曲線を描くエンクロージャーに静電式トゥイーターを搭載したDM70、クラシックのレコーディングスタジオの標準的なスピーカーとして採用されたMatrix801シリーズ、そしてハイテク技術を結集して仕上げられたNautilusと、数多くの伝説的名機を送り出してきたイギリスのスピーカーブランド、Bowers & Wilkins(以下、B&W)。

 ビートルズをはじめ、クリフ・リチャード、ピンク・フロイドといったビッグネームからも重用されたアビイロード・スタジオでも、1988年以降、同社のスピーカーシステムが採用され続けている。輝かしい歴史と伝統を誇るスピーカーメーカー、B&Wが、次世代のオーディオシステムとして提案するのが「Formation Suite(フォーメーション・スイート)」シリーズだ。基本コンセプトは「B&Wのサウンドクォリティをワイヤレスで実現する」こと。

 その実現に向けて開発されたのが、独自の「Formationワイヤレス mesh テクノロジー」だ。これは複数スピーカーを使った際に使われる独自の通信方式で、Wi-Fiルーターを介すことなく、対応モデル同士が直接通信を行ない、96kHz/24ビットの信号伝送が可能。1μ秒(100万分の1秒!)の誤差範囲で各スピーカーを同期できるという技術だ。

 aptX HD対応のBluetoothやAirPlay 2、あるいはRoon Readyにもサポート済。専用操作アプリ「Bowers & Wilkins Music」をインストールしたスマホやタブレットからスピーカーの細かな設定や再生の指示が行なえる。

 この春、一挙4モデルが発表されたが、今回は単独使用の他に、2台使用によるステレオ再生も可能なFormation Flexと、左右独立タイプのスピーカーシステムFormation Duoを紹介していく。

 

小さいけれど上質な音が魅力。B&Wらしさに溢れた「Flex」

 

WIRELESS SPEAKER SYSTEM
Formation Flex
¥77,000(1台)税込 ※今回は2台で試聴

● 型式:ネットワーク再生機能搭載アンプ内蔵スピーカー
● 使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、100mmコーン型ウーファー
● アンプ出力:50W×2
● Bluetoothバージョン:4.1
● Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、aptX HD
● 接続端子:LAN端子、ほか 
● 寸法/質量:W130×H215×D130mm/2.3kg
● 備考:Wi-Fi対応。AirPlay2、Spotify Connect、Roon Ready対応。2台使いあるいはシリーズの「Formation Bar」と組み合わせてワイヤレスサラウンドへの展開も可能
● オプション:専用スタンド(Formation Flex Floor Stand。¥14,300 税込)あり

● 問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオ
 お客様相談センター TEL.0570(666)112

画像2: 上質で快適。そして高音質。これぞ新時代オーディオの大本命!Bowers & Wilkins「Formation Flex」「Formation Duo」【スマホで始めるオーディオ&ネット動画】

天面はタッチセンサー式のボタンが配されている。再生ボタンの上のマーク(Formボタン)は機器の状況を示すために、さまざまな色に変化する

 

 

 まず可愛らしいワイヤレススピーカーFormation Flexだが、片手で無理なく持てるほどの大きさで、天板ガラス、ベース部分のアルミ、そして全体を覆い包む上質なファブリックと、仕上げのよさが実感できる。

 B&Wのスタンダードラインとなる600 Seriesで採用している25mmトゥイーター(高域ユニット)と、100mmウォーブン・グラスファイバー・コーンウーファー(低域ユニット)による2ウェイ構成で、各ユニットに50W出力のパワーアンプを配置したバイアンプ駆動としている。

 1台単独での使用や2台によるステレオ再生に加えて、シリーズのサウンドバーFormation Barとの組合せで、ワイヤレス接続のサラウンドスピーカーとして用いることが可能。本格的なサラウンドシステムへ拡張できるというわけだ。

 アナログ、デジタルともに外部入力はないが、Wi-Fi対応で、有線LAN端子も装備しており、前述の通りaptX HD対応Bluetoothの受信が可能。

 今回は2台使いによるステレオ再生を中心にチェックした。まず、Android OS 11をインストールしたAndroidスマホでaptX HDによるBluetooth接続でAmazon Musicのハイレゾ音源を選択。リンダ・ロンシュタット「Desperado」(96kHz/24ビット/FLAC)を聴いたが、きめ細かく澄んだサウンドが新鮮で、声も開放的でありながら、荒っぽさがない。ストレスなく拡がっていく豊かな響きと余韻が、実に心地いい。

 AirPlay再生の実力を試すべく、スマホをiPhoneに変えて、Apple Musicで竹内まりやの「プラスティック・ラブ」(48kHz/24ビット/ALAC)を再生。歌声はフレッシュで、艶やか。大人っぽさを感じさせる、抑えの効いた再現性で、口の動きが感じとれるほどニュアンスが豊かだ。贅肉を削ぎ落としたかのような引き締まった低音の質感のよさが印象的だった。

 そしてSpotify Connectによる再生は、楽曲の指定、曲送り/戻しと、実に素早く、快適だ。ドゥービー・ブラザーズ7枚目のスタジオ・アルバム『運命の掟』での再生は、ロッシー音源だからなのか、空間の拡がりはやや抑えられる傾向だが、音像の骨格をはっきりと感じさせる引き締まった低音は健在で、その小気味のいいリズム感が清々しい。艶っぽい歌声といい、空間に漂うように拡がるピアノの響きといい、その表現力はハイファイオーディオならでは。品位感の高さを素直に感じさせる聴かせ方は、間違いなくB&Wの伝統である。

 

