フェーズメーションのアナログオーディオ製品は、高評価の頂点モデルとともに価格レンジを広げて製品ラインアップを充実させてきた。ここでは価格を抑えたMCカートリッジと昇圧トランス、それに加えてカートリッジや昇圧トランスの消磁器についてリポートする。

 MCカートリッジのPP200は「トップモデルのエッセンス」を感じられるベーシックモデルという位置付けだ。ボディの外観は上位機と似ているが色は黒ではなく紺色。またボディの材質は上位機のようなジュラルミン削り出しではなく、アルミ削り出しとなる。ただしカンチレバーの無垢ボロン、ラインコンタクト針の形状、磁気回路構成材料の純鉄などはPP300と同様。マグネットは上位機のサマリウムコバルトではなく、ネオジムを使用。

 昇圧トランスのT550は型番と外観、価格からしてT500の後継機だ。筐体は前作と同じであり、シャーシベースは1.2mm厚銅メッキ鋼板、1.6mm厚銅メッキ鋼板のカバー、そしてフロントパネルは10mm厚アルミスラント仕様。さらにステンレスの非磁性体ねじにて組み上げるという充実ぶり。トランスのコアは0.2mm厚の78%パーマロイ材を採用。T500の方は材料の構成は同等で、内部でのトラン支持方法が練り上げられた。シールド系に音声信号を流さないバランス伝送を基本としていることに留意したい。

 PP200は、まずRCA端子にてEA2000の昇圧トランスで試す。鮮鋭感や分離感を誇示する傾向ではないが、充実した成分構成の音が自律的に音像を広い立体音場の中にあらしめる。また中低域の押し出しのよさ、高域の密度感をバランスよく提示する。これはジャンルを問わずに、声の表情と弱音をよく描く。

 次にT550と組み合わせる。これはほどよく奥行きを感じさせる音場感となり、その中を埋める中低域の充実が印象深い。ピアソラのタンゴなど妖美を放つバイオリンがしっかり結像し、男声の語勢も抑揚も滑舌もよく押し出されて流れが良好。

 この組合せでバランス接続に変更すると、中高域が明瞭となり緻密な質感も向上。ナロウな録音からも生気のあるタッチで奏者の語法がよく伝わるようになる。カートリッジを同社製PP2000にすると、鮮鋭感や瞬発力、スケール感は大きく向上して価格帯の違いがあきらかになる。ともあれ、小規模な再生システムでほどよい鮮度と表現域を展開するPP200の魅力は独自の境地といえる。

 消磁器のDG100は、指数関数的な減衰振動の発生器。これにより帯磁による音質劣化を防ぐわけだ。空芯でないMCカートリッジや針部分を外せるMMカートリッジ、そして昇圧トランスの消磁に有効となる。実際に試してみると、たしかに鮮度や微少情報の再現力、音像の描写力が向上する。これはアナログディスクのファンにとって、必需品と言っていい音質改善アイテムである。

画像1: フェーズメーション上位機の思想を継承するベーシックモデル、PP200、T550を聴く

Cartridge
フェーズメーション
PP200
¥99,000

●発電方式:MC型●出力電圧:0.3mV以上(1kHz、5cm/sec)●インピーダンス:4Ω●適正針圧:1.7g~2.0g●自重:10.5g●針交換価格:¥59,400●備考:ネオジムマグネット採用
●問合せ先:協同電子エンジニアリング(株)TEL. 045(710)0975

画像2: フェーズメーション上位機の思想を継承するベーシックモデル、PP200、T550を聴く

Step Up Transformer
フェーズメーション
T550
¥100,000

●昇圧比:26dB●入力インピーダンス:1.5Ω〜40Ω●負荷インピーダンス:47kΩ●入力端子:1系統(RCAアンバランス/XLRバランス)●寸法/重量:W174×H90×D173mm/2.1kg●備考:金メッキ端子採用

画像3: フェーズメーション上位機の思想を継承するベーシックモデル、PP200、T550を聴く

Degausser
フェーズメーション
DG100
¥25,000

●形式:MC昇圧トランス/鉄芯入りMCカートリッジ用消磁器●出力発信周波数:440Hz±5%●出力電圧:0.7Vrms以上●出力波形:約20秒間の指数関数減衰波形●出力端子:RCAアンバランス×2●寸法/重量:W69×H28×D121mm/172g●電源:9V角形乾電池●備考:カートリッジ端子接続用クリップ付きプラグ付属

画像: カートリッジPP200は振動系が露出する構造。φ0.26mmのボロン無垢カンチレバーやダイアモンドスタイラスチップ、6N無酸素銅コイルなど上級機の技術を継承する一方で、振動系の不要振動をコントロールする新形状のアルミ削出しボディを採用。針先はラインコンタクト形状で、曲率半径は0.03×0.003mm。
カートリッジPP200は振動系が露出する構造。φ0.26mmのボロン無垢カンチレバーやダイアモンドスタイラスチップ、6N無酸素銅コイルなど上級機の技術を継承する一方で、振動系の不要振動をコントロールする新形状のアルミ削出しボディを採用。針先はラインコンタクト形状で、曲率半径は0.03×0.003mm。
画像: 昇圧トランスT550のリアビュー。入力端子はRCAアンバランスとXLRバランスの2系統。セレクターは装備しないのでどちらか一方を使用する。出力はRCAアンバランス1系統。


昇圧トランスT550のリアビュー。入力端子はRCAアンバランスとXLRバランスの2系統。セレクターは装備しないのでどちらか一方を使用する。出力はRCAアンバランス1系統。

画像: T550の内部。自社開発の特殊分割巻線構造を採用した昇圧トランスは、0.2mm厚の78%パーマロイ材による大型EIコアに低損失極太銅線を巻き上げる。シャーシは上級機T1000のデザインを受け継ぎ、1.2mm厚銅メッキ鋼板シャーシベース、10mm厚アルミスラントパネルなどしっかりとした筐体構造。トランス自体をハイダンピングラバー材でフロートして振動対策を施している。

T550の内部。自社開発の特殊分割巻線構造を採用した昇圧トランスは、0.2mm厚の78%パーマロイ材による大型EIコアに低損失極太銅線を巻き上げる。シャーシは上級機T1000のデザインを受け継ぎ、1.2mm厚銅メッキ鋼板シャーシベース、10mm厚アルミスラントパネルなどしっかりとした筐体構造。トランス自体をハイダンピングラバー材でフロートして振動対策を施している。

画像: デガウザーDG100に付属のクリップ付きプラグ。アナログプレーヤー出力がRCA端子の場合は本機のRCA端子に接続して消磁できる。出力がXLRバランスの場合は本ケーブルでカートリッジのピン端子に直に接続して消磁を行なう。

デガウザーDG100に付属のクリップ付きプラグ。アナログプレーヤー出力がRCA端子の場合は本機のRCA端子に接続して消磁できる。出力がXLRバランスの場合は本ケーブルでカートリッジのピン端子に直に接続して消磁を行なう。

画像: 同社カートリッジPP2000で、昇圧トランスT550を試聴する吉田氏。


同社カートリッジPP2000で、昇圧トランスT550を試聴する吉田氏。

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