の液晶テレビは4ラインナップ。QLED+ミニLEDの豪華共演は最高峰ラインC835(65/55インチ)限定だが、高級スタンダードラインのC735(75/65/55インチ)とスタンダードラインのC635(65/55/50/43インチ)についてもQLED仕様。エントリーラインのP735(75/65/55/50/43インチ)については白色LEDのノーマル仕様パネルとなるが、広色域対応としている。

 2022年のTCL製4K液晶テレビのもうひとつの大きな特徴は、全モデルがGoogle TV OS を採用していること。多彩なネット動画配信サービスに対応し、購入後でも「Google Playストアアプリ」からお目当てのアプリをダウンロードすれば、新たな動画サービスの視聴が可能だ。

 TCLとしては世界の市場を見据えた製品企画が必須となるわけで、当然ながら、ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズなどの名作、話題作が定額見放題となる「Disney+」や最新の話題作をいち早く配信(購入)し、独自コンテンツを積極的に提供する「Apple TV/Apple TV+」ともに対応済。加えて、Gyao!、ABEMA、U-NEXT、TVerなど、日本独自のサービスについてもしっかりとサポートしている。
 

4K LCD DISPLAY
TCL
55C835
オープン価格(実勢価格20万円前後)

● 型式:4K液晶パネル搭載ディスプレイ
● 搭載パネル:VA倍速液晶
● 解像度:水平3,840×垂直2,160画素
● バックライト:ローカルディミング対応直下型Mini-LED
● チューナー:地上デジタル×2、BS/CS110度×2、BS4K/CS4K×2
● 接続端子:HDMI入力3系統(eARC対応)、デジタル音声出力1系統(光)ほか
● HDR対応:HDR10、HLG、ドルビービジョン
● 寸法/質量:W1,226×H789×D280mm/18.7kg
● 問合せ先:(株)TCLジャパンエレクトロニクス TEL.0120-955-517

 

 

 

昨年モデルよりも明るさが30%以上向上

 今回はQLEDとミニLED搭載のトップラインの55インチ機55C835を詳しく紹介していくことにしよう。QLEDは光の波長変換によって、より効率的にRGBの発色を確保するというもの。一般的に広く使われている白色LEDに比べて、光のロスが少なく、明るさ、色域ともに有利になる。

 TCLによると4K/8K放送やUHDブルーレイで採用された広色域規格BT2020のカバー率は約80%。ちなみに通常の白色LEDの場合、同70〜75%と言われている。

 ミニLEDは、ミクロンサイズの小型LEDを透明度の高いガラス基板に数千個並べて、バックライトを構成するという技術。プリント回路基板に配置する通常のLEDに対して、各光源の受け持ちエリアが狭くなるため高輝度化が可能で、パネルの薄型化でも有利だ。

 もっとも注目されるのが、絵柄に応じてLEDの光量を制御し、高コントラスト化を図る部分駆動との相性が抜群にいいことだ。通常のLEDバックライトの数は数百個、分割エリア数も数十というケースが多いが、ミニLEDではその数は数千個、分割エリアも数百となり、その分解能は飛躍的に向上する。

 ちなみに55C835の場合、ミニLED+QLEDを採用した昨年モデル55C825に対して、分割エリア数は80%以上増加し、輝度についても30%以上アップしているという。

 この最先端の液晶パネルの持ち味を引き出す映像エンジンは、同社としては最高グレードの「AlgoエンジンMAX」。その詳細は明らかにされていないが、文字周辺やエッジ部のノイズ処理をはじめ、黒挿入による残像の低減、広色域パネルの持ち味を引き出す精緻なカラーマネージメントなど、高度な画像処理技術を積極的に導入。4Kへとアップスケーリング処理でも、精細感を復元する超解像処理が行なわれているという。

 

あるがままのタッチが印象的。コントラストも安定している

 早速、ネットフリックスやUHDブルーレイなどの4K動画を中心に、その実力を検証していくことにしよう。

 まずネットフリックスの4Kドラマのチェック。1960年代、チェスの天才少女がスターダムに駆け上がるまでの苦難の道を描いた『クイーンズ・ギャンビット』(4K&ドルビービジョン映像)を再生。ここでは映像モード「薄暗い動画」を選び、主演アニャ・テイラー=ジョイが演じるベスのフェイストーンや髪、ファッションに注目したが、これがなかなか味わい深い。

 まず役柄もあって、表情の変化は少なく、わずかに赤みを帯びたフェイストーンが安定しているのが印象的だ。リップは真っ赤ではなく、薄い橙色、あるいは時折、やや暗めの紅色を使っている。髪の毛はやや赤みを帯びた色調ながら、落ち着いたトーンで、派手な印象はない。このあたりの微妙なトーンの描き分けるという表現は、テレビにとって簡単ではないが、この55C835は派手すぎず、だが抑えすぎず、淡々とあるがままに描き出していく。広色域パネル採用の液晶テレビの場合、赤や緑が強調されるケースが少なくないが、そうしたクセっぽさはなく、ふんわりと柔らかな描写が好印象だ。

