これがサウンドバーの新基準

 近年のサウンドバー市場の盛り上がりから感じるのは、「いい音で映画や音楽の映像を楽しみたい」という人はとても多いということ。この事実は、本誌読者の皆さんのような、すでに(これから)良質なビジュアル環境を探求している方へも心強いメッセージになっているかと思う。

 オーディオ執筆畑出身の筆者にも、ウェブメディア等からサウンドバーの執筆依頼が増えており、昨年から今年にかけ多くのモデルを聴いてきた。

 そこで感じたのは、ドルビーアトモスなどのイマーシブサウンドや多彩なサウンドモードに対応するなど、高機能化が顕著なことだった

 しかし、そろそろ、リビングのインテリアやテレビ周りの空間に溶け込む、より品位の高いデザインや、私たちコアなオーディオ/オーディオビジュアルファンが体験しているようなアキュレイトな音質の一端が聴ける、「価格は高くても本質的な価値を持った製品」が必要とされているな、とも感じていた。

 このような中、イギリスの高級スピーカーブランドBowers & Wilkins(B&W)から、Panorama 3が登場した。

 

画像1: 映画にも音楽にも本気で向き合えるワンボディの逸品!Bowers & Wilkins「Panorama 3」

Bowers & Wilkins
Panorama 3

¥159,500 税込
● 型式:ドルビーアトモス対応3.1.2サウンドバー
● 接続端子:eARC/ARC対応HDMI 1系統、デジタル音声入力1系統(光)、LAN1系統、他
● 使用ユニット19mmドーム型トゥイーター×3、50mmコーン型ミッドレンジ×6、100mmコーン型ウーファー×2、ドルビーアトモス用50mmコーン型ユニット×2
● 寸法・質量:W1,210×H65×D140mm/6.5kg
● 備考:Bluetooth、Alexa Built-in、Amazon Music(Alexa Cast)、Spotify Connect、AirPlay 2対応
● Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、aptX Adaptive
● 問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センター ☎ 0570(666)112

 

 

 

B&Wのサウンドバーとして初のドルビーアトモス対応

 同社のハイエンドスピーカー800 Series Diamondを手掛けた音響エンジニアリングチームが音質監修を担当し、B&Wのサウンドバーとして初めてドルビーアトモスに対応、定額制音楽ストリーミングサービスにもB&Wクォリティの音質で楽しむことができるという。まさに前述した僕の希望を具現化したサウンドバーかもしれない。これは期待できそうである。

 Panorama 3はその名の通り、同名製品の3世代目となるモデルだ。2009年には初代Panoramaが登場、続く2013年には、日本では取り扱いがなかったものの、2代目となるPanorama 2が発表されている。そして第3世代となった本モデルは、デザインから音質面まで各所が進化している。

 まずは外観からみてみよう。筐体寸法は、幅1210mm、高さ65 mm、奥行140mm。この数値は同社の歴代サウンドバーの中でもっともスリムだ。

 PanoramaとPanorama 2や、先だって発売されたフォーメーションシリーズに属するFormation Barでは、流線型の特徴的なフォルムを採用していた。対する、Panorama3は、直線的なデザインを採用することで、テレビ周りやインテリアと調和し、テレビ視聴時は脇役に徹するデザインコンセプトのように見える。

 

合計13ユニットによる豪華な3.1.2スピーカー

 さらにディテイルを見ていくと、ファブリック、パンチングメタル、ガラス等のマテリアルを上手に使い分けられており、ビルドクォリティが高いではないか。

 また、特にキャビネットの全高が抑えられているのが特徴だが、実はこれが第3世代として開発時に求められた大きな要素。薄型ベゼルでフットが低いテレビが増えたという最近の事情に対応したのだ。それを実現するために、合計13基と大変豪華なスピーカーのユニット構成を持ち、高さを抑えるためにそれらをラインアレイ配置にする選択をしている。

 そのスピーカー構成については、フロントが2ウェイのL/R/センター、天井を向くイネーブルドスピーカーとサブウーファーの構成で、アンプの合計出力は400W。

 サブウーファーは2基の100mmユニットを搭載し、それぞれを40Wのアンプで駆動する。ミッドレンジは50 mmのグラスファイバーユニットをL/R/センターに各2基搭載し、それぞれ40Wのアンプで駆動する。トゥイーターは19mmのチタンドームユニットをL/R/センターに各1基採用し、それぞれを40Wアンプで駆動する。

