松尾大輔の長編映画監督デビュー作となる『偽りのhappy end』が、いよいよ12月17日(金)に公開となる。行方不明になった妹を探す2組の女性の姿を通して、タイトルにあるように、家族のありようを偽り続けた末に訪れる悲劇を、観る者の心をえぐるようなストーリーで映像化した注目作だ。

画像1: 「鳴海唯」の初主演作『偽りのhappy end』がいよいよ12月17日に公開。「心も体も削って臨んだ、気迫のラストシーンに注目してください!」

 ここでは、妹(ユウ)の失踪によって、内に秘めた闇を表出させてしまうエイミを演じ、本作で映画初主演を果たした鳴海唯にインタビューした。

――出演おめでとうございます。公開が近づいてきました。今の心境をお聞かせください。
 ありがとうございます。そうですね、台本を読んでいた時は、このシーンはどういう映像になるんだろうとか、伝えたいことがきちんと伝わるのかなという印象が強かったのですけど、完成した映像を観たら、きちんと伝わり、救われた感覚を得ることができて、すごくよかった! と思いました。

――物語の展開にも、鳴海さんのお芝居にも引き込まれました。
 本当ですか!? うれしいです!

――出演が決まった時のことを教えてください。
 ドラマ『なつぞら』(2019)が終わってすぐぐらいの時期に、オファーをいただきました。

――最初に台本を読んだ時の感想は?
 それまで明るい役とか、明るいお話(物語)しかやったことがなくて、ここまでシリアスな作品は初めてだったので、面白いと思う反面、どうしよう、この役をできるかなという不安がとても大きかったのが、正直な感想です。

 同時に、監督が思い描いているエイミのイメージで私を選んでくださったんですから、それに応えるためにはもう、ぶつかっていくしかねぇ(笑)、という気持ちで臨みました。

――役作りについて教えてください。
 自分の中にないものを引き出すというか、作り出さないといけないので、大きなチャレンジでした。私の役作りって、こうなるからこうしようという感じで、結構プラン立ててやってしまうんです。でも、現場で監督に質問した時に、「そうじゃない、現場で感じたことをお芝居で表現してほしい」とアドバイスをいただいたんです。その時に初めて、自分の中にない引き出しが作られた感覚があって、「そうか! 現場で感じたことでお芝居をしていいんだ」という気づきにつながって、新しいお芝居の仕方を学ぶことができ、深い納得感を得ることができました。

――すると、本作に出演したことで、大きな成長も感じた?
 なかなかそういう感想を持つことは難しいのですが、お芝居の中でキャストの方々と対話することで生まれてくる感情を大切にしよう! という考え方を持つことができたのは、成長した部分なのかなと感じています。

 加えて、体力面、精神面、その両面をすり減らせるような場面も多くあったので、忍耐力も付きました!

画像2: 「鳴海唯」の初主演作『偽りのhappy end』がいよいよ12月17日に公開。「心も体も削って臨んだ、気迫のラストシーンに注目してください!」

――現場で感じるものを活かしたお芝居というのは、すぐにできましたか?
 監督がそうしたいとおっしゃるのなら、そうするのが役者ですから、なんとか切り替えるようにはしましたけど、やはり難しかったですね。

 しかも、現場の空気を作るのも、主演の役者の役割なんですけど、初めての主演ということもあって、そういうことにも気づけていなくて……。私自身、暗い雰囲気があまり好きではなかったので、カメラが回っていない時は、現場を明るくしたい、しようと思ってそうしていたら、「今はそういう状況ではありません」と、監督から怒られたことがありました。自分の未熟を恥じるばかりです。

――演じられたエイミと、鳴海さんは?
 正反対ですね。自分で言うのもなんですけど、私は明るい性格です。

――テレビCMで見る雰囲気に近いと。
 そう、それが私です(笑)。

――すると、正反対の雰囲気のエイミはどのように作っていったのでしょう?
 実はシリアスな作品が大好きで、結構な数を見てきたので、出演されている大先輩の方々のお芝居を参考にしているところはあります。とにかく、自分の中にないものは想像でしか作り出せませんから、形から入りながら、実を作り上げていったという感じです。そうした役作りに加えて、演じる時には、どんな作品であっても、ニュートラルな状態でいようと、そこは自分の中ですごく気を付けるようにしています。

――すると、(芝居が)振り切れたように見えていても、心は真ん中にいると。
 そうですね。だから、カットがかかったらすぐに素に戻れるのかなと思います。自分のお芝居を客観的に見ている自分がいるというのは、大切なことだと思っているので、大事にしています。

――監督になれそうですね。
 いえいえ、今のところは考えていません(笑)。私は、0から何かを生み出すのが、本当に苦手なんです。なので、こういう風に表現してほしいと言われた方が得意なんですよ。

――すると、即興的なお芝居は?
 出来るか? と言われれば出来ますけど、あまり得意な方ではありません。

――話を戻しまして、劇中で描かれている家族のすれ違いはどのように感じましたか?
 どれだけ近い関係にあっても、知らないことはたくさんあるのだと、本当に思います。それは恐らく誰しもが人に言えない悩みの一つや二つは抱えているだろうし、そういった意味では劇中でのエイミは、過去の自分からずっと逃げてきたが故に起きてしまった悲劇なんだろう、という風に感じています。どうしても過去からは逃げられないので、やはり向き合う覚悟が大切なんだと実感しました。

