そのカッティングエッジな技術と優れた音質により、近年、オーディオとAVそれぞれのファンから人気のスピーカーブランド、エラック。そんな同社から、新しいSolano280シリーズが登場した。2014年に発売された260LINEの後継にあたるラインだ。Solanoという言葉はスペイン語で〝風〟という意味があるが、本機の製造地かつ現在のエラックの所在地であるドイツの港町・キールで世界最大級のセーリングイベントが行なわれていることから名づけられそうだ。

 ラインナップは、2ウェイ・ブックシェルフ型のBS283、3ウェイ・フロア型FS287、センタースピーカーCC281の3種類だ。最近のエラックのスピーカーは、モデルチェンジの際に上位シリーズの技術をスライド投入しているのが強みで、いずれのモデルも高いコストパフォーマンスを備える。

 本シリーズも多分に漏れず、上位のVELA400シリーズの技術が多数搭載されている。エンクロージャーは堅牢なアルミをベースに採用し、低重心と制振姓を向上。音響解析によって理想的な放射特性を実現するウェーブガイドを搭載するほか、さらにトゥイーターとウーファーユニットの固定にアルミ・ダイキャスト製バスケット・フレームを採用することで、制振性とS/Nを改善している。

 トゥイーターにはエラック人気を牽引するJET Vを搭載する。独自開発したべンディング・ウェイブ式で、一般的な25mm径ドーム型トゥイーターに比べて約10倍の面積を持つ。ウーファーには、ペーパーコーンとアルマイト処理されたアルミニウムのハイブリッド構造の「NEW AS CONE」を採用する。

 また、ネットワーク周りにも抜かりはない。磁気歪みを大幅に排除した大型空芯コイルを搭載したウーファー用基板と、高品位なパーツで構成されたトゥイーター用基板をそれぞれ独立して搭載。内部配線は定評のあるヴァン・デン・ハル製を採用し、バイワイヤリング接続にも対応する。

弦やビートが伸びやかでAVソースも快適に聴ける

 今回はBS283とFS287を使い、音と映像付ソースの両環境で2chのクォリティチェックを実施した。オーディオとビジュアルの両方を探求している本誌ならではのテストであり、音楽ジャンルに加えてセリフや環境音の明瞭度など、多岐にわたる環境でテストを行なうことで、スピーカーの持つ能力を多角的に確認できる。

 まずは音楽再生から。アンプにデノンPMA-SX1リミテッドを用い、アンドレア・バッティストーニのオーケストラ名曲集から「交響詩《はげ山の一夜》」のハイレゾファイルをBS283で聴いた。一聴して再生能力の高さがうかがえる、2ウェイを感じさせない高域から低域までワイドレンジな表現。JET Vの特徴でもある透明感や、伸び伸びとした高域による弦楽器の表現も絶品。サウンドステージは広大で、各楽器の配置が見えてくるようだ。本年度のグラミー受賞作のビリー・アイリッシュ「エブリシング・アイ・ウォンテッド」では、彼女らしいかなり低いレンジまで伸びた立体的なベースの再生が秀逸で、低域表現が優れていることが印象に残った。またFS287では、BS283の音を踏襲しながらも、ユニット数が増えて中低域の両方に余裕が生まれたことによる絶対的な情報量向上と、低域の伸びが聴き取れた。

 続いて、バイワイヤリング接続を両モデルで試したのだが、これがツボにはまった。一言で書くなら、より鮮烈な音に大きく変化する。さらに、元々優れたレスポンス表現の低域のダンピングが上がるのだ。

 次にJVCのプロジェクターDLA-V9RとパナソニックDP-U9000を用いた環境で、両スピーカーをそれぞれ2チャンネルで使用した。『フォードvsフェラーリ』の幾度となく視聴したチャプター1のレースシーンは、シフトチェンジの際のギアがミッションが入る部分の音の質感がリアルで、エンジンのタペットノイズの分解能も高い。音の飛び出しがよく、スクリーンの関係上左右のスピーカー間を広くしても音像がしっかりとセンター定位することは特筆点だった。分解能が上がり低域表現に長けるFS287は、オーディオビジュアル環境でさらに強みを感じさせられた。

 BS283とFS287は、近年聴いた同価格帯のスピーカーの中でも大変完成度が高いモデルだ。また音が前へ飛び出してくるので、映像ソースとも相性がよかった。仕上げやビルドクォリティの高いキャビネットも魅力である。

画像: 弦やビートが伸びやかでAVソースも快適に聴ける

SPEAKER SYSTEM
ELAC
Solano BS 283
¥240,000(ペア)+税 ※専用スタンドLS50 ¥65,000(ペア)+税

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.4kHz
●出力音圧レベル:85dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W190×H331×D248mm/8kg

ELACの本社工場でハンドメイド生産される、ベンディング・ウェイブ方式のトゥイーターがJET V。SolanoのJET Vは、VELA 400シリーズと同様に、アルミ・ダイキャスト・フレームに最新のウェイブ・ガイドを装着している。ウーファーはやはりVELA 400シリーズに採用されたアルミ・ダイキャスト製バスケットを装着した、高剛性フレーム構造のNEW AS CONEだ

画像: SPEAKER SYSTEM ELAC Solano BS 283 ¥240,000(ペア)+税 ※専用スタンドLS50 ¥65,000(ペア)+税

Solano FS 287
¥460,000(ペア)+税

●型式:3ウェイ3スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー×2
●クロスオーバー周波数:450Hz/2.4kHz
●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W260×H985×D300mm/19kg
●問合せ先:(株)ユキム TEL. 03(5743)6202

両モデルの背面。どちらもバスレフポートは壁の影響を受けにくいダウンファイヤータイプを採用している(FS287は上部にもうひとつバスレフポートがある)。スピーカーターミナルは共通で、バイワイヤリング接続に対応。今回はシングル/バイワイヤリング接続の両方を試した。また、ジャンパープレートを自作ケーブルに交換するだけでも音質向上効果を期待できる

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