いまからおよそ半世紀前、“昭和の特撮作品”が注目を集めている。東宝の『ゴジラ』シリーズや東映の『仮面ライダー』シリーズ、『ウルトラマン』シリーズ。昨今はハリウッドのスタジオも巻き込んで新作が製作・公開されるようになって久しい。当時を知る世代には懐かしく、VFX作品で育った世代には目新しい。再見するたびに日本の生んだ“特撮”ならではのこだわりとクォリティにはいまも目を見張らされるばかりだ。

 ご存知『大怪獣ガメラ』シリーズもそのうちのひとつ。大映の生んだ特撮作品の代表作としてよく知られている。のだが、負けず劣らず高い人気を誇るのが『大魔神』シリーズだ。『大魔神』『大魔神怒る』『大魔神逆襲』からなる三部作。安田公義、三隅研次、森一生といった名監督たちが手掛けた本格的な“伝奇特撮時代劇”である。

画像: 『大魔神怒る』 (C)KADOKAWA1966

『大魔神怒る』 (C)KADOKAWA1966

 この『大魔神』シリーズや、これもまた根強い大映の人気のシリーズ、『妖怪三部作』(『妖怪百物語』『妖怪大戦争(1968年)』『東海道お化け道中』)が最新の4K修復版となってスクリーンに帰って来る。大映の特撮時代劇の流れを汲む『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(三池崇史監督)の公開を記念して今週末の7月16日(金)から開催される「妖怪・特撮映画祭」だ。

 大映作品の4K修復版のクォリティには既に定評がある。NHK BS4Kでもオンエアされた黒澤明監督の『羅生門』や溝口健二、小津安二郎監督作品などはご覧になった方も多いだろう。ブルーレイや配信でも観ることができる若尾文子主演の『刺青』などはため息の出るような仕上がりだ。

 4K修復にあたってプロジェクトに監修として参画されているのは当時を知る大映出身の撮影監督、宮島正弘氏。もちろん今回の『大魔神三部作』『妖怪三部作』でも氏がグレーディングなどの作業を手掛けられている。

 「妖怪・特撮映画祭」の開催に先立ち、4K修復版の『大魔神怒る』をIMAGICA第一試写室で見せてもらった。旧マスターを使った現行ブルーレイ盤も、名画座で観るようなトーンは味わいがあって印象は決して悪くはない。ところが新たに制作された4Kマスターを目にして愕然。声を失った。

画像: 試写が行われた五反田・イマジカのロビーに展示されている「エリアルイメージ特殊合成機」。制作されたばかりの1966年、『大魔神怒る』では武神像が湖を割って進む有名なカットのオプチカル合成で使われている

試写が行われた五反田・イマジカのロビーに展示されている「エリアルイメージ特殊合成機」。制作されたばかりの1966年、『大魔神怒る』では武神像が湖を割って進む有名なカットのオプチカル合成で使われている

 4Kスキャンののちにレストアが施されたS/Nのいい、強いコントラスト感を蘇らせたフィルム映像。イーストマンカラーらしい美麗な発色と色の鮮度感。引き締まった黒の色味から生み出される暗部階調の再現力も見事だ。ロケーションでの素材とスタジオで撮影されたカットのトーンを馴染ませるために撮影監督の森田富士郎氏がこだわったという“空気層”の再現も素晴らしい。とにもかくにも武神像の目力の強さと怖さが圧倒的。

 監修の宮島正弘氏は本作には撮影助手としても携わられている。おそらくこれまでの監修作品以上にグレーディングに際しては当時の経験や記憶が大いに役立てられているのではないかと感じた。

 サウンドはどっしりと定位するモノーラル音声が力強い。これもまたレストア作業を経てS/Nが格段に向上し、セリフや劇伴、効果音がよりクリアーになった。姿は見せず、地面を踏みしめて進む武神像の存在感。爆破されようがもろともせず、ただ吹きすさぶ一陣の風の外連味のあるサウンドデザインが際立つようになっている。これぞ大映作品の4K修復版。文句のつけどころのない仕上がりと言っていい。ぜひスクリーンでの鑑賞をお薦めしたい。

 この『大魔神三部作』は劇場での公開だけでなく、今年9月24日にはシリーズ3作を収めた「『大魔神封印函』4K修復版Blu-ray BOX」のリリースも既に発表されている。せっかくの4K修復版。UHDブルーレイやKADOKAWAのMOVIE WALKER FAVORITEでの4K配信にも期待したい。

「妖怪・特撮映画祭」

7月16日(金)より角川シネマ有楽町にて上映、7月23日(金)よりところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールBにて上映 ほか全国順次上映 配給:KADOKAWA

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