田中要次さんの自宅新築に合わせてスタートしたホームシアター造りも、2020年末にひとまず完成を迎えた。客間を有効活用してホームシアターを手に入れようというアイデアから始まった計画は、当初の100インチスクリーン+5.1chから、110インチスクリーン+5.1.2のドルビーアトモス対応に進化している。完成から約3ヵ月、この空間で色々なソフトを楽しんだ田中さんから、編集部に新たな相談の連絡が入った。(取材・文:泉 哲也)

画像: 田中要次さんの、ホームシアターあるよ!(その3)「フロントスピーカーの迫力が、物足りなくなってしまったんです!」

 前回の本連載で紹介した通り、田中要次さんのホームシアターは2020年末に完成した。改めて整理しておくと、約10畳の客間に110インチスクリーンと5.1.2システムを設置し、UHDブルーレイや4K放送、動画配信まで楽しめる最新の仕様を備えている。

<田中要次さんの主なシアターシステム>
●プロジェクター:エプソンEH-TW8400
●スクリーン:キクチStylist/シャンティホワイト(110インチ/16:9)
●4Kレコーダー:パナソニックDMR-4W200
●カセットデッキ:ソニーTC-K222ESJ
●アナログレコードプレーヤー:アカイProfessional BT500
●AVセンター:ソニーSTR-DN1080
●スピーカーシステム:BOSE 55WER(フロントL/R)、33WER(センター)、101MMG(サラウンドL/R)、JBL C-6IC(トップL/R)
●サブウーファー:ヤマハYST-SW320

 スピーカーシステムは、田中さんが以前からお使いだった5.1chを流用し、そこに埋め込み式のトップスピーカーを加えたもの。当分はこの構成でお聴きいただく予定だったのだが、今年2月に田中さんからセンタースピーカーを交換しようかと思っていますという連絡が入ったのだ。

●田中さんに体験してもらったお薦めスピーカー
KEF Q550 ¥126,500(ペア、税込)

画像: 英国のスピーカーブランドKEFの「Q550」は、同社のアイコンでもある同軸型ユニット「Uni-Q」と13cmウーファーを搭載した3ウェイスピーカーだ。一見4基のユニットがあるように見えるが、このうちふたつはいわゆるパッシブラジエーターとして動作しており、キレのいい低域再現を可能にしている

英国のスピーカーブランドKEFの「Q550」は、同社のアイコンでもある同軸型ユニット「Uni-Q」と13cmウーファーを搭載した3ウェイスピーカーだ。一見4基のユニットがあるように見えるが、このうちふたつはいわゆるパッシブラジエーターとして動作しており、キレのいい低域再現を可能にしている

●形式:2ウェイ2スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター+130mmコーン型ミッドレンジ・同軸、130mmコーン型ウーファー、130mmパッシブラジエーター×2
●周波数特性:58〜28,000Hz
●インピーダンス:8Ω
●能率:87dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2,500Hz
●寸法/質量:W299×H926×D310mm/14.5kg(台座・スパイク込)

 ネットのフリーマーケットでクリプシュのセンタースピーカー「R-34C」の新古品を見つけたそうで、セリフの迫力があがるのでは、という期待から購入されたとのこと。さらにこのセンタースピーカーに合わせてフロントL/Rもグレードアップしたいと思い始めたという。

 「20年ほど前に、当時住んでいたマンションで5.1chを導入しました。BOSEのスピーカーはその時に頑張って買ったものです。これで映画を大迫力で楽しめると喜んだのに、鳴らした瞬間に妻がうるさいと(笑)。そこから20年間は、家に一人で居る時にしか5.1chを使わなかったので、実質ほとんど鳴らしていませんでした。でもたまに聴くには充分な迫力で、まったく違和感もなかったんです。

 でも先日、Disney+で『マンダロリアン』を見ていたら、オープニングで低域の一部だけ鳴り方が変だったんです。元々の楽曲がそんな作りのわけもないし、そこから気になりだして、スピーカーの迫力が物足りなくなってしまいました」

 そういうことなら、気になるスピーカーを試聴してみませんか? と提案し、ご自宅での取材を実施することに。田中さんと相談して選んだ試聴機はダリ「OBERON 5」、KEF「Q550」、エラック「Debut F5.2」の3モデルで、いずれも110インチスクリーンの両脇に置いた時に目立ちすぎず、でも音楽や映画の迫力もしっかり再現してくれそうな製品を選んでいる。

●田中さんに体験してもらったお薦めスピーカー
ELAC Debut F5.2 ¥137,500(ペア、税込)

画像: ドイツ、エラックの人気スピーカーシリーズから、「Debut 5.2」も体験いただいた。13.5cmウーファーは同じユニットを3基搭載し、中〜低域用と低域用に使い分けている。さらに直列クロスオーバーとしてシリーズ接続することで、フルレンジ型のような一体感を狙っているという