 ここでの注目点は、トゥイーターをエンクロージャーから完全にデカップリングされた状態で搭載して、不要振動の伝播を抑制していること。そして搭載されるドライバーは、情報量の多さや解像度の高さを実現するために、すべて真円形を採用していることだ。同社によると、多くのサウンドバーで採用される楕円形の振動板は、面積が大きく音圧を稼ぎやすい反面、正確にピストンモーションさせることが難しく、歪みが増えるという。さらに、コストを度外視して、フロントL/Rとセンターでミッドレンジドライバーを合計6基使用しているところもポイントだ。

 イネーブルドスピーカーについては、50mmユニット2基が角度と配置を最適化した状態で上面に設置される。対応する音声フォーマットは、ドルビーアトモスのほか、ドルビートゥルーHD、ドルビーデジタル、リニアPCMとなる。そして、これら合計13基のスピーカーユニットを使用した3.1.2構成による再生を可能としているのだ。

 

画像2: 映画にも音楽にも本気で向き合えるワンボディの逸品!Bowers & Wilkins「Panorama 3」

本体を上からのぞくと、ユニットが透けて見える。外側(端)に角度をつけて設置されているのがイネーブルドスピーカーで、内側が100mm径のウーファーユニット。その他のユニットは前向きに取り付けられている

 

画像3: 映画にも音楽にも本気で向き合えるワンボディの逸品!Bowers & Wilkins「Panorama 3」

接続端子はいたってシンプル。テレビとeARC/ARC対応のHDMI端子をつないで使うのが一般的と言える。音楽はSpotify ConnectやAirPlay2、Bluetooth接続で、という使い方が想定されるほか、テレビのアプリで音楽再生する方法もあり得るだろう

 

 

Spotify ConnectやAirPlay2など音楽ストリーミング対応も充実

 インターフェイスについては、eARC/ARC対応のHDMIポートが1系統、光デジタル入力が1系統、RJ45有線LAN端子を搭載、Wi-Fi接続にも対応している。

 ブルートゥースのコーデックはSBC/AACに加えてaptx Adaptiveに対応する。本コーデックは、圧縮ながら96kHz/24ビット伝送の対応と低遅延が特徴で、本機は48kHz/24ビット伝送に対応。クアルコム社「Snapdragon 865」以降のSoCチップを搭載するAndroidスマホの多くで、この機能を利用できる。

 また、iOSやAndroidデバイスにインストール可能な操作アプリ「Music|Bowers & Wilkins」を利用して、Deezer、SoundCloud、TuneInなどの音楽ストリーミングサービス、さらにアップルの「AirPlay 2」のほか「Spotify Connect」やAlexa Castによる「Amazon Music」の再生を可能としている。サウンドバー本体だけで、本格的なネットワークオーディオ再生が可能なことはPanorama3のアドバンテージといえるだろう。

 

↑「Music|Bowers & Wilkins」アプリからは、さまざまな音楽ストリーミングサービスの再生が可能。Spotify Connectで音楽を再生したところ。写真のように、本アプリからもステータスの確認が可能だ。なお、「利用可能なサービスは順次追加」されるとのこと

↑ハイファイを志向するならば、今のところ「Deezer Hi-Fi」が有力だ。その他、Alexa(アレクサ)およびAlexa Castに対応。音声での指示により、Amazon Musicにアクセスできる

 

 

アップデートにも期待大
Panorama 3での音楽ストリーミング

 Panorama 3は複数の音楽ストリーミングサービスに対応している。世界的にはAACなどの圧縮フォーマットから192kHz/24ビットのFLACまで、レゾリューションやフォーマットの違う多くのサービスが立ち上がっており、どのサービスを選ぶのか? については大きな悩みどころ。

 Panorama 3を使い、記事執筆時点で日本国内で契約可能という条件でもっともレゾリューションが高いのは、フランス発の「Deezer Hi-Fi」だ。本サービスはCDクォリティの44.1kHz/16ビットロスレスフォーマットを採用し、9000万曲もの楽曲が聴取可能。サウンドバー本体だけで本格的なネットワーク再生が楽しめることは、Panorama 3の大きなアドバンテージと言えるだろう。また、オンラインアップデート機能により、将来日本で始まるはずの、TIDAL等の新サービスへの対応も期待できる。(土方)

 

 

誇張感のないナチュラルな表現で高さ方向の表現能力も高い

 クォリティチェックはHiVi視聴室で実施した。今回はソニーの65インチ有機ELテレビXRJ65A90Jと組み合わせたが、品位が高くシンプルなデザインはテレビおよびローボードとの視覚的な収まりがいい。

 

