鬼才SABU監督が放つ異色作『DANCING MARY』が、撮影から3年を経てようやく公開を迎える。タイトルからは、“ダンス”に青春をかける“マリー”の物語かと思いきや、“純愛サイキック・エンターテイメント”という予想を裏切る展開で、観るものをグッと惹きつけて離さない仕上がり。ここでは、ヒロイン雪子を演じた、若手女優の中でも注目株の山田愛奈にインタビューを実施。「女優としての自信を持つことができた」という本作の想い出を聞いた。

――作品がようやく公開を迎えます。今の心境を教えてください。
 3年前、19歳の時に撮った作品で、ちょうど10代最後の姿を収めた映画だけに、とても強い想い入れがありましたから、ようやく公開が決まって、すごく嬉しいです。

――当時、出演が決まった時のことを教えてください。
 オーディションでしたけど、全然うまくできなくて……。今でも思い出すぐらい、恥ずかしかったです。課題台本をもらって、覚えてきたはずなのに、緊張しすぎて、セリフが全部飛んでしまって。あぁどうしようって焦っていたら、SABU監督がいろいろとアドバイスをくださって、なんとかやり遂げることができたのかな、という感じです。その後も、帰る時には持って来た荷物を全部忘れてしまうほど、ずっと緊張していました。途中で、忘れ物を思い出して引き返したんですけど、あぁもうだめだ、次のオーディションを頑張ろう、って思うぐらいでした。

 でも、その数週間後に決まったと聞いて、まったく思うように(お芝居が)できなかったので、私で大丈夫なのかなという不安ばかりでした。

――出演が決まって、SABU監督からは役についての話はありましたか?
 何も言われなかったんですよ。それまでにご一緒した監督さんは、こういう風に演じてほしいとか、こうして欲しいと指示を下さる方が多かったこともあって、あっ! これは全部自分で考えて、自分の中から生まれるものを出さないといけないんだっていうプレッシャーも感じました。私が皆さんの足を引っ張っちゃいけない、頑張らないといけない、という思いは強くなりました。

――合格の理由も聞いていない?
 そうなんです。未だに聞けていません。ただ、私の演じた雪子は強い想いを内に秘めている役なので、私の雰囲気が役と合っていたのかなとは感じています。というのも、三白眼っぽい目がずっとコンプレックスで、コンタクトをして(それを)隠すということをしていたんですけど、出来上がった作品を観ると、その方が役が引き立っているように見えましたし、作品のテイストに合っているなと感じましたから、そうした部分で選んでくださったのかなと思います。

――きりっとした見た目と、ご自身のラジオ放送(いじらないで聞いてください)で感じるキャピキャピしたところの2面性というか、ギャップがよかったのかもしれませんね。
 そうですね(笑)。モデルのお仕事(撮影)では、クールビューティ―な雰囲気で写真を撮ってもらうことが多いので、そういうイメージを持たれる方が多いんですけど、実はおしゃべりすることが好きだし、あまり考えずにポンポンと話してしまうので、ラジオで初めてそういう面を聞いた(見た)という方は多いと思います。

画像3: 注目作『DANCING MARY』が待望の公開。ヒロインを演じた「山田愛奈」にインタビュー。「普通の女の子と変わらない、そんな雪子を表現しようと思いました」

――さて、話を戻しまして、雪子の役作りについて教えてください。
 さきほどお話したように、SABU監督からは(役作りを含めて)全部を任されていたので、キャラクター(役)のすべてを自分で考えなければならず、そういう役作りは本作が初めてでしたので、すごく苦労しました。

 雪子については、台本を読む限りは、一匹狼というか、先ほどもお話したように、ずっと(気持ちを)内に秘めていて、人と関わるのが苦手というイメージを受けました。でも、役柄について深く考えていく内に、特別な能力を持っている特殊な子というよりは、みんなと変わらない普通の女の子で、喜怒哀楽もあるし、楽しいと思ったら笑うし、悲しいと思ったら涙も流すだろうし、研二(EXILE NAOTO)に対してイラっとしたら早口になってみたりと、(雪子の持つ)特別な能力に囚われ過ぎずに、決して他の女の子と変わらないんだということを伝えたい、そう思って役を作っていきました。

――研二とは、一緒の時間を過ごしていく内に関係性が変わっていきます。
 研二は、雪子に対して普通に接してくれた初めての人だったからだと思います。それまで、そういう態度で接してくれた人が、自分の両親も含めていなかったのだろうと。それが雪子の中ではすごく嬉しかったと思うし、おそらくこの人なら心を許すというか、普段の自分でいても拒絶されないと感じたのでしょう。それが雪子の中の壁を壊すきっかけとなって、いつの間にか立場が逆転していった。そう思っています。

