オーディオファンなら知らない者はいないスピーカーメーカーの雄、JBLがスタジオモニターシリーズ初の4320と4310をリリースしてから50年が経過した。その節目となる2020年に新たなるモニタースピーカーの第一弾として登場したモデルが4349である。もっとも、同社のモニタースピーカーの原点は1962年に遡るC50SMなので、そこから数えれば60年近い歳月が流れたことになる。

 4349の特徴は、JBLのレゾンデートルともいえるホーンとコンプレッションドライバー、そして大型のウーファーを採用していることだ。新型のD2ドライバーとHDIホーンを組み合わせ、こちらも新設計の300mm口径ウーファーを搭載した2ウェイのモデルである。実は1971年にリリースされた4310はコンプレッションドライバーを使わないダイレクトラジエーター方式の3ウェイ機だったので、厳密に言えば4349は、1985年に登場した定指向性のバイラジアルホーンを用いた2ウェイ構成の4425の流れを汲んでいると言ってもいいだろう。

 4349に採用されているD2ドライバーは2013年に開発されているが、家庭用スピーカーに搭載されたのは2015年にリリースされたシリーズフラッグシップモデルの4367からだ。4367にはD2430Kとも呼ばれる75mm口径のふたつのリングダイアフラムが使われ、これを対向して配置することで耐入力と周波数特性を向上させている。またHDIホーンはバイラジアルホーンの形を進化させたもので、広帯域に渡って均一な周波数特性を司り、指向特性の均一化と位相の乱れを抑制する。
 4349はこうした技術を継承しつつ、新たに38mm口径のリングダイアフラムを採用したD2ドライバー、D2415Kが搭載されたトゥイーターを持つ。このダイアフラムにはD2430K同様、耐久性の高い「テオネックス」と呼ばれる結晶製樹脂を用いていることも特徴だ。

 またこのドライバーに併せてウーファーには300mm口径のJW300PG8という最新のユニットが投入された。同社のミドルサイズスピーカーに採用している1200FE系ユニットにさらなる改良を施したもので、同心円状にリブを付けたピュアパルプのコーンの振動板に強力なダンパーを与えて振幅の対称性を改善。磁気回路は大型のフェライトマグネットにJBLお得意のSFG方式による低歪磁気回路を組み合わせてレスポンシビリティを高めている。

 ネットワークはエネルギーロスと歪み率を低減するため、小容量のコンデンサーをパラレル接続で使用し、さらに空芯コイルを用いている。また2ウェイのモデルながらHFレベルとUHFレベルの特性が可変できるアッテネーターを備えており、それぞれ最大プラスマイナス1dBの増減を可能にしている。

300mmウーファーの迫力
現代的な「モニター」サウンド

 4349はJBLのDNAを受け継ぎながらもいい意味でバランスの取れたサウンドを聴かせる。カレン・ソウサのCDでは、ヴォーカルの表情がリアルで、一歩前に出てくる印象。さらに300mm口径のウーファーならではのたくましいベースラインを描き出す。以前にこのモデルを試聴した時は、HEのトリムを0.5dBアップさせたことを思い出したが、Hi Vi視聴室ではその必要もなく、デフォルト値で充分な中高域のエネルギーを引き出す。ワイドレンジなコンプレッションドライバーの能力が遺憾なく発揮されている感じだ。

 クラシックの楽曲でもスケール感か豊かで空間の表現力にも長けている。ただ試聴の途中でジャンパープレートの存在が気になったので短いスピーカーケーブルに交換してみた。こうすることで歪み感が減り余韻をさらに綺麗に描き出す。ユーザーとなった暁には、最低限の使いこなしと心得てほしい。システムとしてのS/N感に優れているので、ジャンパー線を換えただけでも、ローレベルのニュアンスが豊かになるはずだ。

 続いてUHDブルーレイを2チャンネルで視聴してみた。アクション映画の『エンド・オブ・ステイツ』では、DMS(※)がバランスよく響き、歯切れのよい爆破音もきっちり再現する。また『ターミネーター:ニューフェイト』では室内の静けさや虫の音まで取りこぼすことなく拾い上げる。どちらかと言えば直球が飛んでくるタイプの音だが、けっして荒くはなく最新世代のコンプレッションドライバーによるレスポンスに優れたサウンドが室内に充満する。

 昨今のスピーカーは小口径のウーファーとドーム型のトゥイーターを採用したモデルが圧倒的に多いが、4349はそうしたものづくりに真っ向から挑んだスピーカーである。今や300mm口径のウーファーを搭載したスピーカーは貴重な部類に入るが、充分なコントロールを効かせることで、口径の大きいウーファーならではの世界があることをこのスピーカーは教えてくれる。プログラムソースに対する柔軟性を持つ4349は、現代のモニタースピーカーとしての要件を兼ね備えているし、ホームオーディオ用としてもその能力を充分に発揮してくれる製品である。

※DMS: D=ダイヤローグ(声)、M=ミュージック(音楽)、S=サウンドイフェクト(効果音)

画像: 300mmウーファーの迫力 現代的な「モニター」サウンド

Speaker System
JBL
4349
¥800,000(ペア)+税

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:38mmホーン型トゥイーター、300mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:1.5kHz ●出力音圧レベル:91dB/2.83V/m
●インピーダンス:8Ω ●寸法/質量:W445×H737×D343mm/37.7kg
●オプション:専用スタンドJS-360 ¥58,000(ペア)+税
●問合せ先:ハーマンインターナショナル(株) TEL. 0570(550)465

スピーカー端子はバイワイヤリング接続に対応。今回はジャンパーを自作ケーブルに変え、主に低域側に接続して視聴した

画像: HDI(High Definition Imaging)技術を用いたXウェーブガイド・ホーンを採用。広く安定した周波数帯域を誇り、リスニングスポットも広い。高比重・高剛性素材SonoGlassを使用している

HDI(High Definition Imaging)技術を用いたXウェーブガイド・ホーンを採用。広く安定した周波数帯域を誇り、リスニングスポットも広い。高比重・高剛性素材SonoGlassを使用している

画像: JBLスタジオモニター伝統の、スイッチ式トリムコントロールを装備。2ウェイ構成ながらクロスオーバー回路の調整で、高域と超高域のレベルがプラスマイナス0.5dBステップでアジャストできる

JBLスタジオモニター伝統の、スイッチ式トリムコントロールを装備。2ウェイ構成ながらクロスオーバー回路の調整で、高域と超高域のレベルがプラスマイナス0.5dBステップでアジャストできる


歴代のミドルサイズ・スタジオモニター搭載の1200FE系ユニットの伝統を継承し、さらに改良を施したウーファーがJW300PG-8。レスポンスのよさと超低歪特性を両立している

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