画像8: 映画にも音楽にも本気で向き合えるワンボディの逸品!Bowers & Wilkins「Panorama 3」

視聴時に組み合わせたのはソニーの65型有機ELテレビXRJ-65A90J。Panorama 3の高さは65mmに抑えられているため、脚の下にスッキリと収まる。映画コンテンツの再生はテレビのアプリから行なうことを基本とし、eARC/ARC対応のHDMI端子からの音声入力を利用している。テレビとHDMIケーブルをつなぐだけでシステムが完成する、この簡潔さがPanorama 3の特徴のひとつだ。UHDブルーレイなどを再生したい場合は、プレーヤー/レコーダーをテレビとHDMI接続し、やはりeARC/ARC端子を利用するのがいいだろう

 

 

 接続はシンプルで、今回はXRJ65A90JとPanorama3をHDMIケーブルでつなぎ、テレビの音声出力設定を「外部スピーカー」に設定した。

 ただし、本モデルはこれだけでは音が出ないことに注意していただきたい。iPhoneなどに操作アプリ「Music|Bowers & Wilkins」をインストールして初期設定を行なう必要があるのだ。アプリは対話式メニューを採用していることもあり、設定自体はスムーズだが、HDMIケーブルを接続した時点でテレビからの音声出力には対応して欲しいところ。ここは本モデルへの数少ない改善を要求したい点だ。

 

初期設定は専用アプリで

Panorama 3を初めて使う際には、iOS/Android対応の無料アプリ「Music|Bowers & Wilkins」での初期設定が必須。eARC/ARC経由での利用がメインであればアプリの使用頻度は高くならないだろう。いわゆる音声モードは持たず、高域/低域の調整項目のみ用意されている

 

 

 まずはXRJ65A90JにインストールされたApple TVのアプリを立ち上げ、5.1ch音声仕様の『TENET テネット』の冒頭、オペラハウス襲撃シーンを再生した。

 一聴して帯域バランスはナチュラルで、質感表現がソースに対してアキュレイトな音だ。セリフのディテイルがかなり明瞭で、音像が前方に飛び出してくる。音場表現については、派手で無闇な広がりではなく、画面を中心に横幅や高さが認識できる立体的なステージが画面前方に形成される。

 低音域は大型のサブウーファーのような音圧は出ないが、誇張のないリアルな表現で、今まで聴いたサウンドバーとしては最良ともいえる表現力。バスレフで低域の量感を稼がず、エンクロージャー容積のほとんどを専用の空気室に割り当てられた密閉型の100mmサブウーファー2基を使うことで、量感と43 Hzまで伸びる深い低音を再現している。

 続いてイネーブルドスピーカーの対応力を試すべく、同じくApple TVからドルビーアトモス音声の『フォード vs フェラーリ』冒頭のレースシーンを再生する。アスファルトを擦るタイヤのスキール音、エグゾーストノート、エンジンノイズまでリアルな質感表現が聞き取れるが、この理由は、巧みなエンクロージャー設計と、そこから物理的に切り離して設置されたトゥイーターにあるのだろう。トゥイーターがウーファーなどからの振動を避けられて、音のディテイルが濁らないのだ。

 映画中盤の、飛行機が前方から後方へ飛び去るシーンでは、頭上前方までプロペラの音が聞こえてくる上方の移動感も予想以上にしっかり描かれ、おおいに感心した。イネーブルドスピーカーによる高さ方向のサウンドの再生能力も高い。

 

音楽の小音量再生でもわかるチューニングの巧み

 Panorama 3は一般的なサウンドバーに備わる、「音楽」「映画」などのサウンドモードやサラウンドモードの切り替えは搭載していない。しかし、この音を聴けば納得だ。厳密に音をチューニングしているために、それを必要としないのだ。

 考えてみると、本誌でよく視聴するテレビと一般的なステレオアンプ、2chスピーカーを組み合わせたシステムでも、当然サウンドモードなどは存在しない。それと同じことなのだろう。

 最後はSpotifyから音楽再生を試してみる。ジョン・ウィリアムズがベルリン・フィルを指揮した『ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ベルリン』から「スーパーマンのテーマ」は、楽器の質感表現がナチュラルで、誇張がなく低域が破綻していない。小音量位の音痩せも最小限に抑えられている。ステレオ再生時でも上手にサウンドステージを作っている印象だ。

 操作性については、テレビのリモコンを使ってテレビの電源オン/オフの連動やPanorama 3の音量調整も可能と使いやすかった。また、本体上面の中央には人感センサーと静電容量式タッチボタンが仕込まれており、手をかざすとバックライトが点灯するギミックも備わる。なお、今回は試さなかったが、音声アシスタント「Alexa Built-in」にも対応している。

 いかがだったろうか? B&Wが本気で作ったサウンドバーは、映像作品や音楽を、B&Wサウンドで、誰でも簡単に楽しめることが最大のポイントだ。映像/音声ソースに含まれる音の情報を、ワンボディで表現する逸品で、世の中の多々あるサウンドバーの枠から一歩踏み出した価値ある1台である。

 

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