 中盤、エイミはその過去と偶然に再会することで、態度がもう一段変化しますけど、私の場合、匂いが記憶に大きく影響するなぁと感じています。匂いによって、それにまつわる過去の記憶が、結構鮮明に思い出される時があるんです。リアルな世界でも、そんな些細なことで記憶が蘇ってくるのですから、そういう意味では、トラウマとなった過去(とある人物)が目の前に現れたら、エイミも激しく心が揺さぶられただろうなと思います。

――まるで、ヒヨリ(仲万美)の狂気が乗り移ってきたようです。
 あっ、その見方は面白いですね。いろいろな勘違いが生んでしまった悲劇なので、その可能性は誰にでもありうる、と感じます。

――そもそも、解明されていない謎がたくさんあります。
 そうなんです。私にも答えはないし、監督も用意していないかもしれません。観てくださった方々が、それぞれの感想・答えを持ってくださればいいのではないか、と思います。

――ネタバレにならないようにお聞きしますが、ラストのシーンは鬼気迫っていました。
 そこは、早朝から撮影が続いていて、私自身も、肉体的にも精神的にも限界でしたから、限界を超えてしまったエイミの様子を表現できたのかなと感じています。監督には「あそこまで張り詰めた表情が撮れてよかった」とおっしゃっていただいたので、結果オーライな部分があるかもしれませんけど。

――核心を突かれて、表情も激変しました。
 そこを突かれて、それまで我慢していたというか、内に溜めこんでいたものが一気に溢れてしまった。そう感じています。

――話は変わりますけど、携帯の音に驚く仕草はリアルでした。
 ありがとうございます。自分の中では、すこしわざとらしいかも、と思っていたので、そう言っていただいてうれしいです。

――本作では、誕生日という言葉が何度か出てきます。何か(監督の思いが)込められているのでしょうか?
 確かに、よく出てきますね。でも、監督からは何も説明されていません。誕生日と言えば、私が二十歳になる瞬間(深夜0時)に、家族を含めて誰からもお祝いの連絡が来なかったんです。一生に一度の二十歳なのに! と思って、すごくショックだったし、悲しかった記憶があるので、誕生日を祝ってもらえないと(忘れられていると)、ショックを受けるだろうなというのは実感しました。

――鳴海さんの思う、本作のhappy endは?
 一番は誰も死なないことですね。エイミも、もっと妹と向き合っていれば違う人生が送れたのではないかと、すごく思いました。私自身も過去の自分から逃げずに、向き合っていこうと決めました。

――何か、大きな後悔が?
 いえいえ、特にありませんけど(笑)。

――印象に残っているシーンを挙げてもらうと。
 やはりラストシーンですね。体も心も削って頑張ったので、観てほしいです。ご一緒したカトウシンスケさんとは、撮影前夜にみっちりと打ち合わせをしてから臨んだので、注目してください。

画像4: 「鳴海唯」の初主演作『偽りのhappy end』がいよいよ12月17日に公開。「心も体も削って臨んだ、気迫のラストシーンに注目してください!」

映画『偽りのhappy end』

12月17日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

<あらすじ>
中学を卒業してすぐに地元滋賀を離れ、ずっと東京に住むエイミ(鳴海唯)は、母親が亡くなった後も一人で滋賀の田舎で暮らしている妹・ユウ(河合優実)に、「東京で新しい人生を始めない?」と誘う。はじめは拒んでいたユウだがなぜか急に東京に来ることを受け入れ、一緒に暮らし始めるが、引っ越してきて早々、ユウは行方不明に……。

そんな折、エイミは同じく妹が行方不明になっているヒヨリ(仲万美)と出会う。エイミに、地元の琵琶湖で若い女性の遺体が見つかったと警察から連絡がくるが、見つかった遺体はユウではなく、なぜかヒヨリの妹だった。再び巡り合ったエイミとヒヨリは、共に犯人を捜すことになるが、思わぬ方向へ……。

<キャスト>
鳴海唯 仲万美 河合優実 田畑志真 小林竜樹 奥野瑛太 川島潤哉 三島あよな 見上愛 メドウズ舞良 藤井千帆 野村啓介 橋本一郎 谷風作 永井ちひろ 鈴木まりこ 
古賀勇希 安田博紀 原知也 宮倉佳也 笹川椛音 白石優愛 土屋直子 馬渕英里何 カトウシンスケ

<スタッフ>
監督・脚本:松尾大輔
撮影:川野由加里 照明:赤塚洋介 録音:阿部茂 衣裳:田口慧 ヘアメイク:佐々木弥生 美術:松塚隆史 装飾:徳田あゆみ 制作担当:興津香織 助監督:小泉宗仁 監督助手:石塚礼/安藤梓 監督補助:廣野博友 特別協力:匠司翔 キャスティング:杉山麻衣 バレエ振付・指導:吉野菜々子 音楽プロデューサー:菊地智敦 音楽:古屋沙樹 編集:和田剛 音響効果:伊藤進一 配給・宣伝:アルミード
2020年/日本/カラー/16:9/5.1ch/97分
(C)2020 daisuke matsuo

画像: 偽りのないhappyend 予告編 youtu.be

偽りのないhappyend 予告編

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鳴海唯

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