去る6月30日、東京・グランドシネマサンシャイン池袋で、『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の舞台挨拶付きDolby Atmos上映会が行なわれた。

 梅雨のさなかであいにくの天気だったが会場は満席。熱気たっぷりの中で、完結編となる『シドニアの騎士 あいつむぐほし』が上映された。上映後には、東亜重音トリオとなる、監督の吉平“Tady”直弘さん、音響監督の岩浪美和さん、総監督の瀬下寛之さんが登壇。段取り無視の自由なトークが披露された。

画像1: シドニア愛とアトモス愛にあふれた上映&トークが炸裂!「『シドニアの騎士 あいつむぐほし』 東亜重音復活! 舞台挨拶付きDolby Atmos上映会」レポート

 『シドニアの騎士』は、弐瓶勉のSFコミックを原作としたアニメーションで、第1期は2014年、第2期は2015年にテレビ放送された。それから年を重ねて今年公開されたのが完結編となる『シドニアの騎士 あいつむぐほし』。ガウナと呼ばれる対話さえも不可能な謎の生命体と人類の戦いを描いた物語だ。

 破壊された地球を脱出した宇宙船シドニアは、ガウナの攻撃を退けながら移住可能な惑星を探して旅を続け、ついに移住可能な惑星のあるレム恒星系へとたどり着く。しかし、そこにガウナの主力とも言える大シュガフ船が立ちはだかっていた。大シュガフ船との全面対決を決めたシドニアは、激しい戦いを経て、惑星ナインを勢力下に収めることに成功した。

 ここまでが、TVシリーズの1期と2期で描かれた物語で、映画では大シュガフ船との最後の対決が行なわれる。そして、人類とガウナの融合体であるヒロインのつむぎと衛人操縦士である谷風長道の身長差15mの恋の行方は……。

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 肝心の映画の内容はぜひとも、映画館で確かめて欲しい。期待通りの素晴らしいものであることだけは確かだ。その興奮も冷めやらぬまま、東亜重音トリオが登壇。いつもの通りのゆるさで、「段取りはすべて無視するからね」(岩浪美和さん)のお言葉でトークはスタート。
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 まずは自己紹介を兼ねて、これまでのアニメ『シドニアの騎士』に関わってきた3人が挨拶。

 「音響監督の岩浪です。この3人で集まるのも久しぶりですが、だいたい映画の公開が遅すぎですね」(岩浪さん)

 「監督を任されました吉平です。僕の成長を待っていてくれたんですよ」(吉平さん)

 「TVシリーズ1期では編集、2期で副監督、3期でついに監督ですからね」(岩浪さん)

 「総監督の瀬下です。僕はもう必要ないと思っていたのですが、いないと困ると言われて名前だけの総監督です」(瀬下さん)

 「『BLAME!』(2017)の後、シドニアの続きをやって欲しいという声がたくさんありまして、じゃあやろうとなりました。その時、自分から立候補して監督をさせてもらいました。僕自身この作品が大好きなので」(吉平さん)

 「ファンの声に応えてっていうか、成り行きだよね。このアニメの企画は2011年から始まっていますが、その頃から成り行きだった。『BLAME!』も面白がって劇中劇にしたら大好評で映画化したし」(瀬下さん)

 「いやいや、成り行きじゃなくて、ファンに背中を押してもらったんですよ」(吉平さん)

 「トークうまくなったなぁ。まるで政治家みたい」(瀬下さん)

 完結までに時間がかかったこともあり、いろいろなことがあったと振り返る面々。まるで同窓会のよう。話を戻して、満席の観客に向け、映画を何回観たかの定番の質問。初回という人もいたが、多くの人が複数回鑑賞しており、10回以上観たという人もいた。そのたびに、「ありがとうございます」と頭を下げていた吉平監督がいい人すぎる。

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 そして、「本作をドルビーアトモスで見たのは初めてという人はいますか」と岩浪さん。かなり多くの人がアトモスでの鑑賞は初めてだったようだ。ここでドルビーアトモスの良さについてのトークが開始。

 「グランドシネマサンシャインのこのシアターは本当によく出来ていて、他作品で音響監修をしたことがありますが、出来が良すぎて何もやることがなかった。ドルビーアトモスの映画を観るなら、ぜひともこの劇場に来てほしい」(岩浪さん)

 「実は僕は池袋が故郷なんですが、そこにこんな素晴らしい映画館ができたのは、とてもうれしいです」(瀬下さん)

 「映画の制作で音響を仕上げるダビング用のシアターで確認していますが、映像も音もほぼそのまま再現できていると思います」(吉平さん)

 「ここが一番いい映画館ですか?」(瀬下さん)