ドイツ、エラックの人気スピーカーシリーズから、「Debut 5.2」も体験いただいた。13.5cmウーファーは同じユニットを3基搭載し、中〜低域用と低域用に使い分けている。さらに直列クロスオーバーとしてシリーズ接続することで、フルレンジ型のような一体感を狙っているという

●形式:3ウェイ3スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、135mmコーン型ウーファー×2
●周波数特性:42〜35,000Hz
●インピーダンス:6Ω
●能率:86dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:90Hz/2,200Hz
●寸法/質量:W180×H1016×D234mm/15.6kg

 4月下旬、試聴機を田中邸に持ち込んで取材スタート。まずはCDの2chをダリ、KEF、エラックの順番に再生してみる。田中さんが選んだ曲目はU2『POP』から「Mofo」と、『空中 ベスト・オブ・フィッシュマンズ』から「SEASON」。

 それぞれをじっくり聴いてもらい、まずは全体の印象を訊いてみると開口一番、「CDは今までほとんど車で聴いていたから、こんなに色々な楽器が入っていることに気がつかずにいたんだと驚きました。スピーカーだとこんな感覚が得られるなんて、今まで色々なことをおろそかにしていたんだなぁと反省しました。またスピーカーってブランドによってこんなに音が違うんですね。驚きました」という言葉が。そこで各製品の印象を詳しくうかがってみた。

 「ダリのOBERON 5は高音がしっかり聞こえて、低音のバランスもよかったですね。フィッシュマンズのバイオリンもしっかり聴き取れました。低音の量も充分で、他の部屋に音が漏れないか心配なくらいです。

 KEFのQ550は鳴り方がBOSE近い気がして、馴染んだ印象でした。低音は少しタイトな方向で、すっきりしている。虫の声などはリアルすぎてキツく感じるほどでしたが、逆にそこが印象に残りました。

 エラックのDebut F5.2は、高音から低音までバランスがよく、うまいまとまりだと思います。ただ、低音が少し奥ゆかしい印象で、低音の階調感がもう少し出てきて欲しいなぁと感じました」

●田中さんに体験してもらったお薦めスピーカー
ダリ OBERON 5 ¥141,900(ペア、税込)

画像: 今回の試聴モデルは、トールボーイ型で110インチのサイズに合うモデルという点を踏まえ、編集部から提案させてもらった。中でもデザイン面で田中さんが気になったのが、ダリの「OBERON 5」。大口径トゥイーターとウッドファイバー振動板ウーファーを搭載し、豊かな低音を楽しませてくれた

今回の試聴モデルは、トールボーイ型で110インチのサイズに合うモデルという点を踏まえ、編集部から提案させてもらった。中でもデザイン面で田中さんが気になったのが、ダリの「OBERON 5」。大口径トゥイーターとウッドファイバー振動板ウーファーを搭載し、豊かな低音を楽しませてくれた

●型式:2ウェイ3スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、130mmコーン型ウーファー×2
●周波数特性(±3dB):39〜26,000Hz
●能率:88dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2,400Hz
●寸法/質量:W162×H830×D283mm(スパイク含まず)/10.8kg

 続いて各スピーカーを使った5.1.2サラウンドの音も聴いてもらうことにした。試聴ディスクはブルーレイ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の冒頭シーンで、ドルビーアトモス音声を再生している。

 「映画の低域の鳴らし方は3社3様で、それぞれ違いがありましたね。OBERON 5は一番低域の量が多くて活発に出てくる感じでしょうか。Q550はCDの時と同じでやや控えめだけど、階調がよく出ていた。Debut F5.2はその中間で、サラウンド音場としては一番まとまっていたかもしれない。

 ヤマハのサブウーファーのボリュウムはBOSEの時よりも下げたんだけど、それでも3モデルとも映画の迫力は上がっていました。サブウーファーが無理をしなくていいというのは安心できますね。いや〜フロントスピーカーでこんなに変わるとは、恐れ入りました。BOSEとも全然違うということはわかったので、後には引けませんね。どうしよう」

 CDとブルーレイの試聴を終えて、田中さんはかなり悩んでいる様子。まぁこの場で即座に結論を出す必要もないので、じっくり考えていただいた上で新しいシステムを決めましょうとお話しし、この日の取材を終了した。

 なお懸案だった『マンダロリアン』についても、テーマ曲を3モデルで再生し、どれも問題なく再生できることを確認している。

画像: 3種類のスピーカーを順番につなぎ替えて、2chとサラウンド再生時それぞれの音の違いを確認していただいた。当初はどれくらい違いがあるのか心配だったという田中さんだが、的確にその差を指摘してくれた

3種類のスピーカーを順番につなぎ替えて、2chとサラウンド再生時それぞれの音の違いを確認していただいた。当初はどれくらい違いがあるのか心配だったという田中さんだが、的確にその差を指摘してくれた

※9月24日公開の(その4)へ続く

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