フランク・シナトラ(1915〜1998)は、20世紀を代表するエンターティナーのひとりだ。音楽ファンのみならずオーディオファイルからも愛されてきた、イタリア系アメリカ人の歌手である。かつて米国モービルフィデリティは、彼のキャピトル時代のアルバムを集めた豪華な16枚組ボックスLPセットを限定発売したことがある。

 ステレオサウンドは、オーディオファイルを対象に高音質のSACDやCD、LPレコードを制作している。フランク・シナトラの作品は、昨年『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』のシングルレイヤーSACD+CDを第一弾としてリリース。ラスヴェガスのサンズ・ホテルズ&カジノでのライヴ(1966年)は、優れたパフォーマンスと臨場感の豊かさで好評を博している。

名曲・名演奏・名録音の三拍子揃った
シナトラ絶頂期の名作をSACDで!

 ここで紹介するのは、ステレオサウンドが手掛けるシナトラの第二弾。名盤の誉れ高い『シナトラズ・シナトラ』(1963年)と『スウィング! シナトラ=ベイシー=クインシー』(1964年)、そして後年の傑作である『マイ・ウェイ』(1969年)の3作品が、ハイブリッドSACDでリリースされたのだ。前述のライヴを含めたアルバムのオリジナル盤(LPレコード)は、シナトラがワーナー・ブラザース・レコーズと共同で設立した個人レーベル「リプリーズ」からのもの。リプリーズはシナトラが自由に展開できるレーベルとして1960年に誕生したのだが、63年にはワーナーが権利を買い取り、現在も主力レーベルとして存続させている。

 これらの原盤を保有しているのはユニバーサル ミュージック。オリジナルのアナログマスターを192kHzサンプリング/24bitに変換したデジタルマスター音源を基に、ソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二氏がていねいにマスタリングしている。音質的な配慮として盤面がグリーンカラーに仕上げられているのも嬉しい配慮である。

 シナトラの魅力のひとつに、マイクロフォンの特性を知り尽くしたような声ノリのよさが挙げられよう。彼のキャリアは第二次世界大戦の前から始まっており、数々のステージとレコーディングでジャズ・シンガーとしての経験を積んでいった。マイクロフォンの発達により声量の大きさは問われないようになり、声楽家の朗々とした声とは対照的に、会話するように唄う「クルーナー唱法」が台頭するようになった。シナトラはまさにその代表格。親しみやすく表情に富んだ彼の歌声は、スッと耳に入ってくる。

画像1: 名曲・名演奏・名録音の三拍子揃った シナトラ絶頂期の名作をSACDで!

『マイウェイ[50周年エディション]/フランク・シナトラ』
 (ユニバーサルミュージック/ステレオサウンドSSVS-019) ¥4,950(税込)
  ●初出:1969年リプリーズ
  ●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/3401

画像2: 名曲・名演奏・名録音の三拍子揃った シナトラ絶頂期の名作をSACDで!

『スウィング!シナトラ=ベイシー=クインシー/フランク・シナトラ&カウント・ベイシー』
 (ユニバーサルミュージック/ステレオサウンドSSVS-018) ¥4,950(税込)
  ●初出:1964年リプリーズ
  ●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/3400

画像3: 名曲・名演奏・名録音の三拍子揃った シナトラ絶頂期の名作をSACDで!

『シナトラズ・シナトラ/フランク・シナトラ』
 (ユニバーサル ミュージック/ステレオサウンドSSVS-017) ¥4,950(税込)
  ●初出:1963年リプリーズ
  ●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/3399

 ▶︎3点共通
 ●仕様:ハイブリッドSACD/CD
 ●マスタリング・エンジニア:鈴木浩二(ソニー・ミュージックスタジオ)
 ●問合せ先:㈱ステレオサウンド 通販専用ダイヤル
       03(5716)3239(受付時間:9:30〜18:00 土日祝日を除く)

 それでは、ハイブリッドSACDとしてリリースされた3作品の魅力を、年代順に紹介していこう。『シナトラズ・シナトラ』は、シナトラが好きな12曲のスタンダードナンバーをネルソン・リドル指揮のオーケストラをバックに歌った好アルバム。ネルソン・リドルと彼のオーケストラは伴奏に定評があり、たとえばリンダ・ロンシュタット『ホワッツ・ニュー』でもお馴染みのはず。このアルバムでは厚手の音でスイングするジャジーな躍動感がいい。歌詞を大切に唄うシナトラらしいクルーナー唱法は大きな魅力で、個人的には最初の「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」や愛娘のナンシー・シナトラを歌った「ナンシー」、続く「ウィッチクラフト」などが特に好きな曲。解説はステレオサウンド誌などで活躍する小野寺弘滋氏が担当している。

 『スウィング! シナトラ=ベイシー=クインシー』は、カウント・ベイシー・オーケストラとの共演。全10曲のアレンジはクインシー・ジョーンズが担当している。彼はハワイに滞在していたシナトラに呼ばれて打合せを行ない、短期間でアルバムの構想を練りアレンジを仕上げたといわれている。冒頭の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は実に素晴らしいし、「ハロー・ドーリー!」は小気味よいスインギーな曲。ここでの息の合ったベイシー・オーケストラとのコラボレーションは、『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』に続いていく。同じビッグバンド編成でもネルソン・リドル楽団とカウント・ベイシー楽団では伴奏のスタイルが大きく異なるので、その対比を音で味わうのも一興だろう。解説はジャズ喫茶「ベイシー」店主の菅原正二氏。

 『マイ・ウェイ』は、ジャズ・シンガーとしてのシナトラに、コンテンポラリーなポップス・シンガーという新たな魅力を開花させたアルバムだ。これまでフランク・シナトラの作品を聴いたことがなかったという読者諸兄に、私はこの『マイ・ウェイ』から聴くことをオススメしたい。彼の真骨頂といえる4ビートの「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」や「ハレルヤ、アイ・ラヴ・ハー・ソー」が楽しめるし、「マイ・ウェイ」や「イエスタデイ」に代表される8ビートのポップスが彩りを添えている。しかも、このハイブリッドSACDは2019年にリリースされた『マイ・ウェイ』の50周年記念エディション版。オリジナルの10曲に加えて、ボーナス・トラックの「マイ・ウェイ」が4曲追加されているのだ。ウィリー・ネルソンとのデュエットとルチアーノ・パヴァロッティとのデュエット、そして1971年と1987年のライヴ音源という豪華な内容である。解説は私が担当させていただいた。

 192kHzサンプリング/24bitのPCMハイレゾ・デジタルマスターからのDSDリマスタリングを担当した鈴木浩二氏は、オリジナルの音質を最大限に尊重してバランスを整えるなどの音質調整にとどめたという。1960年代のアナログマスターテープは多くが劣化し始めているといわれている。その意味でも、ステレオサウンド制作のハイブリッドSACDによるフランク・シナトラのアルバム群は貴重な存在といえよう。

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