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今回は①Amazon Musicを音源に、AndroidスマホからのaptX HDによるBluetooth再生と、②Apple MusicをiPhoneでAirPlay再生、③Spotifyをスマホから再生指示を出して再生するSpotify Connectの3パターンを試した

 

「Formation」シリーズを使うには、まずスマホあるいはタブレット用のアプリ「Bowers & Wilkins Music」から、アカウントを作成し、製品を初期設定していく流れだ。設定画面は対話式でわかりやすい

 

Formation Flex2台をペアリング設定中の画面。左右の入れ替えやイコライジングなどもアプリから可能となる

 

アプリ上で新しい「Formation」シリーズ製品が認識されると、画面のようにセットアップが促される。機器のステータスを確認しながらの操作となる

 

今回の取材ではFormation Flex2台とFormation Duo2台の4スピーカーをひとつの空間(このアプリでは再生場所を「空間」という概念で管理している)で再生したため、「あなたの空間」に、DuoとFlexがそれぞれ2デバイスずつ認識されている

 

 

アンプ内蔵の優位性を追求。驚異の音質を実現した「Duo」

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WIRELESS SPEAKER SYSTEM
Formation Duo
¥495,000 (ペア)税込

● 型式:ネットワーク再生機能搭載アンプ内蔵スピーカー
● 使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、165mmコーン型ウーファー
● アンプ出力:125W×2
● Bluetoothバージョン:4.1
● Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、aptX HD
● 接続端子:LAN端子、ほか
● 寸法/質量:W197×H395×D305mm/10.6kg
● 備考:Wi-Fi対応。AirPlay 2、Spotify Connect、Roon Ready対応
● オプション:専用スタンド(Formation Duo Floor Stand。¥99,000ペア 税込)あり

 

Formation Duoの底板には、電源とLAN端子、サービス用端子だけと実にシンプル。Wi-Fi接続を利用すれば、スピーカーは電源ケーブルだけをつなげばよいという簡潔さだ

 

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本体はマット調、高域ユニットを収めた部分はグロス調に仕上げられている。フィニッシュの上質さが写真で伝わるだろうか。高域ユニットをベースキャビネットから独立させた独特のスタイルこそ、「トゥイーター・オン・トップ」構造という、B&W製ハイグレードモデルの象徴だ。できるだけ本体に干渉させずにスムーズに音を広げつつ、低域の振動からの影響を抑えるための仕組みである。低域には800 Series Diamondという同ブランド最上位グレード品と同じ「コンティニュアム・コーン」を採用している

 

 続いて2ウェイ・ブックシェルフタイプのFormation Duo。「トゥイーター・オン・トップ」構造のカーボン・ドームドライバー(高域ユニット)やコンティニュアム・コーンのウーファー(低域ユニット)など、B&Wの最高峰800 Seriesで培った技術を積極的に取り入れた注目作だ。スピーカーのそれぞれの内部に、最大出力125WのクラスDアンプを2基内蔵し、それぞれのユニットを個別のアンプで駆動。入出力端子は、Formation Flexと同一だ。

 Apple Musicでイーグルスの名盤『Hotel California』の最終曲「THE LAST RESORT」(192kHz/24ビット/ALAC音源)をAirPlayで再生してみると、落ち着きのある素朴な音調で、音の立ち上がりが素早い。しなやかに弾み、軽やかに空間に拡がっていくベース音の響きが、実に新鮮。フワッとした強い圧で押し込んでくるような低音と、頰をやさしく撫上げていくような清々しい高音の共演はやはりただ者ではない。

 ビリー・ジョエル『The Stranger』からオープニング曲「Movin' Out(Anthony's Song)」(88kHz/24ビット/ALAC音源)は輪郭を際立たせるようなことはせずに、厚みのある面で音楽を構築していくようなイメージ。とはいえ、ここぞという場面では、曖昧さのない低音を力強く絞り出し、しかも瞬時に立ち上がる。音の粒子感が鮮明に浮き上がり、質感が細やか。優しくおおらか。それでいて堂々とした風格を感じさせるサウンドを満喫できた。

 ここまで聴いてきて感じるのは、アンプを内蔵していることの優位性だ。完全一体型で音楽ストリーミングサービスの再生あるいはRoonを用いたネットワーク再生まで対応できるのはアクティブ型ならでは。音質的にもそのスピーカーに特化した専用のパワーアンプを装備し、しかもバイアンプ駆動できる恩恵は計り知れない。

 Formation Duoの躍動感に富んだ上質なサウンドは、まさにアクティブ型の賜物。もしこのスピーカーが一般的なパッシブモデルなら、外付けのアンプが必要になるが、このDuoと同等に鳴らすには、アンプには少なくとも50万円前後の出費は覚悟しなければならないだろう。

 デザイン、仕上がりのスマートさ、システムとしての先進性、そしてサウンドクォリティを考えると割安感さえ覚えるFormation FlexとDuo。新しい時代の高級オーディオの本命と断言できる。

 

Formation Duoは、Apple Musicを音源にして、iPhoneからのAirPlay接続を主に試した。それ以外にも、図や本文では触れていないが、「Roon(ルーン)」という新発想のネットワーク再生方式でのハイレゾ再生もチェックしている。こちらは「Roonコア」という管理用アプリを動かすパソコンなどが必要になるが、TIDALやQobuzなどの海外でサービス中の高音質音楽サブスクが利用でき、本製品群の高度な性能がフルに享受できる。現時点では、再生環境を整えるのはややハードルが高いが「Formation」シリーズを導入するのであれば、ぜひ注目したい再生方法だ

 

 

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