 「どの映画館もそれぞれ個性がありますから、みんな良いですよ。こういう映画館が増えているのは僕らとしてはうれしいですよ。この音を聴いてほしかったので」(吉平さん)

 ドルビーアトモスと言えば、岩浪音響監督はこれまでに8本のドルビーアトモス制作のアニメの音響監督を担当しており、日本のドルビーアトモス音声の映画の半分近くにもなる。

 「こんなにいい映画館があるのだから、ドルビーアトモス制作の映画がもっと増えて欲しいですね。日本ではまだ20本くらいしかないですから。ドルビーアトモス祭りをやりたいですね」

 「吉平監督もアトモス愛が強すぎるんですよ。ビジュアルコンテを見ると、このカットはアトモスのためのものだとわかるくらいです」(瀬下さん)

 「コンテの段階で音響のことはかなり意識していましたね。スタジオでドルビーアトモスの調整などを行なうソフトの使い方を教えてもらって、具体的に指示をしました」(吉平さん)

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 「衛人とガウナのドッグファイトが一番アトモスらしい音響になっています。ドルビーアトモスは従来のように各チャンネルに音を振り分けるだけでなく、個々の音をオブジェクトとして個別に制御して自由に動かせることが特長ですが、ドッグファイトが一番オブジェクトの数が多かったですし、動かしがいもありました」(岩浪さん)

 ドルビーアトモスによる立体的な音響は、宇宙空間で自由自在に動き回るバトルアクションには最適で、自由自在に動き回る感覚が味わえる。こうした臨場感も、ビジュアルコンテの段階から動きやアングルまで音響を意識して設計されたならば、それも当然と感じた。この後は、吉平監督による何度も見ないと気付かないネタが披露された。不動産屋のお姉さんが2回出演しているとか、衛人操縦士のキャラクターのモデルが足りないため、吉平監督の顔をモデルとした操縦士がモブ出演しているとか、総司令と一緒にいる管制官がいつもかぶっているマスクを外しているシーンがあるなど、細かいネタが盛りだくさん。映画館の大画面でないとなかなか見つけられないのでぜひとも何度も足を運んで確認してほしい。

 「ネタが細かすぎて上映しながら、吉平監督がコメントしながらポインターで教えて欲しいね。DCP上映で一時停止とかもありで、コメンタリー上映やりましょう」(岩浪さん)

 「細かいネタを仕込んだだけではないですよ。劇場版ということで、モデリングはすべて作り直しました。時間が経過しているので今のアニメの顔にしたいという思いもありましたし、お客さんも含めたみんなの見たいシドニアを目指してすべて修正しています」(吉平さん)

 そして、TVシリーズ1期の監督の静野孔文さんからのビデオメッセージが上映。上映会の前に瀬下さんが別件の打ち合わせで会っていたとのことで、急遽iPhoneで撮影・編集したとか。

 「『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の大ヒットおめでとうございます。1期で編集だった吉平さんがなつかしいです。あの編集があったから、この完結につながったと思います。岩浪さんも1期からずっと音響監督をしてくれてありがとうございます」(静野さん)

 「アトモス愛もたっぷりですが、スタッフみんながんばってくれた作品です。シドニアのスタッフはみんな家族のようにつながっていて、みんな応援してくれています。これもシドニア愛ですね」(瀬下さん)

 そして、フォトセッションとともに最後の挨拶が行なわれた。東亜重音トリオの撮影だけでなく、吉平監督の意向で、観客席のみんなと一緒に掌位ポーズでの撮影も敢行した。

 「この後も、劇場作品を2~3本やる予定で、そのうちの1本はアトモスです。がんばって作りますので、また見に来てください」(岩浪さん)

 「こんなにたくさん満席になるほど集まってくれてありがとうございます。今はポリゴン・ピクチュアズを離れていますが、シドニア制作の頃をよく思い出します。それを力にして新しい作品に注いでいます。みんなずっと家族です。これからもシドニアをよろしくお願いします」(瀬下さん)

 「シドニアは僕にとって特別な作品です。念願叶って舞台挨拶もできました。たくさん集まっていただいてありがとうございます。コメンタリー上映はもちろん、シドニアのスピンオフも作りたいです。ファンの声に支えられてきた作品ですので、これからもよろしくお願いします」(吉平さん)

 作り手の愛がたっぷりと詰まった『シドニアの騎士 あいつむぐほし』はまだまだ上映中。SFアニメのスケールを超えた壮大な愛に満ちた作品なので、誰でも楽しめるはず。ドルビーアトモスの立体的な音響の迫力がたっぷり味わえることも保証する。ぜひとも何度も楽しんでほしい。

『シドニアの騎士 あいつむぐほし』
大ヒット上映中
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局
https://sidonia-anime.jp/

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