 もうひとつ感心させられたのは、コントラスト感が安定していることだ。ミニLEDによる部分駆動は液晶のコントラスト改善に効果的だが、反面、一般的なバックライトよりも緻密な制御が不可欠。少しでも映像とのズレが生じると、不自然な浮き沈みが生じやすいという難しさがあるが、55C835ではそうした不安はほとんど感じさせない。

 黒を締めて、ハイライトを気持ちよく伸ばすという高コントラスト調の絵づくりが終始貫かれ、明暗の差が大きいシーンチェンジでも、明るさがふらつくことがない。テレビにとっては基本中の基本だが、この安定感は高く評価できる。

 

画像2: 進化したMini LED+QLED液晶!TCLから2022年同社最高峰テレビ「55C835」登場

リモコンの「ホーム」ボタンを押すと、テレビ内蔵のスマート機能が活用できる。最新のスマートテレビプラットホーム、Google TVを搭載。多彩な機能がアプリというカタチでインストールできる。Netflix、Amazon Prime Video、YouTube、Hulu、ABEMA、U-NEXTなど従来から対応済だったサービスに加えて、Disney+、Apple TVもサポートしたのがトピックだ

 

十字ボタンを中心にさまざまな機能が用途別にまとめられた付属リモコン。「Google Assistant」ボタンの右に「ホーム」ボタンが配置されている

 

 

メリハリが効きつつ重みのあるフィルムルック映像は見応えあり

 続いてパナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1で再生したUHDブルーレイ『ダンケルク』(4K&HDR10)を「映画」モードで再生。フィルム映像に通じる高コントラスト調の階調、深みのある色遣いが特徴的の作品だが、55C835はその持ち味を存分に引き出す。メリハリの効いた画調をベースに、そこに深い色がしっかりと染み込むような再現で、特に迷彩服の深いグリーンの描写が印象的だ。時折、ハイライトが飛び気味になり、黒の引き込みが強く感じられるが、これはもともとのグレーディングの仕上がりによるところが大きく、深みのある発色とのバランスは良好。重みのあるフィルムルックの映像は見応えがあった。

 NHK BS4Kで放送された『浮世の画家』のHLG映像を「映画」モードで再生してみたが、黒を締めながらも明るく、質感や風合いをていねいに描き出すという基本的な画質の特徴は、ドルビービジョンやHDR10を引き継いでいる。黒の締まりやハイライトの伸び、色付きなど、ややフィルムトーンが感じられたが、全体のバランスを崩すほどではなく、フェイスストーンも安定していた。

 音づくりは必要以上に帯域、空間の広さを求めず、人の声を歪みなく、クリアーに再現するという正攻法の仕上がりだ。主役の渡辺謙と娘役の広末涼子と前田亜季、そして渡辺の元を訪ねる孫役の寺田心と、性別/年齢を問わず、声の明瞭度が高く、聴きやすい。フルレンジのメインスピーカーは下向きに設置されているため、音は画面下方向から聴こえるが、アコースティック面の工夫の効果なのか、無理なくリフトアップされて、違和感が少ない。ちなみにスピーカーシステムはフルレンジユニット(アンプ出力10W+10W)に、サブウーファー(同20W)を加えた2.1ch構成で、サブウーファーは画面後ろ、ほぼ中央に配置している。ドルビーアトモス再生にも対応している。

 昨今、にわかに注目度を増している高級液晶テレビ市場に現れた新星。その動向に注目したい。

 

画像4: 進化したMini LED+QLED液晶!TCLから2022年同社最高峰テレビ「55C835」登場

ドルビーアトモス対応サウンドシステムを搭載。本体背面中央にはサブウーファーを配置している

本体向かって右側面にアンテナ入力を含む接続端子を配置している。HDMIは4K/60p入力対応を3端子装備、そのうち1系統がeARC(エンハンスド・オーディオ・リターン・チャンネル)をサポートしている。電源インレットは本体向かって左側面に備わる

 

画像6: 進化したMini LED+QLED液晶!TCLから2022年同社最高峰テレビ「55C835」登場

※全機種Google TV、HDR(HDR10、HLG、ドルビービジョン)、ドルビーアトモス対応、
地上デジタル/BS、110度CS/BS4K、110度CSチュナー各2系統搭載、Wi-Fi(2.4GHz/5GHz)

 

︎TCLの新ラインナップはMini LED+QLED液晶搭載のC835ラインを筆頭に、QLED搭載の倍速モデルC735ライン、QLED搭載のC635、エントリーのP735ラインまで、4ライン14モデルとなる。写真はC735ラインの75インチ機(75C735)

 

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