ひとつのアルミニウムの塊から押し出し成形されたエレガントな外観で根強い人気を誇るスイスのスピーカーブランド、ピエガ。アルミ製エンクロージャーは、デザインの可能性を拡げるだけでなく、スピーカーの本質、サウンド面にも大きな恩恵をもたらす。

 具体的には、一般的な木材を利用したスピーカー設計に比べると、圧倒的な薄さで、しかもはるかに剛性の高いエンクロージャーの成形が可能。つまりスリムな外観に仕上げつつ、筐体内部の容積が充分に確保することができるため、結果として、見た目以上に大容量の大型スピーカーシステムが構築できるというわけだ。

 ちなみに「PIEGA」はイタリア語でカーテンなどの「ヒダ」や「折る」という意味。この加工法はリボン型トゥイーターの振動板部分、つまり薄いアルミ箔の強度を高めるために使われており、ピエガがリボン型トゥイーター製造をルーツとするブランドであることを物語る。

 

独自リボン型高域ユニット「AMT-1」トゥイーター搭載

 ここで紹介するACEシリーズはTMicroシリーズの後継、同社エントリーモデルとして開発された新製品である。エンクロージャーはもちろん精緻なアルミ製、トゥイーターについても独自設計のリボンタイプとしている。

 今回、取材したのは、小型のブックシェルフタイプACE30と、フロア設置のトールボーイタイプACE50という主力の2モデルだ。トゥイーターにはいずれも繊細で透明感に富んだ高域再生を約束するAMT-1リボンタイプを搭載。

 

画像1: 外観の美しさは音へのこだわりから。絶品の声が魅力の逸品スピーカー PIEGA『ACE30』『ACE50』

※1 ブラック/ホワイト仕上げは¥159,500(ペア、税込)
※2 ブラック/ホワイト仕上げは¥385,000(ペア、税込)
●問合せ先:フューレンコーディネート TEL 0120-004884

 

 ACE30ではそこにロングストロークと高耐入力を両立させ、小口径ながら優れた低音再生能力を獲得したMDS(Maximum Displacement Suspension)ウーファーを追加し、バスレフ型の2ウェイシステムを完成させている。ACE50についてはMDSウーファーに加えて、その下の帯域を受け持つ新設計のMDS-Bウーファー2基が追加され、4スピーカーによるバスレフ型3ウェイシステムとしている。

 ユニットは前作のTMicroシリーズをベースにしているが、両モデルのエンクロージャーを上から見ると、押し出し成形による筒の形状が変更されていることに気がつく。

 従来通り、馬蹄形に近い形状だが、背中方向への絞り具合がわずかにゆるやかになり、全体としてはボリュウム感を増している印象だ。さらにトールボーイタイプACE50については、円形のフロアスタンドが追加され、スマートなシルエットが際立ち、より軽快な雰囲気になった。

 

万能タイプのACE30。声のニュアンスが豊かで艶っぽい

 では実際のサウンドやいかに。まず可愛らしいデザインが特徴的な2ウェイのブックシェルフ、ACE30から聴いていこう。まず高音質ストリーミング配信Amazon Music HDから、女性ヴォーカル、ピアノ、ジャズトリオと、普段から聴き慣れた楽曲を選んで聴いてみたが、雑味のない透明感に溢れたサウンドが特徴的で、実に堂々として、軽やかだ。高さ方向、奥行方向への空間描写も意欲的で、中域から低域にかけてのグラデーションの描き分けも不満を感じさせない。

 

画像2: 外観の美しさは音へのこだわりから。絶品の声が魅力の逸品スピーカー PIEGA『ACE30』『ACE50』

SPEAKER SYSTEM
PIEGA
ACE30
¥148,500(ペア、税込/シルバー仕上げ)

シリーズ最少モデル。繊細かつ反応のよい高域リボンユニットと、強靭なアルミニウムボディにマウントされた12cm低域ユニットの組合せで、躍動感に満ちた音を聴かせる。重低音は狙っていないがスリムな外観から想像するよりも充実した低音が得られる完成度の高いモデルだ

 

画像: 万能タイプのACE30。声のニュアンスが豊かで艶っぽい

 得意、不得意のない万能タイプのスピーカーだが、なかでも私が感動したのは、「花束を君に」を歌う宇多田ヒカルのビブラートの美しさだった。少しハスキーで、要所、要所に細かいビブラートをかけて聴かせるのが彼女の特徴だが、その響きの細かさ、繊細さをあるがままに再現するのは意外に難しい。

 スピーカーシステムとしてのS/Nの善し悪しが問われるわけだが、ACE30で聴く彼女の声は実に艶っぽく、ニュアンスが豊かで、ざらつき感は皆無。これには反応が素早く、微小な信号まで克明に描き出すAMT-1リボントゥイーターが少なからず貢献しているとみて間違いない。

 

重厚な低音と反応のよさを両立したACE50は映像との相性も上々だ

 続いて足元に1軸のスタンドを加えたデザインが新鮮なACE50を聴く。明るさ、軽快さよりも、肌合いのいい重厚な響きを持ち味にしながら、温かみのあるエネルギーをジワッと放出させるような味わい深いサウンドが持ち味だ。

 輪郭を際立たせることはなく、ピアノのタッチは明確で、音の芯、骨格も曖昧にならない。しなやかで、独特の粘りを伴ない、体を包み込むように拡がる低音が、実に新鮮。見た目以上に大型のスピーカーが鳴っているイメージだが、小口径ユニットならではの反応の素早さ、リズム感のよさは健在。ちょっと不思議な感じだ。

 最後に一発撮りパフォーマンスで注目を集めているYouTube「THE FIRST TAKE」から、鈴木雅之と鈴木愛理のデュエット曲「DADDY! DADDY! DO!」を、テレビを中央に置き再生してみたが、その声の生々しいこと。

 低音に余裕があり、定位は明確。男性と女性、さらに音量によって、音像が立つ位置が変わって聴こえることも少なくないが、このスピーカーの場合、低く太い鈴木雅之の声も、透明な輝きを放す鈴木愛理の声も、音量に関わらず、揺らぎがなく、映像に自然に定位する。

 空間をさまよい、肌をなでるかのように拡がっていく優しい響きは、高剛性のエンクロージャーとリボン型トゥイーターの共演のなせる技。男女問わず、ここまで安定した生成りの声を再現できるスピーカーは貴重だ。

 

SPEAKER SYSTEM
PIEGA
ACE50
¥363,000(ペア、税込/シルバー仕上げ)

美しいアルミニウムのフィニッシュに仕立てられたパイプ状のスピーカーだが、12cmユニット3基とリボン型ユニットのコンビでワイドレンジ再生が得られる。本体の細さは、キャビネットの振動の少なさにつながり、低音の汚れが抑制され、水の波紋のように音が広がっていく効果も期待できる。

画像4: 外観の美しさは音へのこだわりから。絶品の声が魅力の逸品スピーカー PIEGA『ACE30』『ACE50』

ACE50の底部。スピーカー端子はバナナプラグやYラグ端子に対応したシングルワイヤリング接続専用品を装備している。底板は直径25cmの円形。本体とは6cmほどのパイプで少し浮かすような格好で固定されていて、これは音のヌケの向上にも役立っている

 

 

 

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