セリーヌ・ディオンの半生を綴った『ヴォイス・オブ・ラブ』がいよいよ公開される。「セリーヌ・ディオンの人生から生まれた愛の物語」というキャッチコピーの本作は、セリーヌをモデルにしたアリーヌの成長を描いたフィクションだ。

 セリーヌの生きざまに関してはそれなりに知っていたつもりだったが、14人兄弟の末っ子だったり、歯列矯正をしたエピソードは本作で初めて得た情報だった。

画像1: セリーヌ・ディオンの人生から生まれた愛の物語『ヴォイス・オブ・ラブ』は、音楽ファン必見のエンタテインメントである。ぜひ、音のいい映画館で楽しんで欲しい

 人知れず苦労の多かったセリーヌの成功の道のりを、ヴァレリー・ルメルシエが主演、脚本、監督で描いている。ルメルシエに関しては寡聞にして本作が初見だったが、フランスでは女優としてだけでなく、映画監督としての実績もあるマルチプレーヤーだ。もっとも成人してからの役柄はピッタリだったが、さすがに幼少期を素で演じるのには少々無理があった気もしなくはない……。

 以前BSハイビジョンで観たラスベガスのシーザーズパレス・ホテルの公演を題材にしたドキュメンタリーを彷彿させるシーンもたっぷり入っているし、英語が苦手だったセリーヌが語学習得に苦労するシーンや、マネージャーとして彼女を育て、後に結婚するルネ・アンジェリルとの愛も描かれている。劇中、トレビの泉でジェラートを食べるシーンにはほろっとするというか、涙腺が緩む人も多いのではないだろうか。

 そのシーザーズパレスのパフォーマンスは、残念ながらチケットの入手が難しく僕自身もライブで観ることはできかったが、その代わり、このライブを収録したブルーレイ『Live in Las Vegas A New Day』はホームシアターで繰り返し楽しんだ。

画像2: セリーヌ・ディオンの人生から生まれた愛の物語『ヴォイス・オブ・ラブ』は、音楽ファン必見のエンタテインメントである。ぜひ、音のいい映画館で楽しんで欲しい

 彼女のために4,000人を収容する劇場を新たに作ったのも凄いけど、毎回ソールドアウトになったという人気の高さにも驚く。セリーヌは毎回彼女のために建てられたプール付きの住まいからこの劇場に通っていたというエピソードはBSハイビジョンのドキュメンタリーでも語られていたが、まさかその期間は劇場と自宅の往復しかしていなかったとは知らず、ここにもひじょうに驚いた。

 劇場の仕掛けは超が付く大掛かりなものだったが、毎回それに負けない熱いライブが繰り広げられていたようだ。バックバンドもダイナミックな演奏を披露していたし、セリーヌの歌唱力たるやそれを遥かに上回る。音響設備も立派だったようで、ブルーレイで聴く音楽も、低域までしっかり伸びたサウンドの中にセリーヌの溌溂としたヴォーカルがたっぷりと入っている。

 『ヴォイス・オブ・ラブ』でもラスベガスのライブが描かれているが、このブルーレイに収録された映像が忠実に再現されている。映画として派手な音響演出はないものの、フランスで行われたダビングはアリーヌ役のヴァレリーがそれぞれの場面で歌うステージ上のライブネスをたっぷりと描き出している。

画像3: セリーヌ・ディオンの人生から生まれた愛の物語『ヴォイス・オブ・ラブ』は、音楽ファン必見のエンタテインメントである。ぜひ、音のいい映画館で楽しんで欲しい

 セリーヌ・ディオンは第一線で活躍中のアーティストだけに、彼女を演じるのは相当なプレッシャーもあったはずだが、ヴァレリー・ルメルシエはセリーヌへのオマージュを通じて見事にその重責を果たしている。

 これだけでも見応え充分だが、ヴォーカルシーンをすべてアフレコでこなしたフランス人歌手のヴィクトリア・シオもさらに素晴らしい。セリーヌ・ディオンの声には似せているが、ものまねではなく遊び心を加えて歌ったと語るように、本物以上に本物らしい彼女の歌声の素晴らしさに誰しもきっと感動することだろう。

 セリーヌ・ディオンのファンに限らず、ぜひ多くの方に音のいい映画館で楽しんでもらいたい作品である。

『ヴォイス・オブ・ラブ』

画像4: セリーヌ・ディオンの人生から生まれた愛の物語『ヴォイス・オブ・ラブ』は、音楽ファン必見のエンタテインメントである。ぜひ、音のいい映画館で楽しんで欲しい

●12月 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー 第74回 カンヌ国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門正式出品作品
●監督・脚本:ヴァレリー・ルメルシエ『モンテーニュ通りのカフェ』
●出演:ヴァレリー・ルメルシエ、シルヴァン・マルセル、ダニエル・フィショウ、ロック・ラフォーチュン、アントワーヌ・ヴェジナ他
●原題:Aline the voice of love●2020年●126分●配給・宣伝:セテラ・インターナショナル

©Rectangle Productions/Gaumont/TF1 Films Production/De l'huile/Pcf Aline Le Film Inc./Belga
©photos jean-marie-leroy

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