ティアックのプロ用機器ブランド、タスカムからUHDブルーレイプレーヤーの新製品、BD-MP4Kが登場した。アナログ時代からテープレコーダーを初めとして、レコーディング機器を幅広く手掛けてきたタスカムだが、映像機器についてはぼくの認識不足だったこともあり、この情報は初耳に近かったので少しばかり驚いたのである。

 話を聞くと同社ではDVD時代から業務用の製品を開発し、さらにBD-MP4Kの前身となるBDプレーヤーも発売していたので、UHDブルーレイについても突然変異というわけではなく、市場のニーズに応えた正統的な進化形というわけだ。

 イベント会場や設備用途での使用を考慮したプロシューマー機なので、ラックマウントに収めるための1Uラックマウント仕様という点は純然たる家庭用の製品とは趣が異なる。高密度な設計によってコンパクトにまとめ、UHDブルーレイをはじめ、BD、DVD、CDなど市販パッケージ、さらにはSDカードやUSBメモリーのファイル再生も行なえる。ただしSACDとDVDオーディオに対応していないので、この点は少しばかり残念である。

 メカの詳細は不明だが、自社で開発した信号処理回路を加えてオリジナリティの豊かなモノづくりが行なわれている。HDMI出力は2系統用意されひとつは映像と音声兼用、もうひとつはオーディオ出力専用である。こうした用意周到な設計はホームシアターファンにも歓迎されることと思う。さらに注目したいのが、豊富なアナログオーディオ出力の装備である。2chのバランスとアンバランスの出力、これとは別にHDオーディオに対応した7.1chのアナログ出力が用意されているので、対応のAVセンターを使っているユーザーには歓迎されることだろう。現時点ではプレーヤーでドルビーアトモスの信号をデコードして出力することはできない。

 パネルフェイスはいかにもプロ用機のイメージでまとめられている。ラックマウントを基本に考えているため、底面にはささやかなゴム脚が取り付けてあるが、オーディオラックに収納するなら脚はオーディオ用のアクセサリーを加えて使うといいだろう。

 この他に同軸のデジタルアウトを装備、また公共での利用を考慮して、ホーム画面を表示させない「ハイドメニュー」も用意されている。ホームシアターではあまり使うことはないが、プロ用機としては必須の機能だ。またリモコンに設けられた「ミュート」ボタンを押すと、デジタルでもアナログの状態でも音声のミュートが掛けられる点はホームシアターファンにも役に立つ機能だと思う。

安定感のある映像が好印象
アナログ音声出力も良質だ

 視聴はビコムがリリースしたUHDブルーレイ『8K空撮夜景 SKY WALK-TOKYO/YOKOHAMA』から始めた。このソフトはタイトル通り8Kカメラを使って東京と横浜の夜景を上空からヘリで撮影したものだが、光のディテイル再現と暗部階調の豊かさが魅力の作品である。夕景から夜間にかけての撮影だが、ざらつきが少なく一見してS/N感に優れる映像を描き出す。

 視聴した実感としてはもう少し積極果敢な姿勢を見せてもいいのにと思うが、このあたりに使用環境に配慮したプロ機ならでは絵づくりがなされているのだろう。比較対象としてパナソニックのDP-UB9000で同じソフトを視聴してみたが、ディテイル感や立体感、細部の色遣いに違いを見つけることができる。もっとも、この価格差を考慮するなら健闘ぶりを讃えてもいいように思った。また本機には映像メニューの中に「HDMIシャープネス」という項目があり、「高」、「中」、「低」に設定できる。プリセット値は「低」だが、「高」に変更しても画質が破綻することはまずないので積極的に使いこなしたい。

 続いてUHDブルーレイの映画タイトルをいくつか見たが、いずれも穏やかさを保つ中庸な絵づくりで、安定感のある表現。ライヴ収録の音楽BDソフトも暗部に至るまでノイズの浮きが少ない映像を楽しむことができる。

 次にこのモデルの特徴である多彩なオーディオ出力をチェックすべく、情家みえのCD『エトレーヌ』で比較してみた。

 HDMIではいくぶん整理された感じはあるが、フォーカス感に優れたすっきりとしたヴォーカルを聴かせる。2chのアンバランス出力は、クリアーネスが高まりヴォーカルのニュアンスも感じさせる。7.1ch出力のうちのL/R音声出力端子経由で再生するとすっきりとして2chのアンバランス出力に比べてやや細身になる傾向である。最後にプロ機に必須となる2chバランス出力で聴いてみたが、低域に向かってゆったりとした表現力を持ち、リアルで厚みのあるヴォーカルを聴かせる点がよい。

 HDMI接続で視聴する映画音響はスムースでヌケのよい再現。アナログ7.1ch出力は中低域にかけての厚みを感じさせるサウンドを聴かせてくれた。

 パイオニアのUDP-LX800や同500、さらにはオッポデジタルのUHDブルーレイプレーヤーがカタログから姿を消してしまった今、ハイエンドを志向する製品はパナソニックのDP-UB9000一択になってしまい、UHDブルーレイ対応4Kレコーダーでその代用を余儀なくされてしまったユーザーも多いことと思う。そんななか、約10万円程度の価格で良質な描写が味わえ、豊富なアナログ音声出力を装備している本機は魅力的だ。BD-MP4Kはホームシアター向けに開発されたモデルではないが、そうしたユーザーにとっても救いの手を差し伸べてくれる注目の製品になることは間違いない。

画像: プロシューマー機ならではの装備が充実。TASCAM BD-MP4Kの価格と画質に拍手!

UHD BLU-RAY PLAYER
TASCAM
BD-MP4K
¥110,000(税込)

●接続端子:HDMI出力2系統(映像/音声兼用、音声専用)、アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、7.1chアナログ音声1系統出力(RCA)、LAN1系統 他
●再生可能メディア:UHDブルーレイ、BD、DVD、CD
●寸法/質量:W482.6×H44×D280.7mm/約2.78kg
●問合せ先:ティアック(株)タスカムカスタマーサポートTEL.0570(000)809

画像: HDMIが映像/音声兼用と音声専用の2系統、バランス/アンバランスのアナログ音声出力、7.1chアナログ音声出力など、ハイエンド機並の出力端子を備えている。レコーダーではアナログ音声出力端子やデジタル同軸音声出力端子が省かれてしまうことが多いので貴重な存在だ

HDMIが映像/音声兼用と音声専用の2系統、バランス/アンバランスのアナログ音声出力、7.1chアナログ音声出力など、ハイエンド機並の出力端子を備えている。レコーダーではアナログ音声出力端子やデジタル同軸音声出力端子が省かれてしまうことが多いので貴重な存在だ

画像: リモコンはスタンダードな配置だが、スキップが縦並びでひとつのボタンになっていることが特徴で、親指の位置をほとんど変えずに操作できる


リモコンはスタンダードな配置だが、スキップが縦並びでひとつのボタンになっていることが特徴で、親指の位置をほとんど変えずに操作できる

画像: 7.1chアナログ出力を使用する際は、プレーヤー側でスピーカー構成を選択し、スピーカーの大小、トリム、ディレイの調整を行なう。今回はL/C/R/SL/SR/SBL/SBRの7ch構成で視聴した

7.1chアナログ出力を使用する際は、プレーヤー側でスピーカー構成を選択し、スピーカーの大小、トリム、ディレイの調整を行なう。今回はL/C/R/SL/SR/SBL/SBRの7ch構成で視聴した

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