D/Aコンバーターに求められる機能は、10年ほど前と現在とでは大きく様変わりした。いうまでもなく、ハイレゾやストリーミング対応である。背面パネルを眺めれば、見慣れた同軸や光端子の他にイーサネットやUSB端子が備わっており、仕様によってはブルートゥースアンテナまで装備されている製品もある。つまり、より多機能になっているわけだ。

 そうした要件をほぼ網羅し、時代の先端をいくモデルといってよいのが、ルーミンP1である。本機は前述した以外にも、ネットワークトランスポートとしての側面やプリアンプとしても活用できる。それらハンドリングは別の機会に譲るとして、今回私に課せられた役目は、P1のネットワークD/Aコンバーターとしての性能と使い勝手を精査することだ。

画像: 【LUMIN P1徹底研究 ネットワークDAC音質編】ネットワーク時代に万全対応。最前線のパフォーマンスを実感

NETWORK PLAYER / CONTROL AMPLIFIER
P1
¥1,863,400 税込(ブラック仕上げ)、¥1,694,000 税込(シルバー仕上げ)

●接続端子:デジタル音声入力5系統(同軸×1、光×1、AES/EBU×1、USBタイプA×1、USBタイプB×1)、アナログ音声入力2系統(RCA×1、XLR×1)、LAN2系統(RJ45×1、SFP×1)、アナログ音声出力2系統(RCA×1、XLR×1)、デジタル音声出力1系統(BNC)、HDMI入力3系統、HDMI出力1系統(ARC対応)
●対応プロトコル:UPnP(OpenHome)、Roon Ready、Spotify Connect、AirPlay Compatible、On-Device Playlist
●対応ストリーミングサービス:TIDAL、Qobuz、Spotify 
●寸法/質量:W350×H107×D380mm/12kg
●備考:バランス入出力HOT=2番ピン 
●問合せ先:㈱ブライトーン TEL.03(6869)0516

 まずは概要から。内蔵DACチップは、ESSテクノロジー「SABRE」ES9028PROをデュアルモノで搭載。DSD22.5M㎐、または最大768kHz/32ビット(ネットワーク再生は384kHzまで)のPCMに対応し、さらにMQAもフルスペックデコードをサポートしている。他方、アップサンプリング機能も備え、すべての入力信号をDSD5.6M㎐および384kHz/24ビットにアップコンバート再生することも可能。FPGAを駆使したフェムトクロックシステムを採用している点も見逃せない。

 出力端子はアンバランス/バランス併設で、後者についてはスウェーデンのトランス専業メーカー/ルンダール社の出力トランス(LL7401)を配備しているのがセールスポイントだ。

 電源部はデジタル/アナログでトロイダルトランスを個別に配した。回路構成はリニアレギュレーターである。

細かな質感や感触の違いをありのままに描き切る

 まずはデラのミュージックサーバー(NAS)に取り込んだ音楽ファイルを、アンバランス/バランスと比較しながら試聴した。マイルス・デイヴィスの名盤『カインド・オブ・ブルー』から「ブルー・イン・グリーン」(192kHz/24ビット/FLAC)を再生。ひじょうに濃密なサウンドで、情報量面でもたいそう緻密で周波数的な偏りがない。ピアノの響きは瑞々しくなめらかで、テナーサックスの音色にも潤いが感じられる。他方、ミュートトランペットの旋律はどこまでも鋭く、闇を切り裂くよう。「シーッ」というテープヒスさえなければ(逆にそれがあるから古い音源のハイレゾ版と実感できるのだが)、つい昨日録音されたといってもいいくらいの生々しい質感、リアリティだ。

 アンバランスとバランス接続の差は、エネルギーバランスの安定感に出た。後者の方がよりどっしりと末広がりの重心となる。またステレオイメージについてもバランス接続の方が広大で、トランペットの実在感、ピアノのタッチの強弱等がよりリアルに感じられた。以降、バランス接続での再生とする。

 上原ひろみの新譜『シルバー・ライニング・スイート』から「ジ・アンノウン」を再生。圧倒的に広い音場の中がアンサンブルの音でびっしりと埋められている。ピアノの左手の打鍵には力があり、ベースの代わりとなるチェロのリズムも右チャンネル寄りにくっきりと立っている。演奏の流れの中でのピアノと弦楽の主従関係の入れ代わりが明確で、きつい音、険しい音をきれいに再生しようとしない潔さがこのP1にはあるようだ。

 オリヴィア・ロドリゴのヴォーカルには、まだ幼さが残るチャーミングな魅力を感じたし、山田和樹のマーラー第一交響曲の第四楽章では、畳み掛ける打楽器の破壊力が存分に出た。しかも、余韻を伴なったフワッとした広がりが感じられた点も特筆しておきたい。

 続いてストリーミング再生。主にQobuzを聴いた。ナタリー・コールの『アンフォゲッタブル』の30周年記念エディションは、96kHz/24ビットのFLACだ。ゴージャスかつなめらかなストリングスを背に、親娘の時空を越えた実にしっとりとしたバラードが歌い切られる。リヴァーブが豊かな大きめの音像の柔らかな雰囲気がとても好ましい。

 マイルス「ブルー・イン・グリーン」も真っ当なピラミッド状のエネルギーバランスで、各楽器の質感が瑞々しい。ファイル再生に比べてややメリハリ感があったが、そうしたテクスチャーの違いをきっちり描写するところもP1の素直さだ。

 ネットワークオーディオ全盛時代のD/AコンバーターとしてみたルーミンP1は、まさにその最前線に位置していると実感した。

画像: デノンのプリメインアンプPMA-SX1 LIMITEDと固定音量レベルで接続。単体のネットワーク対応DACとしてチェックした。接続はアンバランス、バランスを試し、後者をメインに用いた

デノンのプリメインアンプPMA-SX1 LIMITEDと固定音量レベルで接続。単体のネットワーク対応DACとしてチェックした。接続はアンバランス、バランスを試し、後者をメインに用いた

試聴に使った機器
●ミュージックサーバー:デラN1A/3
●プリメインアンプ:デノンPMA-SX1 LIMITED
●スピーカーシステム:モニターオーディオPL300Ⅱ

試聴に使ったソフト
●デジタルファイル:『カインド・オブ・ブルー/マイルス・ディヴィス』、『シルバー・ライニング・スイート/上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット』(以上、192kHz/24ビット/FLAC)、『マーラー:交響曲第1番/山田和樹指揮 読売日本交響楽団』(96kHz/24ビット/WAV)、『SOUR/Olivia Rodrigo』(44.1kHz/24ビット/FLAC)
●ストリーミング再生(Qobuz):『Kind of Blue/Miles Davis』(192kHz/24ビット/FLAC)、『Unforgettable…With Love/Natalie Cole』(96kHz/24ビット/FLAC)

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【 本記事の掲載号は HiVi6月号 】

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