画像: ヤマハ NS-3000 ¥900,000(ペア・税別) ●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型●使用ユニット:ウーファー・16cmコーン型、トゥイーター・3cmドーム型●インピーダンス:6Ω(最小4.6Ω)●感度:87dB/2.83V/m●クロスオーバー周波数:2.8kHz●寸法/重量:W244×H394×D326mm(突起含む)/13.1kg●備考:写真のスピーカースタンドSPS-3000(¥200,000ペア・税別)は別売

ヤマハ
NS-3000
¥900,000(ペア・税別)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型●使用ユニット:ウーファー・16cmコーン型、トゥイーター・3cmドーム型●インピーダンス:6Ω(最小4.6Ω)●感度:87dB/2.83V/m●クロスオーバー周波数:2.8kHz●寸法/重量:W244×H394×D326mm(突起含む)/13.1kg●備考:写真のスピーカースタンドSPS-3000(¥200,000ペア・税別)は別売

上位機の思想を受け継ぎながら、小型化の利点を生かす

 これはNS-5000の設計思想を受け継ぎつつ、小型ブックシェルフの利点を生かすべく設計された最新の小型スピーカーだ。

 2ウェイ構成のリアバスレフ方式で、トゥイーターには上級機NS-5000と同じ3㎝ドーム型ユニットを採用。ウーファーは新開発の16㎝径ユニット。センターキャップレスで、コーン形状は傾斜のラインが滑らかにS字に変化するコンケーブ型を採用。2ユニットとも振動板にZAYRON(ザイロン)素材を採用。これは東洋紡の新素材で、ベリリウムの音速とアラミド繊維の内部損失を併せ持つ繊維素材という。磁気回路はいずれもフェライト磁石を採用する。こうした特徴は、すべてNS-5000譲りだ。

 エンクロージュアの成り立ちも上位機と同様。北海道産白樺の積層合板で、すべて20㎜厚。外面はピアノ塗装仕上げ。内部の音響的な配慮も上位機譲りで、まず各ユニット振動板の管共鳴現象を抑制するための共鳴型吸収管である R.S.チャンバーをユニット後方に装着。それに、エンクロージュア内部をあえて直方体として定在波を特定の周波数に集約し、これを吸収するアコースティックアブソーバーを採用。これで内部の吸音材の量を大きく減らすことになり、微小な振幅の損失を減らすねらいだ。これらはホール音響の手法に似ている。スピーカー端子はシングルワイヤー。分割ネットワークの部品は、コンデンサーがドイツのムンドルフ製、内部配線をPC-Triple Cとするなど高級品を採用。これらも上位機と同様。

 別売純正スタンドは厚い鉄板とMDFからなり、重量15.3㎏という剛の者。音の回り込みに配慮した丸みを帯びた形状の2本の支柱が、いかにも音響製品らしい洗練味を帯びている。

画像: ↑ウーファーとトゥイーターの振動板はベリリウムの音速とアラミド繊維の内部損失を併せ持つザイロンにモネル合金蒸着コーティングを施した同社独自のもの。ソフトドーム型トゥイーターユニットは左右でミラー対称に配置される。

↑ウーファーとトゥイーターの振動板はベリリウムの音速とアラミド繊維の内部損失を併せ持つザイロンにモネル合金蒸着コーティングを施した同社独自のもの。ソフトドーム型トゥイーターユニットは左右でミラー対称に配置される。

画像: ↑入力端子はバナナプラグ対応ねじ式で真鍮削り出しのシングルワイヤー構成。エンクロージュアは北海道産白樺の積層合板製で、ヤマハならではの黒鏡面仕上げピアノフィニッシュ。

↑入力端子はバナナプラグ対応ねじ式で真鍮削り出しのシングルワイヤー構成。エンクロージュアは北海道産白樺の積層合板製で、ヤマハならではの黒鏡面仕上げピアノフィニッシュ。

画像: ↑トゥイーターユニット背面には、高域の不要共振を打ち消すR.S.チャンバーを装着。独自の音響解析に基づく2本の特殊形状管が不要共振を打ち消し、ユニット本来の周波数特性を発揮する機構。

↑トゥイーターユニット背面には、高域の不要共振を打ち消すR.S.チャンバーを装着。独自の音響解析に基づく2本の特殊形状管が不要共振を打ち消し、ユニット本来の周波数特性を発揮する機構。

画像: ↑内部の定在波を特定の周波数に集約し共鳴感を使って打ち消す、独自のアコースティックアブソーバー。本機専用に設計された新形状のものを採用。

↑内部の定在波を特定の周波数に集約し共鳴感を使って打ち消す、独自のアコースティックアブソーバー。本機専用に設計された新形状のものを採用。

小型モニター系の中でも最高ランクの再生能力

 どのジャンルの音楽を聴いても、高いS/N感と見通しの良い音場の形成を感じる。といっても「振動系の初動感度が低く小音量ではノイズゲートのように働くためS/Nがよく聞こえる」という水準ではない。微細な直接音の応答性はもちろん、無音の地平線にゆるりと吸い込まれるような間接音にしても減衰カーブが実によく再現されるのだ。その上で中高域の明敏な応答性や和声の醸成感が成立するわけで、これは小型モニター系の最高ランク群に参加する資格を持っている。

 特に声の応答性が優秀で、実在感表現が得意だ。プレスリー初期のゴスペル集『心のふるさと』など、主役のビロード質の美声だけでなく、バスの低声もよく深掘りされて録音現場の空気が時空移動してきた印象となる。また、ジャズ系のビート感は低音の躍動感により生気を与えられている。ピアソラのタンゴは鋭い刻みに推進力と求心力がある。その1970年のライヴ音源など、暗闇を閃光が切り裂くような鮮鋭感と濃い情調が合成されて、生々しい姿態となる余韻に聞き惚れてしまう。誰しもこうした臨場感再生の世界にたやすく拉致されるだろう、この秀作を歓迎する。

画像: ↑NS-3000のユニットを確認する吉田氏。

↑NS-3000のユニットを確認する吉田氏。

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