――学校でもそういう友達ができたら、そうなっていた?
 そうですね。研二と一緒にいる時の雪子が、本来の姿なのかなと。周囲の人から能力をからかわれることが続いて、自分の殻に閉じこもってしまった。そういう風に感じました。

――雪子の持つ、幽霊が見える力については?
 私自身、霊感があるわけではありませんけど、子供の頃は何かが見えていた記憶もあるので、怖いとか嫌だという気持ちはありません。それに、雪子が見る世界では、幽霊も生きている人と変わらないし、悪い霊ばかりではないので、あっても不便はなさそうですね(笑)。

――ちなみに、本編中では雪子がにやついているシーンもありました。
 あれはなんでしょう……(笑)。私の素ではあるんですけど、台本にはト書きで、「笑う」って書いてあったかなぁ~? でも、NAOTOさんや石橋凌さんが本当に面白かったんです。ただ、雪子的にはガハハハとは笑わずに、きっと静かにほほ笑むんだろうなと思ったので、私の中から出てきたもので表現しました。役として少しセーブはしています。

――ところで、ジョニーの帰りを待ち続けているマリーのイメージは?
 本作に出てくる幽霊たちの中では、強い念が残っていることもあって、怖いとか幽霊としての不気味さはあると思いますけど、女性らしい気持ちとか、暖かさを感じる面があるのは、映画ならではの素敵な部分だなと思っています。

――一方で、ジョニーについては?
 あははははは、ジョニーですか(笑)。男性としては面白いので、一緒にいたら楽しいでしょうね。しかも、そんな面からは一転、懸命さとか一途な想いを、幽霊になっても持ち続けているので、男性としては素敵だと思います。

――今回は、研二を演じたNAOTOさんとの共演シーンも多くありました。NAOTOさんの印象は?
 最初のうちは緊張してしまって、全然話しかけられなかったんです。でも、私が緊張しているのが伝わったんでしょうね、NAOTOさんの方から話しかけてくださったおかげで、割と撮影の序盤から打ち解けることができました。ちょうど、雪子と研二の役柄と同じような感覚があって、すごく役に入りやすかったです。

――印象に残っているシーンを挙げてもらうと。
 撮影場所が、東京、九州、台湾と多岐にわたりますし、シーンの背景もそれぞれ違うので、どれも印象深いんですけど、中でも一番と言うと、ラスト付近の車のシーンは好きですね。(研二とのやり取りの中での)雪子の心境の変化が分かりやすくなっていますし、そこにジョニーが加わって、わちゃわちゃした雰囲気になって面白いので、注目してほしいです。

――本作へ出演して、女優としての自信はつきましたか?
 はい。今まで、(自分の)年齢に近い役とか、内に何かを秘めている役を演じることはありましたけど、本作の雪子では、特殊能力という自分にないものを一から自分の中で作って行かなければいけない。その作業を通して、役作りとは何かということをきっちりと学べた気がして、それが自分の中では一番大きな成長なのかなと感じています。

 例えば、それまでは内に秘めた役だったら、もうそれだけしか考えられなかった(表現できなかった)んですけど、本作では雪子の可愛らしい一面とか、普段とは違う感情の出した方を実際に表現することができました。私だけではなく、スタッフさんやキャストの皆さんと一緒になって作り上げた雪子というキャラクターなので、いろいろと勉強になりましたし、10代最後の作品として、とても忘れられないものになりました。

 その後に出演させていただいた作品でも、本作で気付いた役作りに対する向き合い方ができたかな、活かすことができたかな、と感じています。

――次は、山田さんの素に近いお芝居も見てみたいですね。
 いいですね、私も、明るかったり、天真爛漫な役にも挑戦してみたいと思います。頑張ります。

映画『DANCING MARY ダンシング・マリー』

11月5日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

<キャスト>
EXILE NAOTO、山田愛奈、坂東希、吉村界人 / 石橋凌

<スタッフ>
監督・脚本・編集:SABU
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
「DANCING MARY」製作委員会:LDH JAPAN、ローソン
制作プロダクション:ディープサイド
配給:株式会社キグー
製作:LDH JAPAN
(C)2021映画「DANCING MARY」製作委員会

ヘアメイク:八戸亜希子
スタイリスト:小笠原吉恵
衣裳協力:ワンピース/RUMCHE、ピアス/ARTIDA OUD、パンツ/5_knot

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