フランスを代表する老舗スピーカーメーカー、フォーカルが送り出すアクティブ型のスタジオモニター、ALPHA EVO 50とEVO 65。元々は、個人レベルで音楽を収録、配信するミュージシャンを強く意識して開発されたというが、家庭用としてみても、アンプ内蔵でこの価格は実に魅力的。ここでは兄貴分のEVO 65を用意して、その実力を検証してみたい。

 現在、スピーカーメーカーの多くは、他社からユニットを調達し、設計するケースが多いが、フォーカルは自社開発にこだわる。その象徴とも言えるのが、グレードの枠を超えて、同社のスピーカーシステムに広く組み込まれている逆ドーム型トゥイーターだ。

 このトゥイーターの最大の特長は、振動板全体を均一に駆動させられること。一般的なドーム型トゥイーターの場合、ボイスコイルとの接点は振動板の最外周になるが、逆ドーム型ではやや内側になり、振動板の外周と内周、均等に駆動力が伝わりやすい。

 結果として、指向性がブロードになり、正面軸の外側でも音質変化が少ない自然な高域再生が約束されるという。しかもウーファーやミッドレンジと「逆」ではなく同形状となり、動作原理も類似するため、音色の統一感も確保しやすい。もちろんALPHA EVOシリーズも逆ドーム型トゥイーターだ。

画像: アルミニウム製の逆ドーム型トゥイーターと、フォーカルが独自に開発したスレートファイバー・コーンを搭載している

アルミニウム製の逆ドーム型トゥイーターと、フォーカルが独自に開発したスレートファイバー・コーンを搭載している

画像: 低域/高域のイコライザーを搭載。壁際に置いた際はLFをマイナスに、部屋の反響がソフトな場合はHFをプラスになど、環境によって調整する

低域/高域のイコライザーを搭載。壁際に置いた際はLFをマイナスに、部屋の反響がソフトな場合はHFをプラスになど、環境によって調整する

 そして同シリーズはスタジオユースとしては一般的なアクティブ型だ。音楽を生業とするミュージシャンがこのアンプ内蔵スタイルを好む理由は明快、使い勝手がよくて、音質的に優れているから。

 アクティブ型の場合、当然ながらスピーカーケーブルの引き回しによる音質への影響がなく、スペースファクターにも優れる。しかもアンプ構成は各ユニットを独立アンプで駆動する設計が一般的で、もちろんこのEVO 65もバイアンプ仕様だ。

 入力はアナログ限定で、ピン(RCA)とバランス(XLR)、それぞれ1系統。音量調整機能はないが、6dBの感度アップが可能。またLFシェルビング(250Hz以下の帯域調整)、HFシェルビング(4.5kHz以上の帯域調整)を備え、設置時の音響特性に応じて低音、高音のバランスが微調整できる。さらに15分以上無信号の場合、自動的にスタンバイモードに切り替わるオートスタンバイ機能も備えている。

画像: 接続端子はバランス/アンバランスの両方を備えている。+6dBの感度調節ができるSENSITIVITYスイッチやオートスタンバイモードのスイッチがある。壁掛けや天吊りも可能

接続端子はバランス/アンバランスの両方を備えている。+6dBの感度調節ができるSENSITIVITYスイッチやオートスタンバイモードのスイッチがある。壁掛けや天吊りも可能

芯の太い音が躍動する!
価格以上のパフォーマンスだ

 まず特別な調整なしで、聴き慣れた曲を2、3曲再生(RCA接続)してみたが、明確な定位とスムーズな空間の拡がりが特徴的だ。足元をしっかりと見据えながら、入力された信号に的確に反応する俊敏さを備え、音そのものに勢いがある。明快な解像力を感じさるも、輪郭の強調感はなく、肌合いのいいサウンドが耳にスッとしみこむ感覚が実に心地いい。

 ジェニファー・ウォーンズの再生では、腰の強い骨格のしっかりとした中低域をベースに、透明感溢れる清々しい音場空間が目の前に拡がる。スネアドラムは鮮やかに張り出し、バスドラ、ベースは確実にピッチを刻んでいく。一定の量感を伴なった実体感のあるサウンドが躍動する様子が清々しい。

 ダイアナ・クラールの「ザッツ・オール〜アズール・テ」は空間の描きわけ、静けさの表現力がいい。ピアノのアタックは力強く、軽やか。ヴォーカルも彼女の息づかいが感じられるほど、生々しい。どちらかと言えば、明るめの音調、特定の色合いはなく、響きの拡がり、消え際も癖がない。聴き手を強引に揺さぶるような力強さと、そっと包み込むような穏やかさ。懐の深さを感じさせる聴かせ方だ。

 映画『グレイテスト・ショーマン』の視聴では男性、女性を問わず、実在感に富んだセリフの描写が印象的だった。声をしっかりと定位させて、その外側や奥行方向に音楽、効果音が重なり、雄大な空間を描き出していく。

 反応が素早く、音の引き際も癖がないため、シーン、シーンでの空間の表情が実に豊かで、映像とのなじみがいい。バランス接続も試してみたが、全体のラインはわずかに太くなり、ボリュウム感が増す印象だが、飾り気のない落ち着いたサウンドは健在だ。

 オールEVO 65のサラウンドシステムを組んで、一度、その空間に身を委ねてみたい。そんな思いを抱かせてくれる説得力のあるパフォーマンスだった。

SPEAKER SYSTEM FOCAL ALPHA EVO 65 ¥72,600(ペア)税込
●型  式:アンプ内蔵2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:25mm逆ドーム型トゥイーター、165mmコーン型ウーファー
●アンプ出力:55W(トゥイーター)+30W(ウーファー)
●接続端子 :アナログ音声入力3系統(XLR、RCA、TRSフォーン)
●寸法/質量:W261×H339×D289mm/7.6kg
●問合せ先 :(株)メディア・インテグレーション https://www.minet.jp/

弟モデル ALPHA EVO 50 も注目

ALPHA EVO 65同時にALPHA EVO 50も登場した。ウーファーが130mm、寸法/質量がW228×H310×D239mm/5.95kgとやや小ぶりなサイズだ。価格は¥57,200(ペア)税込

画像2: 力感も繊細さも併せ持つモデル FOCAL  ALPHA EVO 65。アクティブ型の魅力が満載だ

↓本記事の掲載は「HiVi」11月号

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