KEFから今年2月にワイヤレスイヤホン「Mu3」(¥26,400、税込)が発売された。同ブランド初のワイヤレスイヤホンで、しかもアクティブノイズキャンセリング機能搭載ということで注目を集めている。今回、Mu3の試聴モデルを1ヵ月ほど取材できたので、そのインプレッションをお届けしたい。

 まずKEFについて紹介しておくと、同社は今年創業60周年を迎えるイギリスのオーディオブランドで、ハイファイスピーカーやワイヤレススピーカー、ヘッドフォンなどの魅力的なオーディオ機器をラインナップしている。

 Mu3もそのひとつで、「アーティストが意図した通りにサウンドを提供する最高品質の製品を製造する」というこだわりを体現しているようだ。

●ノイズキャンセリング機能付きBluetoothワイヤレスイヤホン
KEF Mu3 ¥26,400(税込)

画像: KEF初のワイヤレスイヤホン「Mu3」で女性ヴォーカルを聴く。ヘビロテの楽曲が、過去ナンバーワンのクリーンな声で再生された

●ドライバーユニット:8.2mmダイナミック型
●再生周波数帯域:20Hz〜20kHz
●インピーダンス:16Ω
●対応コーデック:SBC、AAC
●再生時間:9時間(本体)、15時間(充電ケース使用時)
●寸法/質量:W24.5×H17.5×D26.3mm/5.8g(イヤホン)、W33.5×H62×D52mm/46.8g(充電ケース)

 一番の特徴は、同ブランドの最上級スピーカー「MUON」やBluetoothスピーカー「MUO」のデザインを手がけたRoss Lovegrove(ロス・ラブグローブ)氏による曲線的なフォルムだろう。本体、ケースとも美しいメタリック調に仕上げられている。

 イヤホン本体は人間工学に基づいたコンパクトなデザインを採用。実際に装着してみると、耳へのフィット感も良好で、通勤時に使っても抜け落ちるようなこともなかった。ちなみにイヤーチップはラージ/ミディアム/スモール/ショートの4つが付属しているので、自分の耳にあった大きさも選びやすいはず。

 その点について、Mu3は落下防止だけでなく、音の面でもできるだけしっかり固定した方が好ましいので、イヤーチップ選びには注意していただきたい(理由は後述します)。

 搭載されたドライバーは8.2mmのフルレンジ。同社のエンジニアリングチームによってチューニングされ、豊かなミッドレンジ、詳細な低音、鮮明な高音を備えた、まとまりのあるサウンドを実現したとのことだ。

画像: パッケージは落ち着いたデザインを採用

パッケージは落ち着いたデザインを採用

 BluetoothのコーデックはSBC(48kHz/16ビット、342kbps)とAAC(48kHz/24ビット、320kbps)に対応。また再生機とイヤホンL/Rはそれぞれダイレクトにつながる方式なので、左右間の遅延も発生しないそうだ。

 Mu3は特別にチューニングされたANC(アクティブ・ノイズキャンセレーション)技術が搭載されている点もポイントだろう。外部ノイズを遮断する「ANCオン」と、内蔵マイクで外部の音を拾って音楽の邪魔をしないレベルで再生する「Ambient」、「ANCオフ」の3つのモードがあり、左イヤホンのスイッチで切り替えが可能だ。

 まずは編集部に届いたMu3を取り出してみる。モノトーンの箱を空けると、中央にMu3が収められている。その中央に置かれた充電ケースを手に取ると、思った以上にずっしりしている。実際の重さは58.4g(イヤホン5.8g×2+ケース46.8g)と一般的なワイヤレスイヤホンとさほど変わらないのだが、サイズが小ぶりなためか、あるいはメタル仕上げのためか、重量があるように思えてしまった。

 その中に収まっているイヤホン本体も中身の詰まった印象。曲線的なデザインの本体背面には物理ボタンが備えられている。ここを押すことで先述のANCモードの切り替えやボリュウム調整、着信時の通話操作などが可能だ。

画像: イヤホン本体は丸みを帯びた可愛らしいデザイン。中央の「KEF」ロゴマーク部分がボタンになっている

イヤホン本体は丸みを帯びた可愛らしいデザイン。中央の「KEF」ロゴマーク部分がボタンになっている

 イヤホン本体を充電ケースから取り出すと自動的にBluetoothスタンバイになったので、iPhoneとペアリングする。今回はこの状態で聴いているので、コーデックはAACということになる。

 まずはANCオンの状態で、女性ヴォーカルを何曲か聴いてみると、エリカ・バドゥやリッキー・リー・ジョーンズの声がとても綺麗に響いてきた。ノイズキャンセリングの効果なのか、S/Nがいい静かなスタジオで歌っているように感じる。ふたりとも声が若やいで、音場がクリーンに整理される傾向はある。エリカ・バドゥの「Rimshot」では低音がやや控えめな印象。

 『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラや、ムターの『アクロス・ザ・ユニバース』でも印象は同じで、「We Will Rock You」の足踏みがすっきりする方向。低音の量感を欲張ることはせず、階調をきちんと再現して、バランスの取れた音を再現しようという狙いだろう。

 この音作りもあって、Mu3はイヤーチップが緩い状態では低音感が弱く思えてしまうかもしれない。それを避けるためにも、自分の耳にあったイヤーチップを選んで、きちんと密閉した状態で聴いていただきたい。先ほどイヤーチップの選択に注意して欲しいと書いたのはこういう理由なのです。

画像: 4種類のイヤーピースと充電用USBケーブルが同梱されている

4種類のイヤーピースと充電用USBケーブルが同梱されている

 そこで、メイヤの「How Crazy Are You?」を再生してみると、これがはまった。メイヤの声がいい案配で華やかになり、硬質なトーンが耳に心地いい。個人的にメイヤの声は大好きでこれまでも数え切れないくらい聴いているが、その中でも一番ピュアでクリーンな再現だと思う。

 ではということで、オリビア・ニュートン=ジョンやカーペンターズ、キャロル・キング(すべてCDからリッピングした44.1kHz/16ビット音源)を再生してみた。それぞれの声や楽器の細かなニュアンスなども自然で、かつ正確に再現されている。女性ヴォーカルをメインで聴くという方はぜひ一度Mu3の音を体験して欲しい。

 次にノイズキャンセリングの効果を確認してみたが、オン/オフで極端に音が変わることはなかった。バスや電車の中ではエンジン音も抑えられていて、効果は感じられるのだが、ANCをオンにしても違和感がないのは立派。耳が圧迫されるような印象もない。

 それもあり、Mu30はANC常時オンの状態で使っていいと思う。Ambientモードも同様に嫌な変化はないので、外来ノイズの少ない環境ならこちらを選んでもいいだろう。

(取材・文:泉 哲也)

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